第31話 この世界における、種族間差別について
翌日、メルと一緒に開拓者ギルドへ、こちらへ移動した手続きに行く。
朝にはメルの機嫌は直っていて、普段と変わりなかった。
午後遅くになって、ギルドに貼ってあったメモを読んで、スオマがやって来た。
「バシレーア公国の情勢とか、仕事どこにあるか、大体掴んだ。」
スー、お疲れさん。
今晩より、スーも一緒の宿で泊まることになる。
これはオレが指示した。
オレが、2匹のネズミに用があるからだった。
夕方になって一息つく頃、オレは宿のロビーの目立たない場所に座って、
軽く飲みながら、パウとポウに質問していた。
「パウ、ポウ。この世界における『種族間差別』の話を教えて欲しい。」
「ご主人様、やっと気が付いたみたいだね。」パウが言った。
「?」
『種族間差別。』
オレは昨晩のメルエルとの話を聞かせた。
「あー、了解。 じゃ、説明します。」とパウ。
パウからの話を要約すると、以下の通り
この世界には、ヒューマノイド型として、
『人間・エルフ・ドワーフ・獣人・魔人』の5種類がいる。
一般的には、『人間・亜人』で区別している。
ヒューマノイド型であれば、すべて交配可能。
伝説の時代に、神からの交信が不可能になった時、交配が可能になったと言われている。
現在では交配が進んで、多種族重なり合った混血人も多く存在している。
混血に関しては、かなり微妙な話題で、一般的には、公で語られることはない。
種族間差別の原因として、『純血種が尊ばれる風潮がある』とのこと。
国家において、それが顕著で、純血種ほど尊ばれるのは、各国共通。
ランデンブルク神聖王国では、純血種による階級統制が厳然と存在しており、
人間が最高種。以下亜人。
モラヴィア王国も、人間中心。しかしながら実力評価の面が高く、
亜人でも重用している。ただし、種族間差別は無いという訳では無い。
バシレーア公国は、亜人・純血種が最高種。
以下人間、混血種という組み合わせ。
テトラルキア帝国は、神聖王国同様。人間が最高種。以下亜人。
ベネト共和国は、元々種族が雑多なので、あまり関係無し。
オレ自身について言えば、元いた世界では人種差別に馴染みが無い。
接する相手には単純に『敵・中立・味方』みたいな考え方をしていて、
人種・性別・宗教で対応が変わるということは無かった。
まして、こちらの世界では種族間差別など、わかるはずも無く、
差別する理由が無い。
うーん。どこでも、差別って無くならないもんだなぁw
そんなことを、つらつらと考えていた。
「ここにいたんだ。」スオマがやって来た。
「パウとポウがいないから、気になって探してた。」
ゴメン。一言断ってから、連れ出せばよかったね。
「今、自分に欠けている、一般常識を仕入れてたとこ。」
「?」
「種族間差別。」
「ああ。」スーが隣に座って、
「ケン兄は、そういうの、気にしないみたいだもんね。」
おっと、ウエイターが来た。
適当に2人分の飲み物と、軽いつまみを頼む。
「解ってたのか?」
「ケン兄は、私を選ぶとき、種族を聞かなかったから。」
「あー。」そんなこと、気にするかいw
「パーティメンバー見ても解る。例えばイヴ姉は多分、『魔人』の血が入ってる。」
「あー。・・そうなのか?」
「魔人の血は、特性がキツい場合が多くて、出現すると苦労すると聞いている。」
「あー。・・そうだな。」
「マリ姉とメル姉は、よく解んない。」
「・・・」
「私のは、聞きたい?」
「・・どっちでもいいかな。」
「相手にしてないってこと?」
「信用してるから、気にしてないってこと。」
スーは話している間に、「お代わり。」なんて言って、同じのを2~3杯頼んでる。
ふーむ。種族間差別か。
元々、どーでもいいと思っている事だし、意識しないとマズいのかなぁ。
そんなことを、取り止めもなく考えていた。
しばらくしたら、
「・・・。 ムフフフフフ♡」 スーが、急に倒れかかってきた。
「?」
オレは自分のコップのを軽く飲んで・・・飲んで?
「おい。オマエのコップのって、・・酒!?」
飲んでみると・・甘くて強めの酒だった。
ジュースだと思ってたよ。
ウエイターを見ると、『ガッツ!』ポーズしてるw
あ~、気を利かせたんだね。
スオマは、すっかり出来上がっていた。
「ウフフフフフ♡」なんて言いながら、ペタペタくっ付いてくる。
パウ・ポウと一緒に活動させてたけど、ソロじゃ寂しかったかもなぁ。
しばらく一緒に行動しようと、オレは思った。
おっといけない。メルが心配する頃だ。
スオマは、クークーと寝てしまっていた。
オレは「ヨッコイショ」とスーを背負って、部屋に帰ることにした。
オレはウエイターに、笑いながら手を振って部屋に戻った。
「メルに怒られるだろうな~。」と思いながら。




