第48話 ダンジョン侵入
アンタルヤへ来て2週間以上過ぎた。
我々パーティにダンジョン侵入の許可が下りた。
潜入は、明後日。
やっぱりハメッドさんに紹介された場所で、壮行会である。
「明後日、我々は、ダンジョンに侵入することになった。
今回の目標はダンジョン踏破ではなく、中層階にある宝物の獲得である。
決して無理はしないこと。
まずはお互いの立ち位置とコンビネーションの確認。
次に、落とされたアイテムは、残らず獲得する。
危なくなったら撤退するので、逃げる方向も確認のこと。」
「次に役割の確認。
侵入は、オレ、メルエル、マリベル、イヴリン、スオマ、ヤロスラーヴァ。
支店で待機は、マオとマドレーヌ。
タンクはマリー。
アタッカーがオレ、メル、ラーヴァ。
ヒーラーはイヴ。
スーは、落ちたアイテム拾い。イヴのバックアップも忘れないこと。
各人立ち位置に注意。
敵の攻撃を受けないこと。
味方の攻撃を受けないこと。邪魔しないことを心がける。
スーは、帰還魔法のタイミングを間違えないこと。死にたくないからね。
マドレーヌは、支店にて交信支援。
マオは非常時のバックアップに備える。」
「以上、一通り注意をした。後は各人、準備と鋭気を養い、明後日に備えよう。
それでは乾杯っ!!」
『乾杯っ!!』
β-124から始まって、おおよそ10ヶ月。
やっとフルパーティで、ダンジョン攻略となった。
「おしっ。がんばるぞ!」
オレは気合を入れた。
ダンジョン侵入初日。
我々は指定の時間に、入り口へ向かう。
我々の前のチームが侵入を開始する。
しばらく待って、時間が来た。
「よし。次! 『チームα』。帰還魔法は設置済。案内人もOK。
よし。侵入開始!」
次元の割れ目に進む。
我々は、ダンジョンへの侵入を開始した。
アンタルヤのダンジョンは、『洞窟型』で有名である。
「よし。侵入成功。では予定通り行きます。」案内人が言った。
「各人、視覚・聴覚調整始め。」オレが命令する。
少し進むと、案内人が、
「これはツいてましたね。今回は、モンスターの攻撃が少ないパターンだと思います。」
と言う。
「これなら目的の宝物まで、うまくいけば1日。ダメでも2日で着きます。」
「了解。注意して進んでくれ。」
今回のダンジョンは、分岐のある洞窟を下に潜っていく。
正解の分岐が解かるのは、コツのわかっている案内人のみである。
今回の案内人は、我々がチームを組んで、
初めてのダンジョンであることを知らせていたので、慎重に進んでくれる。
「前方に敵感知。軟体型。数20。距離20。」メルが言う。
「曲がり角の先の敵が解かるんですか!?」案内人がビックリして言う。
「彼女、能力持ちでね。」テキトーに答える。
曲がり角で止まって、
「みんな耳塞げ。」俺が指示する。
オレは今回のダンジョンに、新兵器を持ってきていた。
『魔導手榴弾』
用途は、元の世界の手榴弾と同じだ。
奥に、ポーンと手製の魔導手榴弾を投げる。
『ボーン☆』
「敵、全滅。」メルが言う。
「先行くぞ。」オレは言った。
案内人は、呆れている。
「こんな攻略、初めてだ。」
敵が接近する前に、遠距離攻撃。
角の先で見えない敵には、手榴弾。
接近した敵には、範囲魔法で攻撃。
手元に来た敵は、タンカーとアタッカーで攻撃。
落ちたアイテムと仕掛けのある宝物は、盗賊が入手。
役割分担の明確化と、効率を考えた攻撃で、我々はどんどん先に進む。
メルが、「ストップ! 大型の敵が接近。距離50。 タイプは・・・」
ラーヴァが、「レッド・サラマンダーだな。」
「中層階までで最大の敵です!」案内人が言う。
「全員、総力戦準備!」
「まずは戦う負担を減らすか。」
オレは呪文を唱える。
『此の地の底に居を構える大地の精霊よ。我の要請に答えて、顕現せよ。』
黒い霧の悪霊が現れた。
「サラマンダーを処理。外皮は傷をつけるな。」
悪霊は頷くと、飛んでいく。
サラマンダーに接近すると、悪霊はサラマンダーの口から内部に侵入した。
サラマンダーは、体中の穴から、体液を大量に噴出して力尽きる。
近づいたマリーとラーヴァが、急所に刃を入れて、絶命させる。
案内人はビックリしている。
「こんなに早く、サラマンダーが倒れるなんて。」
手早く解体して必要部分を採取。先を急ぐ。
1日目の夕方、目的の宝物殿前に到着。
扉前は大きい広場になっていた。
「この霧の扉を抜けると戦いが始まります。敵が多いと思うので、
今日はここで休んで、明日、攻略するのが最適だと思います。」
「了解。」
「案内人のアドバイスに従って、今日はここで宿泊。各自準備せよ。」
扉から少し離れた、隠れた場所に露営地を決める。
今回は洞窟なので、テントは無しだ。
火は起こしてOKとのことなので、暖かい料理が食べられる。
七輪に似た調理器具を出し、瓶詰めした手製の保存食料を温めて食べる。
食後のコーヒーを飲んでくつろいでいると、案内人より、
「初めてのパーティなのに、準備がいいですね。」
とほめられる。
「全員で食事しましたけど、敵は襲ってこないんですか?」
「状況にもよりますが、ここのダンジョンの、今日のパターンだと、
侵入して敵を倒すと、次の侵入まで敵が沸きません。」
この後、案内人からダンジョンの生態について、色々と説明を受ける。
『ダンジョン』まったく不思議な存在だ。
「ダンジョンの生態学に興味があるんでしたら、案内人ギルドに入会して、
研究なさるといいと思いますよ。」
ニッコリと笑いながら、案内人が言う。
案内人ギルドに誘われてしまった。
それでも用心のため、1人ずつ歩哨に立つことにして、我々は眠ることにした。
翌朝、軽く朝食後、いよいよ中層階にある宝物殿の攻略を始める。
案内人によると、霧の扉を抜けると大きな部屋になっていて、
中級クラスの敵がいっぱいいて、それを倒して宝箱を開ける。
霧の扉は入ると簡単に入れるが、その後、脱出できなくなる。
扉の中へは、外から攻撃可能。ただし、中は見られない。
中に何か入れても、こちらには影響しない。
なお、ここにボスはいない。
「よし。決めた通りの手順で行う。各自持ち場に待機。」
今回の手順は、
部屋の中へ大型の柄付魔導手榴弾を中に投げ入れる。
爆発後、もう1~2回投入。
その後、部屋に侵入して、戦う。
「では、いくぞ!」
扉からは、中の気配はわからない。
オレは扉の中に、柄付大型魔導手榴弾を中に投げ込む。
『ーーーーーン☆☆』
何か低周波を感ずる。
少しして、もう一回、投げ込む。
『ーーーーーン☆☆』
『・・・。』
相変わらず様子が分からない。
よし。
霧の扉を抜けてみる。
中は、文字通りの『惨状』であった。
中にいたモンスターは、2発の大型手榴弾により、千切れ飛んでいた。
生き残っているものも、マトモなものはいない。
全て息の根を止める。
使える素材、アイテムを入手すると、次はいよいよ宝箱だ。
「宝箱は、最低3つのワナがあります。解除する人は、注意してください。」
案内人から注意を受ける。
解除はスーの役目だ。
バックアップはオレ。
スーが「ワナが4つある。」と言う。
オレも4つ確認する。
スーが注意深くワナを解除してゆく。
4つ目のワナが、中々解除できない。
失敗すると宝が破壊される類のワナではないらしいので、
倒れたモンスターの破片を使って、無理やり解除した。
『バチーン☆』何かが挟む音がして、モンスターの破片が、さらに砕けて飛び散る。
おかげでオレはベチャベチャになったが、ワナは無事解除できた。
宝箱を開けて、中身の回収をする。
案内人が見て、
「まぁまぁの品物だと思います。」
宝物殿のアイテムの回収を終了。
「みんな帰還の用意はできたか? ・・・では帰還する。スー頼む。」
帰還魔法で帰還。
この後、案内人ギルドのフロアで、
「今回の案内、ありがとうございました。これ、残りのお金です。」
オレは案内人に、案内料の残りを渡す。
案内人が、
「ケンターさん、この後のダンジョン攻略のご予定は?」
と尋ねてきた。
オレは、
「今回が初回ということで、後もう2回、中層階にある宝物殿を攻略。
慣れたところで、ラスボスを目指そうと思ってます。」
「でしたら、私を続けて雇いませんか?」
案内人からオファーがかかった。
「いいんですか?」
「私、ケンターさんのようなダンジョン攻略を見たのは、初めてです。
もう感激しちゃって。一緒に行きたいなぁと♪」
「はは。ありがとうございます。」
「雇っていただけます?」
「案内料、マケて頂けるなら。」
「リョーカイです♡」
この後、週1回の予定で2回、中層階のダンジョン侵入の予約を行った。




