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女神伝説  作者: Sugary
第三章
16/127

3 空からの黒い訪問者 <1>

 昨日は、この村に二日かけて辿り着いたうえ、城と呼んだ方がふさわしいぐらいの大きな家に案内されたり、人ごみの中で もみくちゃにされた一日だった。

 こんなものでいいのか…? という疑問があったにもかかわらず、イオータという男と話をするうち、それもいつの間にか忘れていった。

 夜中に目が覚め、ひょんな事からその疑問を思い出したのだが、ネオスの口から聞かされた 〝ばば様の教え〟 があたしの気持ちを楽にさせ、再び床につく事ができた。そしてそのまま一度も起きることなく ぐっすりと眠る事ができたあたしは、次の日の朝を気持ちよく迎えられる……はずだったのだが──

「きゃぁ~~」

「なっ…!?」

 布団の中で、朝日を浴びながら幸せな気分に浸っていたあたしは、わけも分からず飛び起きた。

 耳をつんざくその悲鳴は、高いびきをかいているラディさえも起こすほどだった。

「な…なんなんだよ、今の声──」

「ミュエリの声よ──」

「下の方から聞こえたけど──」

 ネオスが 〝下〟 と言うや否や、あたし達 三人は勢いよく階段を駆け下りていた。

 階段の下には宿の人がオロオロしているだけで、そこにミュエリの姿は見当たらない。

 〝どうしたのか?〟 と聞くより先に、宿の人は階段を駆け下りたあたし達に駆け寄ってきた。

「お客様──」

「ど、どうしたの!?」

「お客様のお連れの方が先ほど風呂場の方へ向かわれたのですが、急に悲鳴が──」

 一番知りたいのはその先の言葉だったにもかかわらず、宿の人は 〝どうしましょう〟 とばかりに、うろたえるだけだった。どこに向かったのかが分かってるなら、確かめてくれてもよさそうなのに、それもしない。結局、何が起こったのかを把握していなとふんだあたし達は、彼女らをその場に残し風呂場へと向かった。

「風呂場…って、あいつ昨日 風呂に入らなかったのかよ?」

「そんな事 気にしてる場合じゃないでしょ!!」

「けどよ──」

 そう、ラディが続いた時だった。風呂場へ続くローカを曲がった所に、タオルで顔を半分かくし うずくまっているミュエリがいた。

「ミュエリ!?」

「え…ル、ルフェラ?」

 あたしの呼びかけに、顔を上げたミュエリ。

「どうしたのよ?」

「どう…って」

 そう言って、視線を九十度回転させた。思わずあたし達もつられて見たのだが、そこにはこちらに背を向けた男性が腕を組んで立っていた。

「ちょっと、あんた。ミュエリに何したのよ!?」

 変なことしてたら絶対に許さない…とばかりに、あたしは凄みをきかすように、少し太めの声を出した。

 すると、その男はゆっくりと振り向きざま 声を発した。

「オレは──」

 え…? この声──

 そう思うが早いか、あたしの目は男の顔を捉えた。

「あ…んた──」

「何にもしてねーぜ。オレの顔見るなり急に叫んだんだ。──それにしても、あんな時間に食って、よく 顔 ムクまなかったな?」

「は…?」

 一瞬、〝こんな時に何を言ってんだ?〟 と、理解不能だったが、すぐにそれが昨日の夜の事だとわかった。

「あ…し、失礼ね。そんな事より、本当に何にもしてないんでしょうね?」

「してねーよ。──そうだよな、ミュエリ?」

 イオータは、そう言うなりミュエリに手を差し伸べた。

 ミュエリは、まだ顔を半分隠したまま、イオータの手と顔を交互に見つめていた。いつもの彼女ならすぐにでも自分の手を重ねるはずなのに、今回は珍しくそれをしない。らしくないその態度に、さすがのネオスも声をかけた。

「ミュエリ…?」

 そう言って彼女に近付くネオス。途端に、ミュエリの目の色が変わった。

「──ダメ! ネオスはこないで!」

 その態度は、あたしたち全員を驚かせた。

 あのネオスですら近寄らせないなんて…。

「ミュ…エリ…? あんたどうしちゃったのよ。やっぱり──」

 やっぱり何かあったんじゃないかと心配するあたしたちをよそに、ミュエリが発した次の言葉は──

「だって…寝起きで、まだ顔も洗ってないのよ」

 だった。

 悲鳴どころか、こっちが奇声を上げたくなる…。

「じゃぁ、なに? 寝起きをイオータに見られたからあんな悲鳴あげたっていうの!?」

「そ…そうよ」

「たった、それだけ?」

 あたしは、この 〝たった〟 という三文字に力を込めた。

「た、たった…とは何よ。私にはとても重大なことなのよ」

「あ~、そう。重大…ね…。そんなに寝起きを見られるのが嫌だったら、毎朝 袋でもかぶって歩けば?」

「袋…って…。失礼ね──」

「だいたい、あんたにとっちゃ重大なことでも、あたし達にとってみれば、たったで片付けられる事なの。そんな事で、気持ちよく起きれるはずだったあたしたちの朝がぶち壊されるなんて、まっぴらよ!」

「なん、ですってぇ~。そんな言い方しなくてもいいでしょ──」

「まぁまぁ。こんな所で言い合いはよそうぜ。寝起きを見られて恥ずかしいってーのは、普通の女の子なら当たり前だよな。そーいう所は可愛いと思うぜ」

 ミュエリの逆立った気持ちを上手くなだめたのは、再び 〝ほら、立って〟 と手を差し伸べたイオータだった。案の定、ミュエリの気分は一転し、ご機嫌麗しく イオータの手に掴まった。

「あ、ありがとう…」

「いいえ。顔、洗ってこいよ」

「うん…」

 珍しく顔を赤らめたミュエリは、あたし達のことなどまるで眼中にない様子で、イオータの言葉どおり顔を洗いに行った。そのすぐあと、後ろから様子を伺いながら近寄ってきた宿の人が、おそるそるあたしに話しかけてきた。

「あのー、大丈夫でしたでしょうか?」

「え…? あ、大丈夫よ。何でもないわ。ただの過剰な羞恥心があんな悲鳴を出させただけだから」

「は…?」

 そう言うと、意味が分からないといった顔を見せる宿の人をその場に残し、あたしは重い足取りで引き返した。


「なぁ…」

 部屋に戻るなり、ラディが口を開く。

「なによ?」

「あいつ、知ってる奴なのか?」

「あいつ…って?」

 それが誰を指してるかぐらい分かっていたが、敢えて そう聞きかえした。

「さっきの男だよ。初めて会った奴との会話じゃなかっただろ? 〝あんな時間に食った〟 とかなんとか言ってたしよぉ」

「……まぁね」

 これから始まるラディとの会話が、どんなものになるか予想できた為、あたしは半ばウンザリしながら小さくそう答えた。

「誰なんだよ? イオータとか呼んでたけど──」

 あの状況でよく聞いてたわよ、まったく…。

「その通り、イオータよ。知ってんだったらいいじゃない」

「そーいうことじゃねーだろ?」

「…分かってるわよ」

「──で、誰なんだよ?」

「…き、昨日のお昼、ご飯を一緒に食べたのよ」

「え…?」

 ラディより早く反応したのは、彼の後ろで黙って聞いていたネオスだった。

「 〝え…?〟 って、お前…。昨日はミュエリと三人で昼飯 食いに行ったんじゃねーのか?」

 ラディは後ろを振り返り、〝どうなってんだよ?〟 とネオスを責めた。

「いや、それが…。途中ではぐれて…」

「なんだとぉ!? 何にも知らねーところでルフェラを一人っきりにさせたって事か?」

「ま…ぁ…」

 ネオスはラディの言葉に反発しようとしなかった。

「ネオスが悪いわけじゃないわ。あたしが見失っただけよ。それに、すぐあとに手を引っ張られて…最初はネオスかと思ってたけど、結果、違ってたの。あたしの手を引っ張ってたのは、あのイオータだったのよ。ついでだから一緒にご飯を食べた、ただそれだけの事よ」

「ただそれだけ…って、どこの馬の骨ともわからねー奴と一緒に──」

「ミュエリだって知ってるし、一回 会ってるのよ。イオータとは」

「は…?」

 驚くラディをよそに、あたしは続けた。

「彼、ミュエリに指輪をプレゼントした人よ」

「指輪? ──って事は、ミュエリの事を 〝キレイだ〟 って言った、あの 節穴野郎か!?」

 節穴…。それはなんとも言えないけど…。

「ちょっとぉ、節穴とはどういう意味よ、節穴とは?」

 顔を洗い 髪も整えたミュエリが、スッキリした面持ちで帰ってきた。

「節穴っていったら節穴だ。そのまんまだろーが」

「何よー」

「もー、朝からやめてよね。ただでさえ あんたの悲鳴 聞いて気分悪いんだから。これ以上ケンカして不愉快な思いをさせないでよ!」

「不愉快…って、失礼ね。だいたい、ラディがあの人の──」

 とそこまで言って、ラディのほうを向いていたミュエリは、何か思い出したのか、急にあたしのほうを向き直った。

「──それより、ルフェラ」

「な、何よ…急に…」

「あなた、彼の事 〝イオータ〟 って呼んだわよね」

「あ…」

 ──ったく、またこのパターン?

 ラディといい ミュエリといい、どうしてこう 聞いてほしくない事とか忘れてほしい事を憶えてんのかしら。普段は大事な事ですら簡単に忘れる生き物なのに…。

「 〝あ…〟 じゃないわよ。あなたまさか、抜け駆けしたんじゃ──」

「──そのようだぜ」

 〝な~にが抜け駆けよ。バカ言ってんじゃないわよ〟 と言ってやろうとした時、すでにラディが答えてしまった。

「そのようって…どういうことよ?」

「昨日の昼飯、食ったんだとよ。一緒に」

「一緒に!? ということは二人っきりで!?」

「ああ」

「どうして──」

「おめーらがルフェラと一緒に行動しなかったからだろうが」

「失礼ね。ルフェラがついてこなかっただけよ。それに、あれからずっと心配してたのよ。ご飯食べてからいろんな所 捜したけど見つからないし、ネオスもすっごい気にしちゃって、一度は宿まで戻ったんだから。なのに、その間 あなたは彼と二人っきりで食事してたなんて──」

「ミュエリ!!」

「な、なによ…」

 自分のことを正当化するみたいにペラペラと喋っているミュエリを、あたしは聞き捨てならない言葉を聞いた為、声を荒げて止めた。

「あたしがついてこなかったってどういう意味よ。あんたがとっととネオスを引っ張ってったから、ついて行けなかったんでしょ。それに 〝ずっと心配してた〟 わりには捜す行動が 〝ご飯 食べてから〟 というのはどういうことよ。そのうえ、買物なんかもバッチリしちゃって、余裕でお風呂に入って寝たんでしょーが!?」

 〝これのどこが心配してんだ〟 と言わんばかりに、あたしも一息でまくし立てた。

 これにはさすがのミュエリも黙ってしまった。何か言いたくても言い返せないのだ。あたしの言い分の方が正しすぎて。

 ──ったく、やってらんないわよ。

 とりあえず、うるさい二人が黙ったのを機に、あたしは立ち上がった。

「ど、どこ行くんだよ。ルフェラ?」

「──お風呂よ、なんか文句ある?」

「い、いや…」

 自分達を置いて、また どこかに行ってしまうと思ったのか、ラディは一瞬 立ち上がろうとしたものの 〝お風呂〟 と聞いて、そのまま黙ってしまった。

 昨日は、宿に帰ってくるなり睡魔に襲われ、夕飯どころかお風呂も入らず寝てしまったのだ。最悪な寝起きで気分悪いし、ここらへんでリフレッシュしたいというのが正直な気持ちだ。

「でも、どうするのよ?」

 階段を降りようとしていたあたしの背中に、今度はミュエリの声が届いた。

「なにがよ?」

 手すりに手をかけたまま 〝まだなんかあんの?〟 という思いで、彼女の方を振り返ったのだが、ミュエリはあさっての方を向いたまま続けた。

「あ…新しい服よ。着替え、ないんじゃないの?」

 今回ばかりは、ミュエリの方が正しかった。

 確かに、着替えなどない。買物にも行けなかったんだから。

 あたしは、一瞬 言葉に詰まったが、黙っているのもしゃく癪だったため、

「か、買いに行けばすむ事よ」

 とだけ言い残して、さっさと階段を降りていった。

 後ろのほうで 〝あ、オレも…〟 と言うラディの声がしたが、あたしはムシした。

 階段を降りて靴を履いていると、さっきの宿の人が話しかけてきた。

「あの…どちらへ?」

「あ、ちょっと…買物に──」

「今日は外に出られない方がよろしいかと思いますが…」

「どうして?」

黒風(くろかぜ)の日ですので…」

「黒風…?」

「ええ。ですから、今日の食事はここでお出しするつもりなのです。──あの…買物と言われますと、何を買われるおつもりで? たいがいのものはここでもご用意させていただきますが…」

「あ…その…お風呂に入ろうと思ったんだけど、着替えがなくて──」

「でしたら、ここでもご用意できますよ。少々お待ち下さい」

 そう言うや否や、店の人は奥に引っ込んでしまった。

 靴を履いたまま、その場でポツンと取り残されたあたしは、さっきの 〝黒風〟 の事が気になったが、考える間は与えられなかった。まるでこういう事を予想していたかのように、布で包まれた塊を持って現れたのだ。

「どうぞ、これをお使い下さい。服も、タオルも全てこの中に入っていますから」

 そう言って、その塊をあたしに手渡してくれた。

「あ、ありがと…」

 いわゆる、〝お風呂セット〟 みたいなものね…。

「それから、下着も入ってますので…」

 周りに誰もいないにもかかわらず、そっと耳打ちされたあたしは、思わず脱ぎかけた靴で転びそうになった。

「だ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫…よ…」

 あたしは引きつった笑いを彼女に向け、そそくさと風呂場の方へ向かった。

 ──ったく、気が利いてるのやらそうでないのやら…。

 手渡された 〝お風呂セット〟 を抱きかかえ ローカを歩いていると、つきあたりが、どうもそれらしく、入り口が二つあった。右が女性用で左が男性用。

 もちろん、あたしは右の入り口から入っていった。

 脱衣所で包みを開け、タオルを取り出すと、服を脱いでドアを開けた。朝から入浴…なんて考える人はあまりいないようで、中はガラガラ…というより、あたし以外 誰もいなかった。

 貸し切り状態ね…。

 あたしは再び脱衣所に戻り、脱いだ服を持ち込むと、貸し切りゆえにできる事…つまり、洗濯をしはじめたのだ。

 これくらい、いいわよね…。

 そう思いながら、テキパキと服を洗うと、次いで体と髪も洗い終えた。

 湯に浸かり、ホット一息つくと、今までの不快な気分もどこへやら…。

 気付けば鼻歌まで歌っていた。

 ま、これも一人だからできることよね…。

 あたしは久々にリラックスした時間を過ごす事ができ、ゆっくりと着替えると お風呂場をあとにした。

 今まで着ていた服をお風呂セットの布で包み、入り口を出たのだが、また、あの男性と鉢合わせになってしまった。彼もあたしと同じで、お風呂から出てきたところだったのだ。

「あ…んた…」

「よぉ。よく会うねぇ、オレ達」

「そ、うね…。どうして朝から風呂 入ってんのよ?」

「どうして…とはまたずいぶんだな。自分だって入ってたろ?」

「あ、あたしは…昨日 入り忘れたから…」

「オレは、夜と朝の二回入るのが習慣なだけさ。ま、朝はかる~く、だけどな」

「あ、そう…」

「──それにしても、ふくろは傑作だったな」

「は…?」

「袋だよ。さっきミュエリに言ったろ? 〝そんなに寝起きを見られるのが嫌だったら、毎朝 袋でもかぶって歩けば〟 って。あん時は、本人の手前 笑えなかったけど、部屋に戻ってから ハラ抱えて笑ったんだぜ。もっとも、隣にあんた達がいたから、声は出さなかったけどな。苦しかったぜ、声 出さずに笑うの」

 そう言ったイオータは、その時の事を思い出すかのように、今にも噴き出しそうになる笑いをこらえていた。

「──二重人格」

 あたしはそんな彼を見て、ボソッと呟いた。

「あん? なんか言ったか?」

「別に…」

「そーいや、あんたの連れの男。ラディとか言ったっけ? あいつ、そーとー、あんたにホレてんな?」

「な、なによ、急に…」

「いやぁ、風呂に入ってる間中、ずっと睨まれてたんだぜ。文句言うわけでもなく、ただ睨んでるだけでよ、さすがのオレも早々に出てきちまった。でも、そんだけホレられてるなら、女として本望だな」

「どこがよ。ちょっと違う男の人と一緒にいたり、勘違いされたりしたら、〝誰なんだ、あいつは。どーなってんだ〟 って、納得するまで問い詰めてくんのよ。うるさいったらないわよ」

「それだけ、ホレられてるって事だろ?」

「……だからって、嬉しいとは限らないでしょ。それに、あんただって、ミュエリにホレられてるじゃないの。男として、それこそ本望でしょ?」

「ま~な。でも、やっぱホレられるのは好きな相手じゃなきゃな…」

「あんた…。自分の言ってる事、全くの正反対って事 気付いてる?」

「ああ、まーな」

「まーな…って…」

「あーいう女はそこら辺にいっぱいいるだろ。どっちかってーと、一風 変わった女のほうが興味あるからよ」

「あーそう。──って、ちょっと…その珍獣を見るような目であたしを見てるのはどーいう意味よ?」

「あ…? そんな目、してたか?」

「あんたね~」

「おい、なにやってんだよ!」

 どこまでもあたしをバカにするイオータに、一発 拳をお見舞いしてやろうかと右手に力を入れた時、ふいに後ろの方で声がした。

 瞬時に、いや~な予感がしたが、振り返らないわけにもいかない…。

「あ…ラ、ラディ…サッパリした?」

 頬を引きつらせながら、らしくない言葉をかけた。

「なにやってんだよ──」

「なに…って──」

 ラディの言葉は、どちらかというとイオータに向けて発せられていた。──が、同じ連中が、二回も…しかも同じような場所で言い合いになるというのは恥ずかしいものである。それを避ける為にも、あたしは敢えて彼の言葉に対し返答しようとしたのだ。

 しかし─

「あんたを待ってたんだぜ」

 と、思いも寄らぬ言葉を発したのは、イオータだった。

 驚くと同時に、〝なに言ってんのよ〟 と 彼を睨み、足を蹴ったのだが、ラディの怒りは一気におさまってしまった。

「え…オレを…?」

「ああ。ここを出ようとしたら、偶然にもこの人とバッタリ会っちまって…。あんたがまだ中にいることを伝えたら、〝じゃぁ、待ってるわ〟 ってゆーからよ。あんま、待たせるのもかわいそーだしな。だから、待ち人がいるから…って、あんたに伝えてやるよって言ってたところなんだぜ」

 イオータはなんの迷いもなしに、そう言った。

「そ…そうなのか、ルフェラ?」

「え…? あ…その…」

「そうだよな?」

 返答に困っているあたしを見下ろし、〝そうだと言え~〟 ぐらいの目を向けたイオータ。ウソつくことは嫌いだけど、せっかく おさまったラディの怒りに、わざわざあたしから火を付けなくてもいいか…と思うと、ここはイオータの言うスジガキに合わせる事にした。

「そ、そうなのよ」

「そうか。そりゃ、待たして悪かったな」

「い…いのよ、別に。──さ、行くわよ」

「おう!」

 軽い足取りのラディと、重い足取りのあたしは、イオータに 〝じゃぁ〟 とだけ言うと、さっさと彼の横を通りすぎた。

 ちょうど、その時である。

「あー、そういえばよぉー」

 急に、何かを思い出したのか、イオータはあたしの背後で呼び止めた。

「な、なによ…?」

「風呂入ってたのって、あんただけか?」

「え…? そう…だけど…?」

「あー、じゃぁ、やっぱ あんただったんだ」

「は…?」

「─で、一体 なんの歌なんだ、アレ?」

「!!」

 その瞬間、恥ずかしさで耳まで真っ赤になった。頭までカーッと血が昇り、顔から火が出る思いだ。

「な、なんだっていいでしょ!!」

 あたしはそれだけ言うと、〝なんなんだよ?〟 と問いかけるラディを引っ張って、足早にその場を去った。

 ──聞かれてたのか、あの鼻歌!



「なぁ、なんの事だよ、ルフェラ?」

「なにがよ?」

「さっきの、イオータが言ってたこと──」

「何でもないわよ」

「何でもない…って。じゃぁ、なんでそんなに怒ってんだ?」

「怒ってなんかないでしょ!」

「それが怒ってないって言うんなら、なんなんだよ。顔は真っ赤だしよ──」

「あー、もう。うるさいわね。お風呂入って、体も心もスッキリしてんだから、少しは黙っててよ」

「──んだよ。人がせっかく心配してんのによぉ…。それに風呂入ったのと黙ってるのとどういう関係があんだよ…?」

 階段を上がりながら、ブツブツと文句を言っていたラディだったが、部屋の戸を開けた途端、それまでのやりとりなどまるでなかったかのように、大きな歓声を上げた。

「うぉー、すっげー。これがメシかよ!?」

「そうよ、すごいでしょ? よく分からないんだけど、今日は外に出られないから…って、食事を運んできてくれたのよ」

「うまそ~~」

 そう言うや否や、テーブルにつくラディ。

 そこには煮物や炒め物、揚げ物、スープ などなど…。全部で八皿ぐらい並んでいたのだ。品数は別にして、昨日食べた量に比べたら、適量といえる量だろう。

 抱えていた、中身の違うお風呂セットを部屋の隅に置くと、あたしもテーブルの前に座った。

 さっそく食べようとあたしとラディは箸を持った。

「いっただきまーすっ」

 そう言って、ラディが炒め物に箸をつけようとした瞬間、

「まだ、ダメよ!」

 と、ミュエリの 〝待った〟 が かかった。

「なん…でだよ…?」

「まだ、メンバーが揃ってないもの」

「はぁ…!? お前なに言ってんだよ。ちゃんと四人いるだろーが」

 テーブルをグルッと見渡し、間違いなく四人いることを確認するラディ。あたしも同じように確認したのだが、同時に、テーブルの上に並べられている茶碗と箸も数えていた。

「あ…ら…? そういえば、一人分 多いわよ?」

「なに!?」

 あたしの言葉に、ラディも改めてテーブルの上を見直した。

 そんな あたし達を見て、心なしか ミュエリがニッコリ笑った気がしたのは気のせいだろうか…?

「ほん…とだ…。なんで──」

「悪いね、待たせちまって…」

 ラディの質問が最後まで言い終わらないうちに、戸を開けて入ってきたのはイオータだった。

 目がテンになる、あたしとラディ。

「ど…うしてあんたが──」

「私が呼んだのよ」

「は…?」

 代わりに答えたのは、ミュエリだった。咄嗟に彼女の方を振りかえる。

「なんでよ?」

「だって…さっきは顔見るなり大声出しちゃったし、指輪のお礼もちゃんと言いたかったから…。お詫びと、お近付きのしるしに…と思って、宿の人に頼んだのよ。もし一人なら、一緒に食事したいので、ここに来てもらるよう言付けてくれませんか? って。それに、一日中 外に出れないなら、時間はたっぷりあるんだし、いろいろお話しできるじゃない?」

「あ…そう…」

 これ以上、何かを言う気はなかった。ついさっき、イオータから逃げてきたのに、よりによって またなんで一緒に食わなきゃなんないのよ、とも思ったのだが、このミュエリの態度は、ネオスの言葉さえ聞き入れない状態なのだ。

 ただ、ラディの反抗に少しは期待したのだが、お風呂の入り口で交わしたスジガキを鵜呑みにしている彼にとっては、自分の無礼を詫びることも兼ねてか、何も言おうとしなかった。まぁ、空腹を満たすことが、より先決…っていう考えもできるけど…。

「とにかく、こっちにきて座って」

 入り口のところで黙って立っているイオータに、ミュエリが声をかけた。ここに座ってくれといわんばかりに、自分の横をあける。ちょうど、ネオスと反対の所だ。彼女にとって、最高の位置関係だろう。両サイドに好みの男性を座らせたのだから…。

「それじゃ、いただきましょ!」

 そう言うと同時に、ミュエリはようやく自分の箸を持った。

 ラディは彼女のその言葉を待ってましたとばかりに、一気にがっつく。幸せそうなミュエリを横目で見ながら、あたしは無言で箸をすすめた。ネオスは相変わらず、落ち着いて食べている。イオータは、会って間もない連中と一緒にご飯を食べる事に、少しも違和感を感じさせないぐらい、大きな態度で食べていた。

 ま、らしいといえば、らしいわよ…。

「それにしても、外に出れないって、どういう事かしらね…?」

 とくに誰に聞くというわけではなく、スープをすすっていたミュエリが口を開いた。

「〝黒風の日〟 って言ってたわよ、宿の人は」

「黒風の…日?」

 オウム返しのミュエリの言葉に、あたしは無言のまま頷いた。

「何よ、それ?」

「さぁ…。お風呂に入る前だったから、それ以上は聞かなかったけど…」

「でも、なんか 〝良い日〟 じゃなさそうよね。〝黒〟 だなんて」

「まぁね…」

「あ~ぁ、私 今日 買いたいものあったのになぁ…」

「あんた、まだ 買うつもりなの?」

「まだとはなによ、まだとは。これでも、昨日は あなたの事 探したりしてたから、思ったほど買ってないのよ」

「思ったほど…ね…」

「なによ?」

「別に…」

 ミュエリの 〝思ったほど〟 というのは、あたし達 普通の感覚をしたものにとっては、十分な量だと思う…。

「黒い風…」

 突然喋り始めたイオータの言葉に、あたしは 〝え…?〟 っと聞きかえした。イオータは、一瞬あたしの方を見ただけで、箸を止めるわけでもなく その先を続けた。

「──黒い雲が押し寄せ、黒い風が吹く。黒い風は、そのうち地上に近付き、人を…とくに女をさらっていく…」

「どういうこと…?」

「そのまんまさ」

「その…まんま…って…」

「言った通りさ。黒い雲がどこからともなく押し寄せてきて、そのうち黒い風が吹き始める。普通、風は目に見えないだろ? 草や木、それから洗濯物が揺れたり、自分達が肌で感じるぐらいにしか、風の存在を知る術はない。ところが、どういうわけか、その黒い風はオレたち人間の目にも見えて、風の塊が作られるんだ。風の塊は、ある目的の人物を見つけると、途端に獣の形に変身する。そうなると、ほんとにあっという間だぜ。空中にさらわれるのは…」

「風がさらう…って…どういうこと? 強くて吹き飛ばされるとかじゃなくて…?」

「ああ。ちゃんと意志を持ってるのさ」

「意志…まさか…?」

「信じられないだろうが、事実だぜ。それに、たいがい毎月 同じ日にさらわれる」

「同じ日…」

「──けどよ、なんで女ばっかなんだ?」

 男の自分には関係ないと思っているのか、まるで人事のように ラディが揚げ物を頬張りながら会話に参加した。

「さぁな。さらう風の意志が男なのかもしれねーぜ」

 イオータは冗談半分に 〝ニヤッ〟 と笑った。

「やぁ~だ。それじゃ、女好きのラディと一緒じゃない」

「なんだと──」

「──ま、どっちにしろミュエリは外に出ないほうがいーだろーな。どうしても出たいっていうなら、顔を隠していくしかないぜ」

「どうして…?」

 ラディと言い合いを始めそうな彼女に変わって、あたしが質問した。

「ある目的の人物…どーゆーわけか、美人ばっか狙われるんだ」

「いやぁ~、こわ~い」

 〝美人〟 という言葉に反応し、ワザとらしく箸をギュッと握り締めたミュエリ…。

 は…はは…やってらんないわ…。

「やっぱり、ラディと一緒だわ…」

 そう言うなり、彼をチラッと見るや否や、再び 〝いやぁ~〟 と、目をそらす。

「なんだよ。テメー、その態度は! オレがその風だったら、ぜってーお前なんかさらわねーよ。こっちにだって選ぶ権利ってもんがあるんだ」

 負けじと言い返すが、それで引っ込むミュエリではない。

「なによぉー。だから あなたは目が見えてないっていうのよ!」

「──ンだぁ!?」

「──それより、さらわれた人はどこに連れていかれるの?」

 あたしは、いまだに 睨み合いを続ける二人を無視し、新たな質問を投げかけた。

「さぁな。どこに連れてかれるのか、はたまた さらわれた者が、生きているのか死んでいるのかさえ判かんねーんだ。ただ判ってる事といえば、黒い雲は南の方から現れて、南の空へ消えていくってことだけだ」

「南の空…」

「ああ。今までに、さらわれた者が戻ってきたためしはない。こっちに残った村人は勝手に想像するしかないだろ? 諦めて死んだんだと思う者もいれば、生きていてほしいという思いから、美人ゆえに選ばれ、ここよりキレイで不自由のないところに招待されたんだって思う奴もいる。黒風の日に外を歩く奴は、よっぽど自分の容姿に自信のない奴か、招待されたいと願ってる奴のどっちかだぜ」

「ふ~ん」

「だから、どうしても外に出たいってゆーんなら、顔を隠すか、男に用事を頼むか、それとも、黒い雲が現れたら早いうちに家の中に隠れる事だな」

 そう言って、買物に行きたいと言っていたミュエリをチラッと見やると、それまで睨み合いをしていたミュエリもその視線に気付き、ニッコリと笑顔を向けた。

 ほんと、よくやるわよ…と半ば飽きれていると、今度は、ラディがあたしの両肩を掴み、自分の方に向かせた。

 そして──

「おい、ルフェラ。お前は絶対に出るなよ」

 と、わざとミュエリに聞こえるような声で言い出したのだ。

 ──ったく、情けないったらないわよ…。

 あたしはそんなラディの忠告に耳を傾けることなく黙々と食べつづけた。

「おい、ルフェラぁ…」

 知らない…。

 毎回、当たり前のように言い合う彼(女)らを、あたしとネオスは無視し続けている。その為、普通の人より食べるスピードが速く、あっという間に皿の上がカラになる。もちろん、あたしとネオスだけが食べているわけではなく、ケンカ口調になるラディでさえ、あたし達が感心してしまうほど、喋りと食事摂取でよく口が動くのだ。そのうえ、今日はラディと同じぐらい食べっぷりのいいイオータが加わった為、驚くほど早く平らげてしまった。途中で様子を見にきた宿の人は、その早さに 少なかったかしら…と心配したが、〝全然 大丈夫ですよ〟 とネオスが答えると、少しホッとした様子で戻っていった。しかし、しばらくすると、〝これもどうぞ〟 と言って、果物をカゴに入れて持ってきた。初めての宿の食事だった為 〝デザートがつくんだ〟 と喜んでいたラディだったが、ずっとここに泊まっているイオータに言わせると、〝初めて〟 のことらしかった。〝大丈夫〟 とは言われたが、やっぱり心配だったのだろうか…。

 結構、お腹もいっぱいになっていたが、宿の人の好意と思い、みんな 〝デザート〟 に手を出した。ところが 〝デザート〟 の入る所は違うようで、それも、あっという間に食べ切ってしまったのだ。

「あぁ~、食ったぁー。もー、これ以上は はいらねぇ~」

 大声でそれだけ言うと、ラディはお腹に手を当てたまま後ろに倒れてしまった。

「大丈夫よ。これ以上はないから。──それより食べてすぐ横になると牛になるわよ」

「おぉ!? もしかしてルフェラ、オレの事 心配してくれてんのか?」

「なにバカな事いってんのよ。あんたが牛になったら、一緒に歩くあたし達が恥ずかしいでしょ」

「──ったく、相変わらずつめーてーなぁ。でも、安心しろよ。オレはどんだけ食っても太ったりしねー体質なんだ。いつまでもカッコイイまんまだぜ」

 ラディは 〝任せろよ〟 と自信満々に親指を立てた。

 カッコイイ…か。

 普通なら 〝どこがどうカッコイイのよ?〟 と聞き返すところだが、空腹を満たした彼の幸せそうな笑顔を見てると、なんだかどうでもよくなってしまった。

 ところが、ミュエリは違った。

「やぁ~ねぇ~。自分のことカッコイイだなんて、あなた本気で思ってるの?」

「──ンだとぉ!?」

「だいたい、本当にカッコイイ人っていうのは自分から言わないものよ」

「そういうお前だって、自分のこと 〝キレイ〟 だって言ってるじゃねーか」

「だって、事実だもの」

「ホントにキレイな人は自分から言わないんじゃねーのか?」

「私は、自他ともに認めるのよ。あなたみたいに、普通のランクとは違うの」

「よっく言うぜ。オレはお前がキレイだなんてこれっぽっちも認めてないぜ。それに、オレから見れば、おまえの方こそ、普通のランクだ」

「だから、目が見えてないっていうのよ、あなたは!」

「おまえこそ、自分の顔、鏡で見えてんのかよ?」

「なによ、失礼ね!」

「もぉ~、やめなさいってば、二人とも。だいたい、ミュエリが悪いんでしょーが。いちいちラディの言葉にケチつけるような事するから──」

「なによぉ、ラディのカタもつわけ?」

「カタとかそんなんじゃないでしょ。どちらか一方がケチつけなきゃ、こんな言い合いも始まらないのよ。だから今回は、最初にケチつけたあんたが悪いの!」

 あたしはミュエリを指さし、ビシッと言い切ってやった。その言葉に対し、一瞬、何も言えなくなったミュエリ。その姿を見てニヤッと笑ったのはもちろんラディだ。一時は起き上がって熱くなった彼も 〝ざまぁみろ〟 という目をしたかと思うと、再びゴロンと寝っころがってしまった。

「な、何よ…私が悪いだなんて…。もとはといえば、ラディが悪いんでしょ」

「何でよ?」

「だって…自分の事 カッコイイだなんて言ったのよ」

「それが、なんで悪いのよ?」

「そんなこと言われて、黙ってられる?」

「聞き流しゃいいでしょーよ」

「そんなことしたら、ストレス溜まっちゃうじゃない」

「はぁ!? じゃあ、なに。あんたは自分のストレスがたまるのを避ける為に、ケチつけたって言うの!?」

「そうよ」

 本気でそう言ってるのか、それとも開き直りか…。とにかくミュエリの 〝当たり前でしょ〟 というような返事には、あたしの方が怒れてきた。

「あんたねぇ~」

「な、なによ…?」

「なによ、じゃないわよ。毎回毎回、くっだらないケンカなんかして! しかも、その原因が自分のストレス解消だってぇ!? 聞いてるあたしの方がストレス溜まるわよ!!」

「失礼ね。だから原因はラディだって言ってるじゃない!」

「そういう問題じゃないでしょ!」

 ミュエリとラディのケンカを止めるつもりだったのに、なんで、あたしがケンカしてんのよ? と頭の片隅で思ってはいたが、もう止まらなかった。

「そういう問題よ!」

 ミュエリはそう言うや否やフイッと横を向いてしまった。そして──

「そう言うルフェラだって、こうやってストレス解消してるじゃない」

 と、小さな声で言ったのだ。

「こうやって…ってどうやってよ?」

「私達のケンカを止めるふりして、自分もケンカに参加してるじゃないのよ。それでストレス解消になってんでしょ」

「ふり…って…あ・ん・た・ねぇ~!!」

 眉間にシワをよせ、怒りで声が震えるあたしに対し、次の瞬間、ミュエリの態度が一変した。

「あ…イオータ…どこに…?」

 彼女の視線を追うと、無言で立ち去ろうとするイオータが、ミュエリの質問に立ち止まっていた。

 ──ったく、こういうことに関しては、めざといんだから…。

「あ、いや…。ちょっと、食後の運動に、と思ってな…」

「そんな…せっかくお話しできると思ったのに…」

「まぁ、そっちもなんだか忙しそうだし…運動の後でも時間はたっぷりあるだろ? 今日は一日中ヒマなんだしよ」

「それは…そうだけど…」

「な、一時間ぐらいしたら戻ってくるから──」

「そうね、一時間ぐらいなら──」

「じゃ、そういうことで、またあとでな」

 イオータはそう言うと、逃げるように(?)部屋を出ていった。

 確かに、こんな女同士のケンカ 聞いていたいという奴はいないわよね。

 イオータが出ていってから、改めてミュエリとケンカする気は起きなかった。一度 何かによって遮られると、怒りも冷めてしまうのだ。それはミュエリも同じらしく、お互い目があっても気まずくて、途端にあさっての方を向いてしまった。

 しばらく沈黙が続いたが、なにやらミュエリが動き出した。そして何も言わず部屋から出ていこうとした為、ネオスが口を開いた。

「どこ 行くんだい?」

「あ…その…お風呂、よ。さっきので汗かいちゃったし…」

「そう。じゃあ、ゆっくりしておいで」

「うん。ありがとう、ネオス」

 ミュエリはそう言うと、足早に階段を降りていった。

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