表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/373

第25話 ゴブリンレイド(3)



現在、4日目の午後。

戦況は、ほぼ硬直してしまっていた。


お互いに引く気はまったく無い。

今では、味方のはずのベネト共和国からの軍隊も、

開拓者ギルドとの関係は、すっかり悪化しているとのこと。


フフフ。オレにチャンスあるかも♪


ハモンから受け継いだオレの『勘』が、「参加しろ」と囁く。

オレは『ビックイベント』に参加できる可能性を考えていた。


まずは、『何が』あるかだ。

現状では、少しずつ戦況に綻びが出始めていた。

オレはパウとポウを情報探索に使い、侵入地点を探していた。



ところで『開拓者レイドグループ』だが、早速、物資が不足してきていた。

みんな疲労もしてきている。

オレは休憩時間に、砦の後方に出来た『市場』に、物資を調達しに行くことにした。



この世界では、ある程度の部隊が移動して戦闘する場合、

輜重隊しちょうたい』という、補給用に、商人・職人の一群が付いてくる。

これは『酒保商人』を中心とした商人の集団で、

鍛冶屋・甲冑屋・錬金術士といった、職人も多い。


通常の商売と異なり、戦地なので、同じものでも高く売れ、また緊急性も高いので、

修理なども、吹っ掛け値で仕事できる。

この連中が、戦場から、ちょっと離れた所で、商売を始めているのである。


これとは別に、賭博士、娼婦という『いかがわしい』職業の人達も付いてきて、

一緒に営業し、気分転換で訪れる開拓者によって、活況を呈する。


今回のように数千人規模の人間が活動している場合、

一つの街が移動してきたのと同じ規模で、『市場』ができている。


このような状況だと、治安も悪い。盗人、強盗など、当然のように入り込んでいた。

そのため、憲兵なども出ており、そこかしこで、騒ぎが起きていた。


「お兄さ~ん、寄ってかな~い?」

「ダンナ、今、盛り上がってますゼ!」

娼婦や香具師やしが、呼び込みに忙しい。


そんな中、必要物資を見ていたオレは、腰のあたりに違和感を感じた。

大したもので、しっかり閉じておいたポーチの紐を開けて、中を探っている手がある。

オレは、サイフを盗っていこうとする手を逆手に捻りあげて、盗賊を捕まえようとした。

その瞬間、下から突き上げてくるナイフ!


ナイフを避けつつ、逆手に絡めた手は離さず、更に捻りあげると、

「ナイフを捨てろ。」と脅した。


盗賊は、なおもナイフで攻撃してきたので、

逆手に持った手首をさらに捻って脱臼させてやった。


相手は激痛を感じて、ナイフを取り落とす。

そのまま脱臼した腕を引っ張り、

「言うこと聞いて付いてこい。でないと、二度と腕が使えないようにしてやる。」

と、脅した。


人気の無い場所へ連れて行って観察する。

若い女の盗賊だった。


脱臼した手首を抑えながら、うずくまり、燃えるような目でオレを睨みつけて、

「チクショウ! 殺してやる!」と息巻いている。


彼女は、女性と言うより『娘』という方が近いかなという印象だ。

高校生くらいなんだろう。


茶色い黒髪に、髪型は『うちまきパッツン』と言われるスタイルだ。


卵型のフェイスラインに、クリッとした眼。

小振りな鼻。

やや厚ぼったいオレンジがかったピンクの唇が可愛らしい。


躰は、思ったより発達しているのが、ピッチリした服装から分かる。

意外に大きいバスト。

対照的に、キュッと小振りなヒップ。

スラッと伸びた肢体が、健康的だ。


『将来が楽しみ♡』って感じだ。



オレは、女を立たせ、「服を脱げ」と命令する。


「この変態野郎め!」

「早くしろ。 下着は脱がなくていい。」

「腕が動かなくて、脱げるか!」

仕方ないので、オレが脱がせることにする。


ほぼ裸になった女の体を、武器と、体のどこかに入れ墨がないか、素早くチェックする。

特徴のある入れ墨があるヤツは、大概、ボスの『お手付き』で、窃盗団の手下だ。


一ヶ所、太腿内側に、入れ墨を消した後があった。

「これは?」

「ウルセエな! 変態野郎!!」

反抗的なヤツだ。


チェックが終わったので、武器を解除しながら服を着せた。

相変わらず手首は脱臼したままだ。そろそろ直さないとクセになる。


「このハンカチを噛め。」

「?」

「いいから、噛んで我慢しろ。」


オレは脱臼した腕を抱えて、「しっかり噛んでろよ」と言いつつ、

『ゴキッ☆』と関節を入れる。

「!?!!!」

女は一瞬真っ赤な顔になって、その後、真っ青な顔になる。


さて、と。


オレは、盗賊の武器をまとめて自分のポーチに放り込むと、

フラフラして立っている盗賊の腕を掴んでニッコリ笑って、

「さて、行こうか。」

女はオレを見上げて、「オマエ、オレを憲兵に差し出す気か!?」

オレは首を横に振り、「チョイと相談がある。」



市場に開いていた、小汚いが、まぁ落ち着けそうな店で、目立たない席に座った。


「オマエ、ソロだな。」と確認する。

「ソロならどうした?」彼女は、ジロッと睨みを効かす。


「エールお待ちっ!」と店員が2人分持ってくる。


店員がいなくなってから、オレは、

「デカい金儲けの話がある。」

と切り出した。

「!?」

「儲けは頭割り。人数増えると儲けが減るから、ソロのヤツを探している。」


女はエールのジョッキを持ち上げようとして「イテッ!」と手をおさえた。

オレは立ち上がって、脱臼した方の手首を両手で覆い、回復魔法を照射する。

女はビックリした顔をして、手首をグルグル回す。

「痛くないw」


オレは座り直して、

「オマエ盗賊だろ? レベルいくつだ? 隠密索敵とかできるか?」

「盗賊だが、レベルは判らん。隠密索敵は使えるゼ。」得意そうに答えた。


「今回のヤマは、マジでデカい。ただ、まず困っているのが、

そのデカいブツが『何』なのかが解らんことだ。」

「はあっ!? わからんもの、デカいかどうか解んねぇじゃないか。」


「デカいブツなのは解ってる。

何せ、ゴブリンキング・ベネト共和国・開拓者ギルドが三つ巴で狙っているんだから。」

「!? この戦争か!?」

オレはフフフッと笑って、軽くエールを飲む。


「普通なら、開拓者と共和国の軍隊が一緒に戦ってゴブリン討伐。

3日もあれば終わる。それが4日目にして膠着。

ゴブリンキングは兵力増強して撤退しない。

開拓者も共和国も各自徹底抗戦。探ってみたところ、ダンジョンに何かあるらしい。」


「それなら、ダンジョン入っていって、盗ってくればいいじゃないか。」

「バーカ。大きさも状態も解っていないもの、どうやって持ってくる?」

「あ、そうか。」


「オレは、レイドに参加してるから動けない。で、オマエだ。調べてこい。」

「ちょっと待った。」盗賊は手を挙げて、

「何にも確約無しで、そんな危ないクチに乗れねえよ。」


オレは、ポーチの中に手を入れ、思わせぶりにあたりを見回し、

「手を出せ。」

「?」

「いいから、手を出せ。」

テーブルの上に置いた彼女の手に、握るようにして、金貨10枚を渡した。

「!?」


「手付金だ。それと、『協力者』を付ける。」

テーブルの上、2匹のネズミが表れた。

『ハーイ♪』

「!?」

「パウとポウという。オレの従者だ。」

「お姉ちゃん、よろしく♪」「よろしくお願いします。」


「詳しいことは、この2匹から聞け。オマエが調べるのは、『何が』あるかだ。

次に、開拓者ギルドの今回のスポンサーがどこか。そこまでは調べてくれ。

ただし、ダンジョンの中に入って調べたり、命に係わる危ない橋は、絶対にわたるな。

もし判れば捕らわれた上、凌辱されて拷問・虐殺なんてなりかねん。

ヤバかったら撤退しろ。期限は、このレイドが、この次動き出すまで。」


「り・了解。」


「それと、これは『保険』だ。」

オレは、首輪状のネックレスを取り出す。

「首を出せ。」

「?」

彼女は首を出す。


『パチッ☆』とはめると、

「これはオマエがどこにいるか、どんな状況かが解る、マジックアイテムだ。

逃げても判るぞ。無理に外そうとすると、死ぬぞ。

もし命にかかわる状況になったら、ここを抑えて『助けて』って言え。

オレが助けに行く。」


武器を返す時になって、一番大事なことを聞いていなかったことに気づく。

「お前の名前は?」

女盗賊はニッと笑って、

「ギルリアン。」

「了解、ギルリアン。オレは『ポンセー』。魔法士レベル32だ。

ギルリアン、期待してるぞ。連絡はネズミを通して行え。では、行け。」


偶然かつ不確実ではあったが、探索者を送り込むことができた。

後は、『何』かが、いつ解るかだな・・・





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ