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Heart on Fire ハートに火を着けて♡  作者: 三久
バシレーア公国編
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第32話 コスタンの大市場にて(1)



コスタンティニエ(コスタン)の朝は早い。

「!?」

夜明け前の礼拝の声が、朗々と響き渡る中、オレは飛び起きた。

忘れていた。ここはコスタンだっけ。


「おはよう。」メルがすでに起きて身づくろいをしていた。

「おはよう。メル、起きるの早いな。」アクビを噛み殺しながら、朝の挨拶をする。

「コーヒー、出来てるよ。」メルが作ってくれたらしい。

「ありがとう。」オレは早速飲みに行く。


喜ばしいことに、コスタンに『コーヒー』があった。

淹れたて特有の、豊穣な香りと共に、朝の一杯を頂く。


我々がコスタンティニエに来て、早4日が経っていた。

「今日は、空きだっけ?」メルが尋ねた。

「メルとスーはね。オレはギルド行って、各辺境都市への渡航状況聞いてくる。」

「飛行船使う予定?」

「さすがにここからじゃ、飛行船使わないと、どの辺境都市行くにも、チョイと遠いねぇ。」


「メル姉、洗濯終わった。 あ、ケン兄おはよー。」スーが帰ってきた。

「スー、おはよう。」みんな、朝から働き者だな。


まだ朝食を食べに行くまでに時間がある。

身づくろいを済ませたオレは、ギルドで購入した大雑把な地図をもとにして、移動場所を考える。


ギルドからの情報によれば、

現在、国境を接するモラヴィア王国、ベネト共和国との渡航制限無し。

公国周辺の辺境都市群、α・β共に、問題無し。


スオマが肩越しに「何やってるの?」と覗いてくる。

「活動拠点、どこに置こうかなと考えてる。」


「えーと。こっちとこっちはパスして。」スーが指示する。

「何かあるのか?」

「バルバロイが出てくる兆しあり。」


「あー。・・って、バルバロイなんているのか!?」

ちょっとビックリ。

元の世界だと、バルバロイって『野蛮人』の意味だけど。


「また常識に欠ける意見言ってるなぁw」メルがボヤく。


メルさん、説明お願いします。


「了解です。基本的にはバルバロイは、5大国以外の人達のことを言います。

ちなみに公国辺境都市にいる獣人は、大体はバルバロイだね。」

へー。


「開拓者ギルドに参加してる人も?」

「仕事就いてる就いてないは関係無い。」


スーが、

「地域紛争起きるかもしれない。」

うーん。それはよろしくないなぁ。


「ダンジョンあって、今、稼ぎ良いとこ、どこ?」

「ここと、ここと、ここ。」スーが指さす。

イズミル・アンタルヤ・コンヤか。


「この中で、どれオススメ?」

「これ。」スオマは、『アンタルヤ』を指さす。

「ここなら、周辺でトラブル無し。ダンジョンのレベルも適切。

入り口も安定していて、いつでも侵入可能。」


「メル、アンタルヤってどう?」

「行ったことないけど、悪い噂は聞かない。」


「よし。朝食終わったらギルド行って、もっと情報集めてみようかな。」


「あ、ケン。私も行っていい?」メルが聞く。

「もちろん。来てくれると助かる。」オレ、ギルドまでの道順、自信なし。

「メル姉が行くなら、ワタシも行く。」スー、おまえ子供かw



朝食後、3人で行くことになった。

「ケン、帰りに大市場回って。用事済ませるから。」

「了解。」

「あ、ケン兄、ワタシも寄るとこあるから。」

「・・それなら、二人で、先に行った方が、早く片付くんじゃないの?」

「ケン兄。行ってみれば分かるから。」


ギルドで、アンタルヤ方面の飛行船の運行状況や情勢を聞く。

問題無しとのこと。

よし。マリーとイヴが集まったら相談して、ここに決めようかな。



帰りに大市場へ寄る。


「ここの市場は、世界一だよ♪」とメルが言っていたが、驚いた。

ものすごい人だ。


エルフが非常に多い。商人、もしくは、買い物客だろう。

次にドワーフ。多分職人だろう。

その中に、人間がチラホラいた。


「迷子になるのと、スリに気を付けて!」メルが注意する。

「スー、手をつなぐぞ。」

「えーっw 子供じゃないよぉ。」


人でごった返す大市場内へ入る。

内部は、通路が網の目状に走っている。

こんな所、俺一人で来たら、たちまち迷子になるだろう。


メルは、色々な品物を物色しつつ、どんどん進んでいく。


奥に入っていくと、より通路は入り組んで、どこにいるか解らなくなる。

段々、胡散臭い雰囲気が強くなってくる。


「こりゃ、女性だけで来るのは、怖いかも。」

「でしょ?」

「だから付いて来てもらったの。」



とある商店の前で、メルが止まった。

『ラシード商会』

「ここ。」

ショーウィンド見る限りは、品物が雑多過ぎて、何売ってるのか分からない。


『キィ☆』外開きの扉が、少し軋んで開く。


「いらっしゃい。」細長く続く部屋の奥から声が聞こえた。

初老に見える豊かなアゴヒゲを蓄えた、エルフの男性が現れた。


「ラシード! ひさしぶり!」

メルが大声を上げた。

奥から現れた男性は、キョトンとした顔をしていたが、メルを見ると破顔した。

「おやおや。メルエルじゃないか! 何年ぶりだい。」


メルは駆け寄って、お互いに抱き合った。

『平安があなたに訪れるように。』公国国教の挨拶だ。


「アイーシャは?」

「今、買い物に行ってる。メルを見ると、喜ぶよ。」

ひとしきり挨拶が済むと、オレ達の紹介が始まった。


「こちらは、ケンター。この娘は、スオマ。」

オレ達は、胸に手を当てて、初対面の挨拶をする。

男性は、「わざわざご丁寧に。どうも。」と、ニコニコしながら、同じく挨拶する。


案内された部屋で、ソファーに座る。

ラシードは、我々に自ら、濃く甘いコーヒーをふるまってくれた。


「それで、ひさびさのメルさんは、私に何の用事かな?」


メルエルは改まって、

「この度、私はパーティに参加しました。リーダーは、ケン。

私の他に3人のメンバーがいます。スオマは、メンバーの一人。」


「ホッホッホ。」ラシードが少しビックリしながら、楽しそうに笑う。


「レベルもアーチャー32になりました。つきましては、お願いがあります。」


「1つは形見の弓を欲しいということ。

もう1つは、ラシードの力を我々のパーティに貸してほしいということです。」


ラシードは、楽しそうな、懐かしそうな感じで、

「あの『一人で生きていくんだ!』みたいなメルエルが、

こんな立派に挨拶するなんてねぇ。長生きしてみるもんだ。」


「あ~、ラシード。昔の話は、今はナシw」

メルがコメカミを押さえて言う。


「弓は、・・ちょっと待っていなさい。」

ラシードは立って、奥に行く。


しばらく経って、布に包まれた物を持ってきた。

布を解いて中の物が明らかになった時、オレは「これは!」と、思わず言った。


ラシードはオレを見て、「分かるかね。」


それは良質なコンポジット・ボウだった。


コンポジット・ボウ:複合弓。複数の材料を貼り合わせた弓のことだ。

こちらの世界でもコンポジット・ボウを見かけたが、

素人のオレが見ても、イマイチ感漂う代物が多かった。


これは別物。優れた逸品だった。


ラシードが取り出して、弦を軽く張り直し、弾いてみせた。

弓は均一に綺麗に反ってゆく。滑らかで、それほど力がいらないようだ。


「これはメルエルの母君の弓でね。

彼女は、この弓を使って、ずいぶん活躍したもんだ。」


「メルには『この弓が弾けると思ったらおいで。』と言ったんだが、

そうか。もうそこまで来たか。」


「で、私に力を貸してほしいとは?」

「私達は、これからしばらくバシレーア公国内で活動する予定です。

物資の補給をお願いします。」


「活動場所は?」

お互い見合わせて、「アンタルヤ」。


ラシードは立って、大きい本のようなものを持ってきた。

おもむろに、銀の丸縁メガネを掛けて「老眼でねぇ」と言いつつ、

「あー。支店がある。 了解。承った。」


メルエルは、ホッとして、

「受けてくれなかったら、どうしようと思ってた。」と言う。

「ホッホッホ。」ラシードは笑った。



その後、幾つかの打ち合わせを経て、

「じゃ、今日はこれで帰ります。」とメルが言った。

「おや、夕食を食べていかないのかね?」

「今日は、まだ回る所があるの。後日、改めて伺います。」

「了解。その時は、事前に連絡をおくれ。ごちそう作って待ってるから。」



ラシード商会の外へ出てから、メルに聞いた。

「ここってメルの実家?」


メルは少し考えて、

「うーんと、実家のようなもの。」

「?」


「私、父とは早く分かれて、母と暮らしてたの。

母も病気で亡くなったりして、ここに預けられたのね。

それからここで育ったから、ほぼ実家。」


あら、メルさん。苦労してたのね。

思わずオレは、メルの頭をナデナデした。

「な・なによ?」

「いや、メルってエライなーと思って。」

メルは顔を赤らめて、

「子供みたいなこと、しないの!」

と、怒って言った。


「さて、次はスーの用事かな?」オレは尋ねる。

「メル姉、用事終わった?」

「終わった。」

「じゃ、ワタシの番だね。」


オレ達は、次の店に行くことにした。





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