どうでもいい④
そんな事よくある?!
よくあるって言った??
「戦闘に夢中のお前は、衣服が破れようが骨が折れようが相手をせん滅するまで止まらないだろう? 初めてこの世界で魔物相手に戦闘をした時なんて、その服が破壊されはほぼ全裸になろうが相手の原型がなくなるまで攻撃をやめなかったじゃないか……毎回全裸に血しぶきを浴びて、これじゃどっちが狂戦士なのかわからんとアンバーに揶揄されてたっけな」
戦闘の度に全裸に?!
何それ!?
前の私何しちゃってるの??
ギャロは、濡れた髪を猫が水を払うみたいにぶんっと振って水気をとばしながら『今更、下着を着忘れたくらいじゃ驚かん』と言って自分の籠の中かを少し漁って何かを手に取ると私の手に握らせた。
「ま、そのひらひらの下穿きの裾の短さでは歩くだけで尻が見えるからな……気休めだが、俺の替えをやろう」
ギャロのパンツ。
うん、おっぴろげてしまったものは仕方ない……今は一刻も早く下着を着なければ!
男物だろうが贅沢は言ってられない……え?
私は、渡された下着を見て固まる……だってこれ……?
「ね、ギャロ」
「なんだ? 少し大きいだろうが我慢___」
「ちがう! えっと、これ、ギャロのなんだよね?」
「ああ……、魔王軍の支給品だが俺の物で間違いない」
ま、魔王軍の支給品……いや、コレはそういう問題じゃない!
手の中の下着を両手の指でつまんで広げてみる……間違いないコレは……!
広げたそれは余りに見覚えのある、私の好みの白地にミントブルーのしまパン!
そしてもまごう事無く、そのデザインは女の子用だ!!
「ま、魔王軍の人はみんなこれを?」
「軍というか、魔族の男は大体そんな感じの下着を着ているな……なんでも魔王の身に着けていたものを模したデザインで基本的には胸当てとセットなんだが俺はそれは好かんから下だけ着ている」
ギャロは、さらりと言う……どうしよう……きっとこの下着が女物だって魔族の人は知らないんだ!
て、言うか!
魔王って男だよね?
なにそれ?
男なのに女物のブラとパンツを身に着けていたって事??
私の中の魔王に対するこの世界を滅ぼす脅威とか畏怖とか魔族を率いる威厳とか禍々しさとかのイメージが、ミントブルーのパンツとブラを装着したど変態へと塗り替えられていく!
ねぇ、切斗。
姉さんは、これからそんなど変態とこの世界の命運をかけて戦わなくちゃいけないのかな?
「どうした? 俺の下着はやっぱり嫌か?」
「ううん! そんな事無いよ……ありがとっ」
このパンツが女物だなんてギャロには……魔族のみなさんにも言えない!
くっ!
魔王め!
世界を脅威にさらすだけじゃなく、こんな所で人々を貶めるなんて罪深すぎる!
私は、パンツに足を通して誓う。
正直いまの私にとって、この世界の事なんてどうでもいいかもしれない。
けれど、やっぱり魔王はこの手で倒さなくては!
そして、ギャロにちゃんとしたパンツを着させてあげなくっちゃ!
だって、私は勇者でギャロの旦那さんなんだもん!
と。




