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Heart on Fire ハートに火を着けて♡  作者: 三久
バシレーア公国編
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第53話 アンタルヤのカフェにて



「またダンジョン入って、ラスボスとの対戦無しだよw」

オレは少しグチる。

「まぁ、アイテムはいっぱい出たし、黒字だったということで、許して♡」

メルが言った。


ダンジョンから帰還した我々は、アイテムの分配と換金を済ませ、3日間の休憩中である。


ここはアンタルヤに点在しているカフェの1つだ。

オレはメルと2人で、カフェの屋外にあるテーブルで、コーヒーを飲んでいる。

周りは狭い路地が若干広くなった、中庭みたいな場所である。


今は、午後の時間帯。

季節的には、晩秋くらいの時期なのだが、ここは屋外にいても、気持ちの良い風が吹いている。


アンタルヤは、公国でも温暖な気候で知られている。

産業も、農業がメインであり、かんきつ類と、植物性オイルが有名である。

他にも、じゅうたんの生産でも有名であり、高級品のじゅうたん工房が、多数あった。


道を行き交う人を眺めながら、

「ここは、良い街だなぁ。」


「ケンは、暖かい所の出身?」

「そうだなぁ。どちらかと言えば、暖かい所だな。」

「雪降る?」

「たま~に降る。でも夏は、ものすごく暑い。」

「あー、なんとなく解る。」


異世界に飛ばされて、大よそ1年が経とうとしていた。

なんとか生活はできるようになったが、これからどうなるかが全然判らない。

オレを襲ってくる敵も、破壊神も帝国の侵略も、全然片付いていなかった。



「落ち着いて、暮らしたいなぁ。」

ポツンとつぶやいた。


「!? ケンが、そんなこと考えるのなんて!」

メルがビックリしている。


オレは空を眺めながら、

「家一軒借りるか買うかして、色々研究したい。

みんなの武器や防具も、ちゃんと研究して作り直したい。

マドレーヌとマオに、文字とか技術とか、しっかり教えてやりたい。」


「ここですれば?」

真面目な顔をして、メルが言った。

「私もお金なら少しは持ってる。2人で力を合わせれば、生活できると思う。」

オレはメルの手を握って、

「ありがとう」


メルの手は細くて華奢な感じがした。

見ると、あちこち擦り傷や切り傷があって、肌がガサガサだ。


「せっかく綺麗な手をしているのに、勿体ないなぁ。」

ポソッと言う。

メルは、「じっと見るなぁw」と言って、慌てて手を引っ込めた。



ああ、なんとかしなきゃなぁ。

急にだが、そんな気持ちが湧き上がってくる。


オレのあずかり知らぬ事ではあったが、

責任の一端は、間違いなくオレ、『ハモン』にあった。


ハモンが『魔導工学』と『精霊召喚法』を開発しなかったら、

帝国だって、今の時期に侵攻を始めようなんて、思わなかっただろう

・・遅かれ早かれしただろうが。

また、それに対抗して、神聖王国が『破壊神』を呼び覚ますなんて、

考えなかったかもしれない。


ifもし』が多くて、はっきりしないが、

ハモンじゃないけど、ハモンなオレは、これを片付ける責任があると思う。


オレはメルを見て、

「ここに落ち着いたとして、残されている時間は、あまりないと思う。

帝国が侵略を始めるし、神聖王国が、破壊神を起動させるかもしれない。」


「でも、そんな大きな話、私達じゃ、どう仕様も無いでしょ?」


「ところがだ。」オレは続けて言う。


「オレ達は、たまたまだけど、それを知った。

そして、少なくとも、オレは、その野望を止められる自信がある。

そうなれば、これは、オレが動かなかったら、どうなりますかって話。」


メルはあきれた顔をして、

「ケンのそういう自信過剰なとこって、どこに根拠があるのか、知りたいよね。」


オレは、もう一度メルの手を握って、

「少なくともオレは、キレイで可愛いメルさんと、

ずっと落ち着いて生活できるように、したいと思うわけですよ。」


「ケン・・・」



「あーっ! こんなとこで、デートしてるっ!」

・・マドレーヌが来た。

「ケン兄、オレにも武器と防具! ダンジョン一緒に行って戦うんだ!」

マオもやってきた。


やれやれ。いつもの時間が戻ってきた。

「よーし、マオ。オマエの武器と防具、選びに行こう。」

「やったっ!」


マオ、大喜びだな。

コイツもボチボチ色々と教えないと、路頭に迷っちまう。


オレは立ち上がりながら、

「さーて。いつもの生活に戻りましょうか。」


メルは、まだ真面目な顔をしていた。


オレは彼女の手に、手を重ねて、

「心配するな。自信はあるんだから。」

「でも。」


もう一度手を握って、ニヤッと笑ってウインクしながら、

「オレは死なない。みんなも死なせない。約束する。」


そのまま手を取って立たせると、手の甲にキスをして、カッコつけて礼をする。

「お嬢様。自分めは、お嬢様の忠実な召使いでございます。

何なりと御用をお申し付けください。」


メルは、あきれて、「まったく、もうw」なんて言ってる。


「はいはい。メル姉、ここからは、私がケンとデートするの!」

マドレーヌが割って入ってきた。


オレはマドレーヌを抱っこすると、メルに手を伸ばした。

手を繋いで、

「行こう。」


そんな感じで、気持ちの良い午後が過ぎていった。




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