ポプリとマルハナバチ
秋の風が、ススキの匂いを連れてくる。
ときめく季節は、終わり、準備の匂いが、身体中を駆け回る。
咲いてる花々も、しっとりとして、肉厚だった。
バラ園の片隅に住む、マルハナバチは、秋から冬への厳しさを知っている。
一度も、冬を知らないのに。
秋の深まりに、追い立てられ、四季咲きのバラ園を飛び回る。
近くのミツバチ達や、身体の大きい熊ん蜂を避けて、まん丸い身体に、短い羽根で、飛び回るマルハナバチは、ひょうきん者に、見える。
一生懸命なのだが。
黄色い花を咲かすバタースカッチが、大好きだったが、この世では、二度と会えない。
短い命の羽ばたきが、バラ園に、低い振動を与えている。
彼女は、生きた。
そして、バタースカッチの黄色いポプリの香りの中で、眠る。
深い薔薇の芳香が身体を包むが、しとねに眠る羽根は、あの柔らかいホバリングをする事は無い。
今は、ここまで。