第64話 工業都市カーンプル
オレ達は、段々南下しているのか、初冬にも関わらず、段々暑くなってきた。
風景も、熱帯地方のそれに代わってくる。
マリー・イヴ・メルがゲッソリしたように言った。
「あ・暑い・・・。」
ただ、カラッとしているのが、救いではあった。
オレ・ラーヴァ・マドレーヌ・マオ・スーは、結構ケロッとしている。
「ケン。ひょっとして、獣人の血が混じってるんじゃないか?」
マリーが言う。
「かもな。」オレはニヤッと笑った。
「今年は少し暑いみたいだな。例年だと、もう少し涼しい。」ラーヴァが言った。
「ここって、何が有名なんだ?」
「ここは、ウッタ・プラデシュの色々な産業が、集積している街だ。
綿・羊毛・織物業の他、精糖業、皮製品、鉄製品の製造も行っている。」
あー、なるほど。『工業都市』なんだ。
大きな倉庫や、工場っぽい景色を見ながら、思いついたことを質問する。
「今まで全然気にしてなかったんだが、ウッタ・プラデシュに『開拓者ギルド』って、あるのか?」
「ない。まだ未整備だ。」
開拓者がないってことは、ここで生活するなら、別の職業探さないといけないな。
「ダンジョンは?」
「あるが、位置・状態共に未調査だな。」
「じゃ、入り放題?」
「勝手に入って、アイテムとるのをそう言うならな。ただし、地図は全くない。」
これは、ちょっと怖いな。
「この付近に、ダンジョンはある?」
「あー、確か、1か2つあったと思う。レベルは不明。」
「了解。ありがとう。」
中心部に近づくにしたがって、人の数が増えていく。
歩いている人々は、ほとんどが獣人である。
その中にチラホラ、人間・ドワーフ・エルフがいる。
多分商人で、買い付けに来たんだろう。
「バカヤロー! 何やってる!!」
突然、怒鳴り声と同時に、工場の中から子供が殴られて飛んできた。
犬型の獣人の子供だ。
「すいません!」
謝りながら戻る途中で、馬上のオレ達、特にマオを睨みつけて、中に入っていった。
「すごいな。」
「あれ、普通だぜ。」マオが言う。
「私も子供の頃、あんな感じで育った。」スーも言う。
「・・・。」
少し疑問が出たので、ラーヴァに質問する。
「ラーヴァ。獣人の国って、学校ある?」
「学校?」
「そう。学ぶところ。」
「ああ。寺子屋ならあるぞ。」
「じゃ、そこで読み書きそろばん教えてるんだ。」
「・・・。『そろばん』ってなんだ?」
失礼w
「みんな、寺子屋に通う?」
「両親がいて、金銭的に余裕がある子供だけだな。
普通は、さっきの小僧みたいに、徒弟で技術を教えてもらうだけだ。」
「文字はみんな、読み書きできる?」
「普通の獣人は、書けないな。」
夕方、宿舎に着いて、ゆっくりできるようになってから、メルを誘って外に出る。
川岸に近い涼しい場所で、少し話をしたかった。
「家の中より、こっちの方が、涼しいね。」
「冬に入ってこの気温だと、夏は暑いんだろうなぁ。」
「で、話ってなに?」メルが尋ねる。
「これからの計画についてだ。」
「うん。」
「オレとしては、しばらくは獣人の国に滞在しようと思う。」
「・・・命の問題?」
「それが大きい。」
オレ達は、先日のダンジョンで、神聖王国の暗殺者8人を退治している。
今帰っても、見つけられ次第、また暗殺者を送り込んでくるだろう。
逆に、オッちゃんが毒の付いた剣で刺して、オレが倒れたのを確認しているから、
このまましばらく ウッタ・プラデシュにいれば、連中は死んだと思っているだろう。
「ただ、こっちには、開拓者ギルドが無い。つまり開拓者じゃ食えない。」
「うん。」
「いつまでも、ラーヴァとネーハさんには頼れない。自分たちで働かないといけない。」
「それで色々、市場とか工場とか見ていたんだね。」
「敵の目を反らすために、少なくとも1年。ここで暮らす必要がある。」
「うーん。そうすると、職探しを始めないと、いけないよね。」
「そこでだ。」オレはピンと指を立て、
「メルに1つ頼みたい。マリー・イヴ・スーが、開拓者以外のの職種で、何できるかを聞いてほしい。」
「了解。」
「オレは、ここで何ができるかを考える。
どのみち前に言ったように、ゆっくり研究したいと思っていたところだ。
工場兼研究所でも作って、色々開発しようと思っている。」
「それって、どこに作るの?」
「オレの予定だと、ここカーンプルか、ヴァーラーナシーにしようと思う。」
「また忙しくなるね。」
「いつも面倒事を押し付けて悪いが、よろしく頼む。」オレは頭を下げた。
「フフ。いつものことよ♪」メルがニヤッと笑った。
翌朝は、朝から暑かった。
ラーヴァによると、あと1日でヴァーラーナシーに到着とのこと。
今朝よりオレは、現地でみんなが着ている服に変えた。
ラーヴァに手伝ってもらって、頭にもターバンを巻いた。
「現地人だな。」ラーヴァが笑う。
「こっちの方が、涼しいからな。」
カーンプルからヴァーラーナシーまでは、広い、整備された道が続いている。
「あと少しすると、巡礼の季節が始まる。そうすると、この道は、人でごった返す。」
「目的地は、ヴァーラーナシー?」
「そう。ダルマ教・アリ教・グル教の聖地になっている。」
「それは、すごい。」
「ラーヴァって、ヴァーラーナシー生まれ?」メルが尋ねる。
「そう。賑やかな家だぞ。」
「行ってみたいな。」オレが言う。
「どの道、婆様の教会の近所だから、みんなで泊まればいいさ。」
日の光が紅く変わる頃、オレ達は、ヴァーラーナシーに到着した。




