BS1 頼り人に集う人々
ルフェラがペンダントのようなものを手にした頃、ある村では、数人の村人が老婆の家に集っていた。
瞬きするのも忘れ、呼吸するのさえ ままならなくなるほどの緊張感。それに耐えられなくなって、祈るように両手を合わせ俯く者もいる。
異様なほど張り詰めた空気の中で、期待と不安が入り混じる彼らの目は、ただ一人の老婆に注がれていた。
そしてまた、老婆も机の上の円盤と、真ん中に置かれた丸い水晶の玉をジッと見つめていた。
あまりの緊張に飲み込む唾さえなくなった村人の一人が、たまらず声をかけようとしたその時、老婆の眉が微かに動いた。
そして──
「もうすぐじゃ…」
しわがれてもなお、力強さを失わない声が静まり返った部屋に通った。
待ちに待ったその言葉に、村人たちは今まで吸えなかった空気を一斉に吸い込む。それを吐き出す前に、老婆は続けた。
「西の方角より一筋の光。救い人は一匹の獣を従えて、もう間もなく現れる…」
「ほ…本当でございますか、ユージン様!?」
「ああ。間違いない、もう、間もなくだ。だが──」
〝間違いない〟
その言葉に、一瞬、村人から歓声が沸きあがったが、最後の言葉に、再び静まり返った。
「──前にも言った通り、どちらにとっての救い人になるかは分からぬ」
「ではもし…向こうにとっての救い人だとしたら──?」
「ワシらは生きておれぬかも知れぬな…」
「そんな…」
「ではどうしたら、こちら側の救い人になってもらえるのですか…?」
言葉を失った者の代わりに、違う村人が質問した。
老婆は、その者を見つめ重い溜め息を漏らした。
「それも分からぬ。全ては救い人のみ知ることじゃろう…」
「全ては救い人のみ…」
老婆はそれ以上何も言わず、村人もまた、無言で帰宅した。
〝どちらにとっての救い人になるか…それは救い人のみ知る事…〟
他の村人にそう伝えても、やはり、〝間もなく…〟 と言う言葉には期待が膨らむ。
そして、村人たちは、その日を待ちわびていた…。