第39話 アンタルヤへ行く道筋にて(1)
「うまく抜けたみたいだ。」
コスタンティニエを守る大きな門から出て、オレはホッとした。
毎日大勢の人が行き交う街なので、まぁ止められないとは思っていたが、
抜けるまでドキドキだった。
オレ達は、馬車の上。良い天気だ。
タオはオレの横で、マドレーヌはメルの傍らで、ウツウツしている。
ここは、コスタンティニエを抜けて、アンタルヤへ行く道である。
コスタンティニエからアンタルヤまで、馬車で7~10日の予定だ。
公国の気候は、半分の土地が半砂漠、半分が海洋性気候である。
今は、秋から冬にかけての季節であるとのこと。
旅行するなら良い時期とのことで、元々カラッとした気候の公国なのだが、
気持ちの良い天候の中、旅をできる。
今日は、途中船で海を渡り、ブルサという街まで移動するとのこと。
キャラバンは5つの大きな馬車と、1つの小さな馬車で組んでいる。
大きな馬車は、アンタルヤまで直通。
小さな馬車は、我々専用で、途中、目的地へ逸れる予定だ。
教会のシスターより、2人を目的地まで送ってほしいと言われ、
地図を見たら、アンタルヤの途中だったので、了解した次第である。
(メルには「お人好し。」と言われたけどw)
昼までは、平穏に馬車の旅が続く。
ちなみにオレ達の馬車の御者は、メルがやっている。
オレは、丁度いい機会なので、現在練習中。
昼過ぎ、渡し船を使って対岸の街へ向かう。
時間はほぼ1時間とのこと。
みんなは船のあちこちに散らばって、海を見たり、居眠りしたりしている。
オレは船の上で、
『もしオレが元の世界に居たら、こんな事してるなんて夢にも思わないだろうなぁ。
そう思うと、すごいことしてるな。オレ。』
なんてことを考えていたら、『ブルッ☆』と身震いが出た。
その時、突然、漢詩がよみがえる。
確か高校の時、暗記させられた詩だ。
『李白舟に乗って将に行かんと欲す。・・・後、なんだっけw』
この後、何だっけかな~と、腕を組んで、結構一生懸命考えていた。
横を見ると、マドレーヌが、じーっとこちらを見ている。
「?」
こっち見たまま、
「『りはく』ってなに?」
と聞いてきた。
『・・・!?』
オレが考えていることが判る!?
オレは、マドレーヌと同じ高さにかがんで、
『考えてること、解りますかー?』と考えた。
彼女はニコッと笑って頷いた。
あー! なるほど。
オレはマドレーヌに「そこにいて。」と言って、3mくらい離れた。
『わかりますかー?』と考えると、『コクン☆』と頷く。
どんどん離れていって、船の端と端でもOK。
マドレーヌの元に戻って来て、マドレーヌを抱っこして、
「驚いたな。」
彼女は、耳をピコピコさせている。
コイツは『テレパシー』というヤツ!?
テレパシーについては、パウとポウに命令するとき、
何かテレパシーっぽいのを使ってる感じはあった。
彼女もそんな感じなのかな?
メルのところに行って、
「メル、遠くの人と会話する能力って、知ってる?」
と聞いてみた。
「・・・。 神話じゃ、大昔の人がそんな能力あったような事、
書いてあると思ったけど、実際に見たことはない。」
うーん。じゃ、昔はあったかもなんだな。
オレの元いた世界では、『テレパシー』なんて空想の世界のものだったが、
魔術ある世界では、あるかもしれないな。
メルから離れて、マドレーヌに聞いた。
「マドレーヌ。他の人ともできるの?」
「えーと、うーんと遠くの人が、何か言ってる。」
「どこの人?」
「今、行くところの人。」
・・・コイツは驚きだ。
コスタンと目的地、直線距離でも、相当離れているぞ。
「今も聞こえる?」
「時々。」
「マドレーヌって言ってる?」
「言ってる。」
相手はマドレーヌを狙って、交信してると。
他人の内情を探るのは趣味じゃないけど、今回は勘弁してもらおう。
「マドレーヌ。『マドレーヌ』って、誰が名付けたの?」
「お屋敷のご主人様。」
「お屋敷に、生まれてずっといた?」
「わかんない。」
「お屋敷に、いくつまでいたの?」
指を5本出した。
了解。
「その時、もう声は聞こえてた?」
「聞こえてた。」
「お屋敷は、自分で出た?」
「ううん。人が来て、出してくれた。」
おぅ。誘拐か!?
「それから教会?」
「そう。」
シスターはグル。と。
「シスターは、『マドレーヌは、ケンにホントのこと言いなさい。』
って言ってた?」
「ううん。しすたーは、『ナイショにしなさい』って言ってた。」
善意の第三者が連れて行く計画にしていた確率大。
「オレには、何で教えてくれたの?」
「今から、声が聞こえるところへ連れてってくれるんでしょ?
それにケンは悪い人じゃないし。」
オレは改めて、クリクリした目のマドレーヌを見直した。
「色々な意味で、ビックリだ。」
オレ的にもチャンスだ。
望んでいた能力が開発できるかもしれない。
その日は、ブルサで一泊した。




