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04・緑のお話

チームの中で唯一の社会人でありグリーンと呼ばれているこの俺は、年齢でも在籍年数でも最年長だ。今のレッドとブラック、ブルーが入って三年、パープルが入って一年弱だが、今まで組んできたメンバーの中でも今回のチームは仲が良い方だと思う。ブルーとパープルが同い年以外年齢も環境もバラバラな俺たちだが、戦闘の際は統率もよく取れているし普段顔を合わせた際の会話も事欠かない。まるでヒーロー戦隊のリーダーのテンプレのようなレッドは、俺より若いし後から入ってきたが誰もが認めるリーダーだし、・・まあ最初はな?先に在籍していて年も経験も上の俺の立場は?って微妙な気持ちもしたが、そんなこと関係ないくらいしっかりリーダーとしての素質を発揮してくれているもんだからさ。そんな気持ちもとっくに失せちまったよ。


そんないつも通りの日常だったが、俺たちが少しずつずれ始めてきたきっかけは、その日のレッドの一言だった。



「恋ってなんだ?!」



いつも通り筋トレに励んでいた俺の横で、入室してくるなりブラックに絡みだすレッド。ブラックは一瞬面食らった表情をしたがすぐ訝し気な表情でレッドを見やる。いつだってクールで冷静沈着だなんて言われているブラックだが、意外と顔に出やすいところがある。この三年一緒に過ごしたおかげで、コイツらの特徴や考えてることなんかが大体わかるようになった。


それにしてもレッドが恋について考える日がくるなんて・・、成長したんだな。お兄さん嬉しいよ。だがしかしなぜブラックなんだレッドよ。そこは最年長たる俺に聞くところじゃないか?



「グリーンそういうの疎そうじゃんか!それにブラックの方が経験豊富そうだ!」



俺の疑問をぶつけてくれたブラックよ、ありがとう。そしてレッド、ちょっと待て聞き捨てならんぞ。



「俺だって人並みに色々経験してるんだぜ?」


筋トレを終了し制汗剤の汗拭きシートで汗を拭きながら二人の方へ向かう。汗だくな俺を見て思った通り顔を顰めるブラック。わかってるって、汗臭いのが嫌いなのもこの三年で知ったブラックの一面だ。



「人並みに何を経験したんだ?!恋したことあるのか?!」



レッドのキラキラした瞳が今度は俺にまっすぐ向けられる。視線が俺に移って自分は見られてないと思っているんだろうブラックはいつものようにブルーに視線を投げている。

うーん・・・、ブラックのこれは隠してるつもりなのかね・・?視線を感じたらしいブルーもチラっとブラックに視線を投げる。慌てて逸らしているがまたすぐ目でブルーを追ってるんだよなあ・・。きっとブルーも気付いてるほどの頻度だ。バレるのも時間の問題だぞ、ブラック。



「なあグリーンってば!教えてくれよ!恋ってどんなものなんだ?」


「一言じゃあ言い表せないさ。逆にレッドはどんなものだと思うんだ?」



哲学的な答えなんか言ったってレッドにはわからないだろう。こういうタイプは感情論が一番わかりやすいはずだ。



「うーん・・・、俺にはわからないから聞いてるんだけど・・・。友達としての好き、とは違うんだろうなってことくらいしか・・・。」



顎に手をあてて一生懸命悩んででた答えがそれか。レッド、君は本当に19になるのか?・・・なんて意地悪は言わずにおいてあくまで自分で導き出させる。



「そうだな、それはよく言うLikeとLoveの違いってことだな。じゃあレッドの友達に感じるLikeはどんな感情だ?」



「俺は・・、友達は大事だ!困ってたら助けてやりたいしそれが男でも女でも関係ない!それに友達はお互い助けあうものだ!」


おお、リーダーらしい完璧な回答。テンプレ感は強いがさすが我がチームのリーダー様だねえ。



「いい答えだな。それじゃLoveについて考えてみようか。一般的には誰か特定の一人を想いやる、その人の為ならなんだってしてあげたいと思えるのが無償の愛だ。それに守ってあげたい、または自分を守ってくれる相手っていうのが恋に発展しやすかったりするな。例えば・・、そうだな、普段感じたことのないドキドキを感じたり一緒に居ると自然体で居られたり、そういうところも恋する気持ちへの第一歩だぞ」



なんて講釈垂れてるが俺だって恋ってなんだ?なんて聞かれてもはっきりしたことは言えない。恋なんてフィーリングだって思ってるしな。だけどレッドみたいなタイプにはフィーリングだなんて言ったって伝わらないだろう。導くには十分な言葉を選んだつもりだが・・、俺の言葉の途中でレッドが何か思いついたような顔つきになった。お?わかってくれたのか?



「わかったぜグリーン!恋ってチームに対する思いと似てるんだな!」



・・・・・は?え?何が分かったって?チームに対する思いと似てる・・?恋が?どこが?!



「レッド、グリーン、何の話してるの~?」



プチパニック起こす寸前で入ってきたブルー。ブラックの隣に立つとわかりやすく身を硬くするブラック。・・これはもしかしたらブルーにはバレてるぞ。



「ブルーは恋したことあるか?!」



いや待て待て待て、レッドよ。その前にさっきの発言の意図を説明してくれ。



「え~・・好きな人~・・?えへ、いるよ~」



レッドにさっきの発言の真意を聞く前に進んでいく会話。ブルー普通に答えるんだな・・。じゃなくて、隣のブラックは明らかにショック受けてるがいいのか?ブルーを見てると明らかにブラックの反応を楽しんでいるよな・・。



「ボクだけ答えるの恥ずかしいよ~。ブラックはいるの~?」



あ、そういうこと。かわいい顔して中々小悪魔なんだなブルー。三年目にして見えてきた裏の顔だな。さて、興奮しているレッドと硬直しているブラック、この場をどう整理しようかね。さすがのお兄さんも困っちゃうぜ。

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