第37話 本家への報告
ーケン達と別れて別行動中の、マリベルの場合ー
ベネト共和国にある、モラヴィア王国の大使館。
マリベルは、奥の一室で、大きな鏡の前にいた。
「では、繋ぎます。時間は3mです。手短にお願いします。」
大使館員がそう言うと、鏡に人が写った。
面白くなさそうな顔。
「おう。なんだマリベルか。何の用だ?」
立派な椅子に座った男性の、その後ろに、
城とライオンの描かれた、盾状のマークがあった。
グリモー家の家紋であった。
・・・帰って来た。
私は深く一礼し、
「兄さま。私、開拓者のパーティに参加して、
バシレーア公国へ移動することになりました。
つきましては、父さまに許可を得るべく、連絡いたしました。」
兄は、
「ああ、オレが伝えておく。許可はオレが承った。行っていい。」
私は、しばしためらって、
「母さまは、元気でしょうか?」
「・・ああ、『あの女』か。元気だ。」
「何か、困っていると言ってませんか?」
兄は面倒臭そうに、
「そんなに心配なら、帰って来て面倒見たらどうだ?」
「・・・。それができないことを、兄さまは、ご承知のはずです。」
「あぁ、そうだったか。 第3夫人だっけ? 『あの女』。」
「兄さま。母さまを『あの女』呼ばわりするのは、おやめください。」
「あー、すまんすまん。オレは第1夫人たる母上以外は、関係無いものでね。」
「・・・。」
怒りをこらえて、私は、
「レオは元気ですか?」
既に、どうでもよくなっているのか、兄は上の空だ。
「あー? レオって・・。あー、アイツか。生きてるんじゃないの?」
「・・・。」
ふと何か気が付いたのか、兄が身を乗り出してきた。
「そういえばマリー。お前、いい女になったな。
身体つきなんて、もう、オレ好み。
帰って来て、オレの愛人として一緒に暮らさないか?」
私はあきれて、
「兄さま。私達は、母は違うとはいえ、兄妹なのですよ?」
兄は、
「逆に燃えるシチュエーションだ♡ オレが許可する。帰って来い。」
「・・・。」
まったくこの人は。
最後に、
「母さまとレオに、伝えてください。
『足りないものがあったら仕送りの他に送るから、連絡をくれ。』と。」
兄は、面倒そうに、
「承った。連絡しとく。」
大使館員から「時間です。」との連絡がある。
「それでは、兄さま。また1ヶ月後に連絡します。」
「オー。」鼻をほじってるw
連絡が終わると、館員より「金貨3枚です。」
いつも本家に連絡すると、むなしい気持ちになる。
私は、第3夫人の長女として生まれてきた。
下には弟もいる。
しかし、複数いる夫人の、複数いる兄妹のなかでは、私はミソッカスだ。
継承権が少しついているから、敬ってもらってるだけた。
そのまま行けば、良くて弱小貴族の妻。それも第2か第3だろう。
ヘタをすれば、商家の嫁か、兄の言うように『愛人』としての立場しかない。
そんな自分がイヤで、女子にしては体格の良かった私は、剣士を目指した。
出立の時、父より「これ持っていけ。」と渡された、一振りの剣。
出元不明で、倉庫に入っていたという剣だが、妙な迫力があった。
来る日も来る日も、これを振り回して筋力を付け、振り回せるようになった。
やっと剣士として独り立ちできそうな時、辛い現実に当たった。
『女の剣士だと、力で押し負ける。』
女性でも、ドワーフや獣人の血筋ならば、関係無い。
人間の私だと、どうしても力で押し負けた。
それに加えて、加わったパーティが、メンバーの過半数割れを繰り返して、
『悪魔と契約した女』と呼ばれるようになった。
その内、パーティにも入れてくれなくなった。
それでも頑張って、ソロでやっていた。
母と弟を養うため、それと自分の可能性を信じて剣士になったのに、
何故かうまくいかない。
『もう無理なのかな。』そう思っていた時、ケンに出会った。
ケンは私を見て、その時々の状況により、役割を振ってくれた。
その上、私の剣の持つ特性から『付帯効果』を引き出して、
他の剣士以上の活躍ができるようにしてくれた。
今の私は、『悪魔の甲殻騎兵』とみんなから呼ばれ、一目置かれるようになった。
ケンだけだ。私を認めてくれるのは。
ケンがいれば、今よりもっと上に自分を高めていける。
ケンとなら・・・
大使館を出るとき、私は気分を入れ替える。
『私は『悪魔の甲殻騎兵』だ。パーティを守り、みんなの役に立つ。』
私は、飛行場に向かった。
コスタンティニエへ向かうために。




