英雄誕生
其の二 誇り高き名前
「もうね…本当やになるね」
勇者の切実な呟きに魔王と他の三人も頷いた。
「いやさぁ…魔王戦じゃん?テンション上がんじゃん?そりゃあさぁ…カッコつけたくなるじゃん?」
「うん、まぁね、分かるよ、分かる」
魔王が頷く。
「そりゃあ俺だってさぁ…ガルシアみてぇな斜に構えた名前が良いさぁ」
「斜に構えたってなんだよ」
抗議する戦士ガルシア。
「うーん…じゃあさ、名前、変えちゃう?」
「えっ」
「出来んの?良かったじゃん勇者」
魔王の提案に驚く勇者とガルシア
「まぁ変えるつっても表記だけならね。魔王権限でね」
「そんなん出来るんだ…」
目を丸くする魔法使いイザベラと僧侶シエル。
「表記変えるだけって…えっ、どんな感じ?」
「うん、ちょい待ち…」
魔王は両手を掲げると呪文らしき言葉を詠唱した。
「…なんも変わんないけど」
「ちょっと名乗ってみ」
「えっ」
「名乗れって。とにかく」
「えぇ…我が名は…」
「もっとノリノリで‼︎」
「っ…我が名は‼︎」
「勇者AAA‼︎‼︎」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
「よしっ‼︎」
「…えっ?」
あっけに取られる勇者達とガッツポーズの魔王。
「えっ…どゆこと?」
「表記変えたんだよ」
「変わってるね…確かに…」
あっけに取られたままのガルシア。
「…えっ結構凄くない、これ?」
「凄いっしょ」
「えっ…AAA…っしょ?…やばっ、めっちゃカッコイイ‼︎えっ‼︎カッコイイ‼︎」
「でしょっ‼︎良くない?読み方的にはさ…AAAみたいなさぁ‼︎」
「うぉっ‼︎めっちゃカッコイイじゃん‼︎やっば‼︎」
「カッコイイかぁ…?」
「本人も喜んでますし、良いのでは?」
呆れるイザベラと微笑むシエル。
「…っしゃあ‼︎我が名は勇者AAA‼︎勝負だっ‼︎魔王っ‼︎」
「よしきたっ‼︎…いいねぇ、ノッテきたよぉ‼︎」
その後勇者と魔王はノリノリの戦いを繰り広げ、最後は勇者の秘技、AAAスラッシュ(即興の技)が決まり、決着が着いた。
「ぐぬぅ…我が人間に負けるとは…見事なり…勇者AAA…」
「…魔王…最後に貴様の名を聞かせてくれ…」
「うむ…我が名は魔王マーオウ…」
「えっ」
「えっ」
「ぶっ‼︎…ダサくね?」
「おまっ…それは無いだろう‼︎‼︎」
完