第60話 魂魄をつなぐ(1)
ウッタ・プラデシュは、多宗教の国である。
大きな宗教だけでも3つあった。
その中の1つ『ダルマ教』。
その中でも古株と言われる宗派が、『アタルヴァン』である。
ルディーヤーナーのダルマ教寺院。
ここに『化け物ババァ』が待っていた。
婆さんは蛇身で、上半身は人間、下半身が蛇という、
いわゆる『ラミア種』である。
年齢のハッキリしない、幾年も生きてきた年月を感じる風貌であった。
メルとラーヴァが前に進んで、ラーヴァに教えられた通り、平身低頭する。
ラーヴァが、
「只今、戻りました。」
「フンッ! どうせ『化け物ババァ』じゃよ☆」
婆さんがいじけた。
「クッ・・・・ッw」
ラーヴァが怒りをこらえる。
「あーーっ、面倒くさい話は後じゃ。お前の旦那を連れて来い。」
婆さんが事も無げに言う。
「ラーヴァ?」メルが少し怒って言った。
「メル。私は『旦那』なんて、あの方に、一言も言ってないぞw」
ラーヴァが焦って言う。
「なに言うとるか。あれだけラブラブ光線出してて、なーにが『旦那じゃない』だ。」
婆さん、言いたい放題。
「クッ・・・・ッw」
ラーヴァは黙って平身低頭したままだ。
「ヤロス。用意しろ。」
あー、ヤロスラーヴァは、ヤロスって呼ばれてるのね。
昏睡したままのケンを、寺院の祭壇前に連れてきて、婆さんの前に横たえる。
ラーヴァは、香を焚いたり、祭壇を飾ったりと、忙しそうだ。
「おうおう。見事に魂と魄が離れておるわい。」
婆さんが面白そうに言った。
「どれ、ちょいと呼んでみるかいの。」
その時、婆さんはマドレーヌの方を見て、手招きして、
「こっちへおいで。」
優しく言った。
マドレーヌは、びっくりしたみたいだけど、すぐに婆さんの横に座った。
「マドレーヌ。あんたがワシを、ケンの魂へ導くんじゃ。」
びっくりしたマドレーヌに、
「よいよい。私と手を繋いでおくれ。」
二人が手を繋ぐと、
「では、いくよ。」
婆さんは、ケンの右手を握って、何か呪文を唱えだした。
不思議なリズムの呪文と、周りに立ち込めた香の匂いで、頭がボーッとしてくる。
婆さんとマドレーヌは、魂となって、豊かな宇宙我の世界を進んでいく。
「これなーに?」マドレーヌが聞く。
「個人我が集合離散する世界さ。」婆さんが言う。
「?」
「ああ、解からんでもよい。これは『観る』ものではない、『感じる』ものじゃ。」
しばらく進んでいくと、
「おう。 ここにおったか。」
婆さんが、1つの個人我を掴もうとすると、
「ちょっと待って。」マドレーヌがそれを止めた。
「?」婆さんは怪訝な顔をする。
「この人が、話があるって。」
マドレーヌが、とある個人我を、『スイッ』とつまんで、
ケンに入れてしまう。
「おうおう。なんてことを!」
婆さんが慌てる。
「別の人になってしまうぞい!」
ケンが『ムクッ☆』と起きた。
みんながびっくりして、『ケンが戻った!』って大騒ぎを始める。
「あー、待て待て。ワシはケンでは無い。」
ケンであって、ケンでは無い人がそう言う。
その人は、婆さんの方を向いて、
「Neha、久しぶりだな。」
ニコッと笑った。
「??」
「忘れたか?」
「・・・! ひょっとして、『始祖様』!?」
「おうおう。魂の色は、忘れんかったな。」
面白そうに、その人は言った。
婆さん、急に慌てて、真っ赤な顔になって、
「嫌だw どうしよう。今日化粧してなかった。」
なんて言っている。
「あー、よいよい。あまり時間もとれぬ故、早うこっちへ来い。」
その人は、近づいた婆さんと、がっしりと抱き合い、すっごいディープキスをした。
たっぷり1分はして、
「あー、満足した♡」
と言って、あぐらをかいて話を始める。
「コヤツ(ケン)は面白いヤツでの、ワシと同じ故郷の人間じゃ。」
「では、始祖様の同郷人!?」
「そう。」
祭壇にお供えで出ていたお茶を、おいしそうに飲みながら言う。
同じく、お供えで出ている菓子をボリボリ食べながら、
「お前に会う良い機会と思ったのが1つ。
このネコ娘のことを頼むのが1つ。
コヤツ(ケン)にプレゼントをやろうと思ったのが1つじゃな。」
「それにしても、ホンに久しぶりに♡」
婆さん、顔が真っ赤でウキウキしてる。
ケンがニヤッと笑って、
「本当なら、もっとゆっくりして、お前と色々致したいんじゃが、そうもいかん。
お楽しみは、また会ったときということで、今日はこれだけ。」
その人は、婆さんと額を合わせて、目を閉じて、何やらやっている。
しばらく経つと、「ホウ♡」という顔をしている婆さんから、ケンが離れた。
「ではワシは離れる。ケンを連れてきて、入れとくぞい。」
そう言って、横になった。
しばらくすると、『ンッ?』という感じでケンが起き上がる。
「ここどこ?」
『ワッ!』という感じでメルが飛びつき、大泣きしている。
ケンは、何か起こったかわからないのか、キョトンとしていた。




