第38話 サバト
ーケン達と別れて別行動中の、イヴリンの場合ー
ここは、・・・某所と言っておいた方がいいだろう。
時間は深夜に近い。
その教会は、使われなくなってから、すでに久しい。
ガランとしたその空間は、今は、人いきれで埋まっていた。
空間には蠱惑的な香りが充満し、酒と蝋燭と獣脂の燃える匂いが交じり合っていた。
広間には全裸の、あるいは半裸の男女が重なり合って、淫靡な空間を作り上げている。
男も女も上気した顔をして、目が充血している。
「アアッ。」
「ウッ!」
「アンっ♡」
お互いに、むつみ合い、貪りあう男女の集団。
彼らは汗にまみれ、お互いの粘液にまみれ、悦楽の表情をしている。
その中央、高くなった壇上に、彼女はいた。
『イヴリン』
彼女は、この場に君臨していた。
背の高い椅子に座り、複数の男女を従え、従僕にして。
思うがままに、開いた脚を、腕を、躰全体を舐めさせている。
「ウーーンっ♡」
「クウ・・・ッ!」
「ハアッ!!」
彼女もまた陶酔の中、悦楽の境地にあった。
彼女の吐く息が、したたる汗が、にじみ出る分泌物が、
そして高密度の『催淫魔法』が、
その場にいる全員に、またとない快楽を与えていた。
そう。彼女は『サバトの女王』。
彼女の蹂躙する世界が、ここにあった。
めくるめく、論理無き悦楽の世界。
・・・夜の快楽に、全員が酔いしれる中、階上から見下ろす2人の影がある。
「さすが『背徳の聖女』じゃ。地上でもたらされる最高の快楽と、
無垢の奉仕の精神を同時に持つ女なぞ、他におらん。」
「フフフ。信者に対する『飴とムチ』じゃよ。
この『会合』へ参加した者は、教団から離れられん。いかようにも利用できる。」
「もっと『会合』を増やせんのかね?」
「それはできん。これ以上、イヴリンを使うと、
淫性の方が優位になって、『先祖返り』しかねん。
それに、少ないくらいの方が、有難みはあるんじゃないのかね?」
「本部付きにして、管理して使うというのは?」
「それも不可じゃ。イヴリンから出る無意識の呪法で、我々の体がやられかねん。」
「確かに。ここにいるだけで、若返ってくるようだ。」
「そう。あれだけ修行した我々ですら、イヴリンの魅力には勝てんのだからな。」
「『背徳の聖女』か。厄介な女じゃの。」
「まったく。フフフ。」
「フフフ。」
・・・教団が見落としている事が1つあった。
イヴリンが付けている、『赤いネックレス』である。
その結晶は、辺りの光を反射して、キラキラと、赤く妖しく輝いている。
裸体のイヴリンには、まことにふさわしい逸品であった。
彼女は入浴の際にも、それを外そうとはしない。
「ワタシのお守りなの。」
他の人にも触らせない。
教団でも、彼女が付けたままではあったが、念のため、一応の調査はした。
『赤い血のような色をした、ティアドロップ型をした、ファインカットされた結晶』
以上のことは、解らなかった。
「まぁ、彼女が気に入っているのなら。」ということで、放っておかれている。
そのネックレスには、役目があった。
『ガーディアン(守護者)』
緊急時にイヴリンを守ると同時に、
計測者として、ケンターが指示したチェック項目に基づき、
イヴリンの心身の状態を、常時モニターしている。
一瞬の休みもなく、データは計測されていた。
イヴリンが忘我の心地でいる間も、データは蓄積されていた。
いずれ使う時に、役立つように・・・




