第18話 背徳の聖女
ヒーラーの女性は、現在、街の教会で奉仕に従事しているとのこと。
教会に行って、会ってみることにした。
彼女は、街の中心にある豪華な教会ではなくて、
郊外に近い、質素な方に滞在していた。
「キャサリン、廊下は走っちゃダメよ。」
「はーいw シスター。」
イヴリンは、トゥニカと頭巾というスタイルで、ゴシゴシと廊下を掃除していた。
いたって古い教会のこと、すでに汚れは染み付いてしまっていて、とれなかった。
それでも、彼女はゴシゴシこする。少しでも綺麗にするために。
真面目な性格が、現れていた。
「こんにちはー。」
「はーい。」
「イヴリンさんは、どちらにいらっしゃいますか?」
「イヴリンは、ワタシですが?」
「おお、これは失礼しました。」
「私はケンター。彼女はメルエル。二人とも開拓者です。」
手を差し出し、握手する。
「実は、ここのダンジョンに入る予定でして。
ギルドから、イヴリンさんはどうかとの推薦を受けました。」
「あー。確かに今は、どのパーティにも属してはおりません。」
「ただ、なんですけど、」
「?」
「ワタシが入ると、パーティ、分裂しますよ?」
「・・・」
「噂は聞いてますよね?」
イヴリンは頭にかけてあった頭巾を外しながら、にこやかに、
「あの、立ち話もなんですから、こちらへどうぞ。」
と、我々を奥へ誘った。
教会奥の控室みたいな場所には、ちょっとした机と椅子が並んでいた。
「ちょうど今朝、ハーブティーを作ったものですから。」
イヴリンがお茶を御馳走してくれる。
カップからは、気持ちの良い香りが漂う。
「ワタシは、修道女ではありません。バウンティハンター・賞金稼ぎです。」
「シスターで賞金稼ぎ?」
「ですから。シスターは、ワタシの特質を鎮めるために行っている行為です。
シスターじゃないんです。」
「?」
「ケンターさん、両手を机の上においてください。」
オレは両手を机の上においた。
イヴリンはその上に、自分の両手を重ねた。
「シスター!?」
「いいから。じっとワタシを見つめて。」
じっと見つめあっていると、少し気恥ずかしい。
イヴリンは、規律にのっとった生活をしているのだろう、
ゆったりとしたトゥニカの上からも判る、ぜい肉の少ない体に、
プクッとした、決して小さくは無いバストをしていた。
髪は亜麻色で、腰まで伸びるストレート。末端がクルッとカールしている。
整った面立ちをしていて、少しツンと上向きの鼻が可愛い。
唇は少し肉感的で、オレンジがかったピンク。
軽く開いた口元から、白い歯がのぞく。
何よりも彼女を特徴づけているのは、エメラルドグリーンの目だ。
アイシャドーを付けたような、濃いアイラインの中に輝く、エメラルドの宝石。
とても魅力的だ♡
その瞳が、誠実そうに微笑む。
ふと気が付くと、ハーブティーの匂いではない、別のかぐわしい匂いが漂ってきた。
段々匂いが強くなって、蠱惑的な香りに変化してきた。
体の芯が痺れるような感覚が強くなってきて、見詰めていると、
イヴリンのことがたまらなく好きになってくる。
その時、『ピリッ☆』とした感覚がしたかと思ったら、
蠱惑的な香りが、一転、腐った生臭いにおいに変化した。
同時にエメラルドグリーンの目が金色に変化、猛毒の蛇の目になった気がして、
巨大な蛇に飲み込まれるかのような感覚に襲われた。
『ヒッ!!』
思わず両手を引っ込めた。
「やっぱり。勘の良い人でしたね。」
ニッコリ笑って、イヴリンは言った。
「これがワタシの素性です。」
「人間ですよね?」
「勿論人間です。ただ、なぜか、この特質が付いてしまっています。
この性質が、良く出た場合は、蠱惑的になって、パーティの団結力がなくなります。
悪く出ると恐怖心に変わって、パニックを起こします。
どのみちパーティが維持できません。」
「それはなんとも。」
「最近は、この特質が強く出て来ていて、こちらでも持て余している状態です。
で、勘の良さそうな方が勧誘にいらっしゃると、こうやってお見せしております。」
「うーん。」
イヴリンは立ち上がると、
「こちらとしても残念ですが、ご縁が無かったということで。」
教会の入り口まで案内されて、
「成功をお祈りします。」と、送り返された。
帰り道を歩きながら、
「何か、特殊な能力の人なのね。」
と、メルエルが言う。
オレは、
「うーん、何かスッキリしないなぁ。」
頭をポリポリかきながら、
「メル、もう一度行ってくる。待ってて。」
教会の入り口に戻って、
「イヴリンさん!」
彼女は振り返って、
「あら、ケンターさん。どうしました?」
「もう一度、チャンスをください。」
「?」
「ここでいいや。椅子に座ってください。」
イヴリンが座ると、オレはその隣に座って、
さっきとは逆に、オレがイヴリンの両手を握った。
「ケンターさん!?」
「オレの目を見つめて。」
少し見つめていると、さっきの感覚が蘇ってきた。
よし。作戦開始。
魔導工学・第1理論の応用。
『人間の感覚器は、計測装置たりえる。』
オレは自分の体を観測装置としての使用を開始した。
イヴリンの体が発している様々な現象を、リアルタイムで分析する。
イヴリンのは、白魔法でも神聖魔法でも、黒魔法でもない、別の魔法だ。
オレは、魔法式、魔導式を交互に使い、翻訳のキッカケを掴もうとしていた。
最初は、どの領域を調べればいいか、解らなかった。
次第に影響を受けてくる自分の身体器官に注意して、
可視光線・不可視光線・電磁波・音波・無言の魔法式と、
様々な領域を手早く分析していく。
きたっ!
まずは無言の魔法・魔導の混成式だ。目から出ている。
次に、オレの鼻腔が様々なフェロモンを感知する。
主なものは口と鼻から溢れ出ている。
耳と体に超音波・低周波域からの影響が感じられる。
これは彼女の体全体が、微振動していた。
「ケンターさん?」
「静かに。」
オレは、意識を集中して分析していく。
イヴリンが発している様々な影響を、イヴリンの体に合わせて可視化して色分け、
モニターして見てみる。
なーるほど。
よくできている。
体全体から催淫魔法とフェロモンが、波のように湧き出してくる。
原因は解らないが、イヴリンは『全身欲情誘発装置』みたいなもんだ。
イヴリンの分析は完了した。
魔導式で、黒魔法への変換も完了。
今度はこっちが攻める番だ。
「イヴリン、いくぞ!」
「え!?」
「オレの目を、もっとみつめて。」
こちらから無言の魔導式をイヴリンの目を通して送り込み、イヴリンの意識を支配する。
イヴリンの目がトロンとしてくる。
よし。
意識の主導権は握った。
次にオレは、イヴリンの各感覚器を精査しながら、
どれがどのボリュームになっているかを調査する。
目から出ているの無言の魔導式の調整は、視覚野にあるらしい。
ここのボリュームを上げ下げする。
よし。
フェロモンは、
耳裏・脇・性器周辺等、臭腺・分泌腺のある場所と、肺から発生している。
これは・・・なるほど。
ボリュームは生殖に関わる場所にあるんだな。
実際に触っているわけではないが、魔導式を使って、
バストやデリケートゾーンにあるボリュームを、クリクリといじる。
「アッ♡」
「アッ♡」
イヴリンから、切ないため息と、吐息が漏れる。
よし!
オレは、あくまで真面目である。
ただ、ハタから見ていると、若い娘に、
何かイケナイことしているオジさん、といった雰囲気が濃厚である。
すでに教会内部は、イヴリンから発生するフェロモンやら催淫魔法やらが充満している。
この濃度なら、聖職者はまだしも、
15歳くらいの若い野郎なら、『思っただけで、イッちまう!』だろう。
よし!
最後の仕上げだ。
すでに彼女は、充血した顔をして浅い息を繰り返し、
蕩ける溶鉱炉寸前の容姿となっている。
オレはイヴリンの手を放して後ろに回り込む。
両腕を持ち上げ、後ろから抱きつくと、彼女のうなじへ顔を近づけた。
オレは、首筋を「ペロッ♪」と舐めた。
「ヒヤッ♡」
イヴリンが悶える。
これはイタズラだ♪
「さぁ、イヴリン。良い子ちゃん。仕上げだ♡」
オレはイヴリンの中にあるすべてのボリューム器官を動かして、
あたかもオーケストラを指揮する指揮者のように、
イヴリンのチューニングを開始する。
「ウン♡」
「ウン♡」
「アァーン♡」
チューニングを変えるだひに、イヴリンは、甘い吐息を漏らす。
よし。ここでラストの呪文だ。
オレはイヴリンの耳元に口を寄せて、ささやいた。
「イヴリンの支配者たるケンターが命ずる。
我が命令に従い、我が意志の命ずるまま、イヴリンの感覚をチューニングせよ!」
「アアン♡」
「ウウン♡」
といった小さな山の後、
『アアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーーンンンン♡♡♡』
よし! 完成。
ホッとして立ち上がったオレの後頭部に、
『なあにやっとるかああああぁぁぁぁーーーーーっ!!』
という声と同時に、メリエルの回し蹴りが、さく裂した!
それから10分後。
オレは、ズキズキする後頭部をガマンしながら、
「イヴリンさん、どんな感じです?」
と聞いてみる。
イヴリンは、
「うん♪ 何かすごくスッキリした感じがします。」
横で半分怒っている感じのメルエルが、
「そりゃ、スッキリしただろうよ##」
と、訳解んないことをつぶやいている。
「チョイと荒療治でしたけど、あなたの『色事』にまつわるトラブルの元、
多分、収まったと思います。」
「ホントですか!?」
「これからは、自分で意図して解放するか、オレが命じないと、解放されません。
自分で解放する時の呪文は、後でナイショで教えますので。」
オレはコホンと一息ついて、
「それでなんですが、もう一度お願いします。
我々のパーティに入っていただけないでしょうか?」
「ワタシでいいんですか?」
「それはもちろん♪」
あ、少し反対気味なのが、横にいるかもw
「それでは改めて。よろしくお願いします。」
イヴリンは深くお辞儀した。
イヴリンに解除呪文を教えて帰る時、教会の出入り口でイヴリンが言った。
「これからは『イヴ』と呼んでください。ケンターさん。」
「了解♪」
「あ、イヴ、」
「はい?」
「タンク連れてくるから、それまで待機で。 あと、準備進めててください。」
「了解です。」
さーて、次はタンクだ。
どんな人なのかなぁ?
オレは後頭部をさすりながら、教会を後にした。
ー聖光正教会アンタルヤ支部ー
辺境都市β-89より、イヴリン、ダンジョンパーティ参加の知らせが届く。
「イヴリンが再び、ダンジョンパーティに参加した。」
「『背徳の聖女』か。」
「なぜ彼女を開拓者のパーティに参加させる? 本部で活動させればよろしかろうに。」
「それは色々な意味で、できん。 我々にとっても。イヴリンにとっても。」
「・・・」
奥の一室で、2人の司教の密談が続く。
「あのダンジョンより、どうしても取り出したいモノがある。」
「他の魔法士ではダメなのか?」
「イヴリンが最適だ。他の者では、目的達成が叶わない。」
「まぁ、イヴリンなら容易いことかも・・な。」
「フフ。いざとなれば『色仕掛け』という手もあるし、な。」
「フフフ。」
「いずれにせよ、帰ってきてからじゃの。」
外は深い霧に覆われていた・・・
今回は3話投稿しました。
第18話 『背徳の聖女』で、少しエッチぃ表現にトライしました。
R15はクリアしたつもりです。
もしマズかったら、どこがマズいか、具体的に教えていただけると、
幸いです。




