002 Magic tool(魔法道具)
ここは大陸辺境の国、ジュノーン王国。国王は先年に戴冠式を終えた、若き王フーフリスト=ハン=ジュノーン。王都は国名と同じジュノーン。場所は王が住まう王宮の台所。
少年らしき体格の料理人が、オーブンの下の木炭を燃やすかまどに上半身を潜り込ませ、なんやらもぞもぞ動いている。低い料理人帽をかぶってるところから見習い料理人のようだ。王宮料理人は帽子の高さで仕事内容が分けられている。一番高いのはコック長、その次にコック、コック補佐、コック見習いと4段階に分かれている。低い帽子は、かまどの中に頭入れた時に煤で汚れたかまどに頭を汚さないので、見習いには非常に適した帽子となっている。
かまどをのぞき込み、手を出し人差し指の珠玉のついた指輪を前に出し、魔法にて火をつけようとする、コック見習い。
「魔法宣誓!魔法宣誓! 熱き炎!赤き炎!焼き尽くす炎!炎よ!顕現せよ(チャッカフリート)!」
真剣な顔つきで魔法宣誓し、呪文を唱える。そして魔法力を指輪に注ぎ込む。炎が珠玉の表面から音をたてて吹き出し始めた。
呪文を唱えるというのは良い点がある。集中力が増すのか、魔法力の注入がしっかりする。しっかりすれば炎が大きくなるとかの副次的な利点もある。そのため呪文を唱えるというのは効率アップのため日常的にされている。
木炭に火がつき、火の加減が安定し、オーブン全体に熱がこもっていく。パンの焼ける香ばしい香りが台所の窓からもれ、王宮内にパンの香ばしい香りが漂う。王宮の朝の光景だ。
先の光景で特筆すべきは魔法道具。炎の指輪は非常にメジャーな道具で、コック見習いの給金で買うというほど安くはないが、ジュノーン金貨10枚ほどで町の道具屋で売られている。
この炎の指輪の珠玉の中に、魔法回路が組み込まれている。この魔法回路は炎の性質を持つ鉱石の中に何らかの手段で刻印されている。体に直接触れている指輪部分が、体から魔力を珠玉に伝える導通部分になっている。指環は珠玉の魔法回路と直接接続されており、魔力回路に魔法力を注ぎ込むという作りになっている。指環は魔法力の導通の良い銀を用いられている。珠玉は血のような赤い色である。石の質は水晶に近く、魔法種ごとに魔法回路を刻む。澄みきってない珠玉に魔法回路を刻むとそこで澄んでない部分で魔法力が分散してしまい魔法自体が発現しない。そのため刻印するとので澄みきったものしか使われない。石は川辺で採取されたり、鉱山で地中深くから採取されたりと、採取の方法はさまざま。世界の各地で採取される。魔法の指輪に加工するのは魔法道具製造ギルドに加盟する技術者集団で、大国の城下町に工房を構えているケースが多い。珠玉の流通が大国経由なのと、魔法の指輪は軍需物資でもあるので、国に囲われているのかもしれない。刻印方法は一子相伝なのか、何らかの持ち出し禁止の手段を用いてるらしい。そこら辺は実にキナくさい。
人気の指輪は生活に役立つものがほとんどである。水が湧き出す水の指輪と、炎を出す炎の指輪、かまどの送風目的や乾燥目的のための風の指輪、夜道を照らす光の指輪に人気がある。




