第66話 第一の修業
翌朝からのヴァラナーシー・ダルマ教寺院の喧騒は、人知を超えていた。
『座主様が若返った!』
一目、座主様を見たい。
御利益にあやかりたい。
という群衆が、一斉に押し寄せたのだ。
イヴとマリーは、内宮からその狂乱を見て、
「ものすごいですわね。」
「足の踏み場もないな。」
マリーは、
「ケンは?」
イヴが、
「今朝、メルに聞いたら、『修業で、奥ノ院に籠りきり』らしいです。」
「メルもラーヴァも、マドレーヌも、修業で籠り始めたし、
どうしたらいいんだろうな?」
「まったく。これじゃ、身動きとれませんわ。」
マオ来て、
「これじゃ、どこにも行けないよぉw」
確かに、ここしばらくは、我慢するしかない状況であった。
婆様の周辺も、喧騒を極めた。
「座主様。座主様に一目会いたいという、信者が大勢押し寄せております!」
「・・・。」
「座主様。なにとぞ、少しでよろしいですから、信者に何かお言葉を!」
「・・・。」
「座主様! 座主様!」
『ええい、うるさいわ!!!』
『瞑想のポーズ』から目覚めた、ネーハさんは、周辺を一喝した。
奥ノ院から、表の寺院に移動しながら、
「我は、これから1日4回、表に出て、信者に会う。
後の時間は、全て、婿殿の修業に充てる予定じゃ。
とにかく婿殿を、早く造り上げねばならん。
みな、しっかり協力せよ!!」
一緒に移動している、寺院の幹部が、
「座主様、婿殿とヤロス様を一目見たいという信者も多数押し寄せておりますが?」
「それはダメじゃ! 成し遂げねば、衆人に晒す訳にはいかん!」
信者の前に出て、婆様は、大きく両手を上げた。
「我は、よみがえった!!」
嵐のような驚愕と歓声が、あたりに響き渡る!
「ネーハ! ネーハ!」
混乱は収まる気配も無い。
この年の巡礼は、ダルマ教寺院、座主の奇跡により、例年より早く、始まった。
「とにかく、速さが勝負じゃ。」
婆様は言った。
「まず第一の修業に入る。」
オレは頷く。
「この修業は、お主の精神に多大なる負担をかける。
人の身で、いつまでもできるものではない。
悟れなければ、お主の精神は、均衡を保てなくなる。」
「よいか。常に『瞑想せよ』。己を失うでないぞ。」
全裸になって『覚醒の間』に入る。
薄暗い明るさの中に、蠱惑的な香の香りが充満していた。
中央にある少し高くなった大理石の上で、オレは結跏趺坐し、
瞑想を始める。
気が付くと、2人の女性が、俺の両側に寄り添っている。
メルとラーヴァだ。
二人とも全裸で、欲情しているのが、雰囲気で分かった。
眼が異様に輝いて、尋常じゃない。
婆様が術を使って、意識を操作したに違いない。
『動くでない!』
突然、頭の中に大音響で、婆様の声が響く。
『瞑想せよ。あらゆる肉欲に負けるでない。 耐えよ!』
二人は、オレに抱き着き、触りまわし、舐めまわし、扱き、咥え始めた。
メルとラーヴァが、男としてのオレを求めているのが分かる。
二人の心が、
『ケン、愛してぇ♡ 愛してぇ♡』
と、オレを責め苛む。
二人から沸き立つ、フェロモンの香りが、たまらない。
極楽というか地獄というか、そんな気分が、延々と続くかと思われた時、
オレは、初めての気分を味わい始めていた。
肉体は現世に留まり、女人二人が、オレを弄る感覚を味わっている。
精神は、頭上にあって、俯瞰するように、それを眺めていた。
突然、尾てい骨から頭上に、一本の光が通り過ぎる感じがした。
ものすごい覚醒の波がオレを襲い、同時に額に燃えるような『点』の感覚を感じる。
1つ目の花が開いた。
オレの額に、『紅い目』が開いた。
オレは二人を抱き寄せ、強く抱しめる。
『ああっ♡』
二人から、甘い吐息が漏れる。
メルとラーヴァ、二人の額を同時にオレの額に押し付け、
『覚醒せよ!!!!』
大音声に思念の声を響き渡らせた!
『ヒッ!!』
二人は、弾かれたように後ろにひっくり返った。
『見事!!!』
婆様の声が、頭の中に響き渡る。
気を失っている二人は、従者が丁寧に運んでいく。
婆様は、オレに近づき、
「見事じゃ、婿殿。」
そして、未だにそびえ立つ逸物を眺めて、笑いながら目を細めた。
「おうおう、まだ元気かの。上々じゃ。」
沐浴して、広間で鎮静のお茶を飲む。
婆様が、
「無事、第一の修業は終了した。今日は、魂を鎮静し、明日より、第二の修業に入る。」
オレは、平身低頭して、
「ありがとうございました。」
「今晩は、協力してくれた二人を可愛がってやりなさい。」
そう言って、婆様は去っていった。
奥の部屋へ行くと、メルとラーヴァは、まだ余韻が残っているのか、
上気した顔で佇んでいた。
メルはオレを見つけると、すごく困ったような顔をして、近づいてきた。
「私、何やったの?」
オレはメルを優しく抱いて、
「心配ない。オレの修業を手伝ってくれただけだよ。」
メルをお姫様抱っこして、長椅子に横たえる。
「少し休んだほうがいい。」
疲れていたのだろう、額を撫でてやっていたら、すぐに寝てしまった。
ラーヴァは、少し離れたところからそれを見ている。
ああ、ラーヴァには、ある程度、何やったのかが分かっているんだなと感じられた。
近づくと、
「ケン・・・」
オレは、人差し指で唇を押さえて、続きを止める。
やっぱり優しく抱きしめて、
「ありがとう。」
と言った。
その後、お姫様抱っこして、お互いにキスし合いながら、
ラーヴァを別の長椅子に横たえる。
「明日も修業があるから、今日はここまで。」
オレは、自分の寝室へ向かった。




