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クロノブレイク・WORLD END  作者: えんぴつ堂
女神と魔王と賢者と終焉
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女神と魔王と賢者と終焉④

 まるで突き刺さっているようにも見えるけど、私の記憶の中ではそんなの無かった筈なんだけどな?


 「はわ~はわわ~ゆーしゃ様ぁ~ゆーしゃ様ぁ~!」



 リフレは、嬉しそうにクルクル回るけど、その腕に抱いたガリィちゃんを撫ぜる手はとまらない。


 「ね、ねぇ、リフレ、そろそろガリィちゃんをを放してあげて? なんだかもう、別の意味で大変な事になってるみたいなの!」


 「はわ?」


 私に言われてやっと撫ぜる手を止めたリフレの腕の中で、ガリィちゃんがその青い目を潤ませ顔を上気させながらピーンと背筋を伸ばしてぷるぷると震えて鼻に掛かったような声で鳴いている。



 こ、コレは、かなりまずいんじゃないのかな?



 「あらぁ~……うちの子ったらこんな小さな子に何しちゃってるのかしら?」



 フルフットさんがため息を漏らしながら『こうなたら責任とって、お嫁に貰うしか……』と、冗談交じりに呟く。



 ピシッ!


  ピキッツピキキキ!


 それは、最後まで残った氷に亀裂が入った音。


 「あ"、リフレ様! 今すぐガリィお嬢様を放して下さい! 大司教様も今のお言葉を撤回して下さい!」


 メリッサちゃんが叫ぶように言う。



 うん。



 そうしたほうが良い。



 私も取りあえず身構える。


 

 ピシッ!


  ピキッツピキキキ!



 Rを覆ったぶ厚い氷に無数の罅。



 魔力とも気力とも取れない膨大なエネルギーの膨らみ……あーあー怒ってる怒ってる。



 「はわわ~どうしたのかなー?」




 リフレ、空気読んで!


 て言うか、前はあんなに聡かったのにどうしてそんなにポンコツになっちゃったの??



 ぱきぃいいいん!



 遂に氷が砕け散る!



 「何してんだてめぇ……!」


 逆立つ真っ白な髪、血のような真っ赤な瞳がリフレを睨みいつもの濁音あるしたったらずな可愛らしい口調が消え失せはっきりとした声が殺気を放つ。



 タッツ!



 砕けた氷の地面を蹴って、一瞬でリフレに迫った白い閃光が腕に抱いていた子猫を奪いとり距離を取って威嚇とばかりに牙を剥く!



 「みやっ?!」


 夢見心地な所をいきなり奪われ、ぎゅーっと抱きしめられたガリィちゃんはもだもだとしてやっと顔を上げてピンと耳をたててへにょんと伏せる。


 「あーる……なの?」


 ぎゅー。



 「あーる、おっきくなった?」



 ぎゅー。



 『おっきくなった』


 

 ガリィちゃんの言葉の通り、リフレに向かって牙を剥くのはRであるのは間違いないがそれは先程までの5歳児ほどの可愛らしい姿ではなくその体つきはぱっと見12・3歳くらいの子供だ。



 き、キレイ!



 いつもの小さいRも妖精みたいで可愛いけれど、これはまるでアルビノの天使!


 こんな状況なのに、つい見とれてしまう中世的な美しさと可愛らしさの狭間の美。



 けれど、その美しさも殺気に染まった赤い瞳の所為で鋭いものになる。



 「オレのモンに気安く触んじゃねーよ! くそエルフ!」


 「め! R、くそとか言っちゃメだよ!」


 声変わり前の美しソプラノが汚い言葉を吐くけど、リフレは怯まずRとガリィちゃんをじっと見ながらにこにこ笑うとぱっとフルフットさんの方に向く。



 「ねー! パパー、ボクこの子達ほしーー」



 はぁ!?



 突然のリフレの発言にその場みんなが呆気にとられたように固まる。



 「二人ともボクのお嫁さんにするのーーー!」

 

 「ふざけんな! コイツはオレのモンなんだよ____は? 二人?」



 ガリィちゃんを隠すように抱きしめるRをリフレの深く暗い緑の目が、ぬるりと捉えてほほ笑む。



 「うん! 君もボクのお嫁さんだよーーー!」



 にこにこそう宣言する息子に『あら~仕方ないわねぇ~』っと、フルフットさんが本気とも冗談とも取れない返事を!



 て、ちょ、フルフットさん!?


 Rもガリィちゃんもまだ5才って、問題はそこじゃないって言うか!


 なんか、いろいろどうしよう!?


 ちらりとメリッサちゃんを見るけど……駄目だ!


 美しいRの姿に、鼻血を噴き出して立ったまま気絶してる!



 「ふざけんな、このくそエルフ……! 誰が、嫁だ、オレ等は二人で十分だ! な! ガリィ______」



 Rが見たのは、顔を真っ赤にして耳をぴるぴるさせる双子の姉。



 「お嫁さん……Rと二人でリフレにぃにぃのお嫁さん……」



 ぶちっと、何かが切れる音がしたような気がしてRの周りにエネルキーが渦巻く。


 「殺す。 そのコードをばらして、消滅させて、二度と生物として再構築なんてさせない」


 真っ赤になってうっとりとするガリィちゃんをそっと地面におろしたRのただ得さえ赤い瞳に更に血管が走る!



 不味い!


 Rは小さいとは言っても、賢者の……あの得体のしれない力を使える!


 いくらリフレが、勇者の従者に選ばれるほどの実力者でもそれは『僧侶』としてのもの。


 攻撃系はさほど得意じゃ____って、今そんな事で争っている場合じゃないよね!?


 

 「まって! R、」



 止めようとする私の肩をフルフットさんが掴む。



 「フルフットさん! このままじゃ、リフレが!」


 

 「大丈夫よ。 腐ってもウチの息子は勇者の従者よ?」



 フルフットさんは、『見ててごらんなさい』と言う。



 でも、Rの無尽蔵に近いエネルギーに対抗するなんていくらリフレが才能あふれる僧侶だとしても分が悪すぎる!



 殺気をまき散らすRとふにゃふにゃ笑うリフレが向かい合う。



 「命乞いしろ、くそエルフ。 許さねーけどな」 



 まるで天使のような美し声が、口汚くリフレを脅すけどリフレはその無邪気な笑みを浮かべたまま暗い緑の瞳でじっとRを観察する。


 「……リミッターを外して、一時的に体を大きくしたんだね? そうすれば、少しの間使えるエネルギーの幅がひろがるもんねー」



 Rの瞳が見開くけど、すぐにその唇が詠唱する!



 「コード:125487 ブラインドエフェクト」


 

 一気に吹き荒れる濃霧が辺りの視界を遮るけど、リフレに動揺はない。



 「うみゃ!? あーる! 見えないよぉ!」


 「ああ、ガリィちゃんこっちおいで」



 私は視界0の濃霧の中、魔力を頼りにガリィちゃんを見つけて抱き上げる。



 「みゃ!? ふぅーーー! ガリッツ!」



 噛まれた!


 でも可愛い!


 懐かない子猫を抱き上げて、私は濃霧の中の魔力を探る。



 ……リフレの魔力しか感じない。


 Rのは、エネルギーとしては感知できるけど魔力とは明らかに異質。


 感じると言っても、それはRがそのエネルギーを魔力として使用した場合。


 しかも、その残存量は底が見えない……まるで、自分の魔力と言うよりは元々ある物を取り出しているようなそんなイメージだ。


 賢者の力。


 ジジジジ。


 記憶の底。

 

 黒ぶち眼鏡の優しい顔が笑う。

 

 こっじ。


 私は、彼をそう呼んでいた。


 閉じ込められていた私を『再生』し、何も知らない私に全てを与えた人。



 その彼が使っていた『賢者の力』。


 それは、この世界の物とは明らかに異質のもの。


 こっじは、この力の事を聞くととても悲しそうな顔をしたから私もキリちゃんも聞くのをやめた。



 だから、仕組み何てよく分からないけれど詠唱一つで全ての属性のエネルギーを無尽蔵に仕えるソレは私の知る限り最強の力だ。



 きっと、それは女神クロノスにだって抗う事は出来ない。



 その力をRは扱う事が出来る。


 それだけで、『私』にとっては脅威であったはずだけど……。 



 「はっ……はっ……」


 「ほーら、どうしたの? もうお終いかな♪」



 濃霧が過ぎ去ったそこで見たのは、白銀の鎖に拘束され膝をつくRとそれを見下ろすリフレの姿。



 「焦り過ぎたね? 確かに君の賢者の力は最強だけど万能じゃない……どこがだなんて教えてあげないけれど♪」



 牙を剥き悔しそうに呻るRに、リフレはにこにこと意地悪に言う。


 勝負は意外にあっさりとついた。


 Rが賢者の力で発現した濃霧に紛れ、一気にカタを付けようとしたところにあの鎖。


 あれには単純なエナジードレインの魔法がかけられていて、捕らわれたRは呆気なくその餌食となった。


 リフレの言う通り、確かに賢者の力は最強だ。


 尽きることのない無尽蔵の魔力に、現存する全属性を全て使う事が出来る。


 それだけじゃない、その気になれば破壊だけでは無く再生だって可能だ。


 けれど。


 それを扱うその体は、誰よりも弱く誰よりも脆い。


 かつて、その力を振るっていた賢者オヤマダがそうであったように。


 何故なら彼は、そこら辺にいるごくごく普通の男子中学生に過ぎなかったんだから。


 そして、今それを扱うRもまたか弱いアルビノにすぎない。


 普通の人間の中学生に比べれば、Rはまだ丈夫な方かもしれないけれど少し前まで卵の殻の中でいしか生きる事が出来なかった。


 今こうして肉体を得ているのは、本来なら干渉する事のない筈だった私の『勇者キリカ』の血を受けてやっと肉体をかだどったに過ぎない。



 そこに、無茶をして……頭に血が上って自滅したんだね。



 「みゃっつ!? あーる! あるぅうう!!」



 腕の中のガリィちゃんが暴れたので、そっと地面に降ろすと『ふぅーーー!』っと捨て台詞の様に私を威嚇してからRのほうへと掛けていく。



 「あーるーーー!」


 ガリィちゃんは、巻き付く鎖をものともせずRに抱き付く。



 「おっと」



 リフレは、鎖に全身でぶつかっていくガリィちゃんの為にエナジードレインを解除する。



 「うにゃあ!? あーる、しっかりしてぇえええ!」


 ガリィちゃんは、身体エネルギーを奪われぐったりとするRを緩んだ鎖の中から掘り出してぎゅーぎゅー抱きしめてみゃあみゃあ鳴く。



 「大丈夫だよ♪ ちょーっと身の程を分からせただけだし、それにもうすぐ_____」



 ぽむん!


 

 「みゅ?」


 がっくんがっくん揺らされていたRの姿が、突如いつもの可愛らしい5歳児に戻る。



 「ぅ……くそっ……ガリィちゃんの前でこんな奴に負けるなんて、ヤなんだなっ……!」


 「あーる!」


 Rは、ガリィちゃんに抱きしめられながらも悔しそうにリフレを睨む。



 「ふふふ……かわいいなぁ~」



 ふわりと揺れるローブが、ガリィちゃんとRの前に膝をついて柔らかそうな手が綿菓子のようなふあふあのグレーの髪に触れてそのままするりと顎のあたりを撫ぜる。



 「ぅにゃぁああん~」


 ツボを捉えているのか、ガリィちゃんは耳を震わせながらごろごろ喉を鳴らす。



 「みぐっ!? が、ガリィちゃんに触るななんだな!」 



 「ふふふ」



 動けないRを妖艶な笑みで眺めたリフレの手が動く。



 もそっ。



 こしょこしょこしょ……。



 「ふみゃっ!? やめっ、止めんるんだなっ!? うにゃっ!! みゃぁああああ!!」



 Rの悲鳴が喘ぎ声に変わるまで約3秒。



 私の目に映ったのは、幼児にあるまじき恍惚の表情を浮かべた幼子が二人。


 エルフの魔性の手の平に弄ばれていた。



 何故だろう。



 何だか、物凄く見ちゃいけないものを見せ付けられているような気がする!

 

 「あらぁ~……これは本格的に責任取らなきゃかしらぁ~ん♪」


 フルフットさんは、息子の行いを咎める気はないのかローブの裾を整えながらふぅとため息をつく。

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