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03・青のお話

いつだって賑やかしいレッドが、今日も今日とて騒がしくしている。入ってきて早々「恋ってなんだ?!」なんてブラックに詰め寄ってるのを遠巻きに眺めながら、日課の植物たちに話しかけながら水やりをする。


「グリーンに聞け」なんて面倒臭いのを隠すつもりもないだろう表情で対応しているブラックに、「ブラックのが経験豊富そうだ!」なんてノンデリ発言かますレッド。でも確かに、ボクらのチームの中では”そういうこと”に関してはブラックが一番経験ありそうだ。絹のような漆黒の黒髪に、見つめられたら吸い込まれそうなまるで深い闇みたいな切れ長の瞳、スッと通った高い鼻に滅多に笑みを浮かべることのない薄い唇。まごうことなき美男子だし、ほっそり見えてしっかり引き締まっているそのスタイルはまるでどこかのモデルさんみたい。ヒーローになってからのブラックしか知らないけど、ボクの知るところではこの3年女性の影はなさそうだった。きっとヒーローになる前は引く手数多で遊んでたんだろうな・・なんてこそっと前の席のブラックを見やる。


一瞬目が合った気がしたけどそれもほんの一瞬で、そもそも前の席のブラックがボクを見ているはずないよね、なんて思ってみるけど実はこれが初めてじゃない。ふと視線を感じて前を向くと、一瞬だけブラックと目が合うことがここ最近多いのだ。初めは気のせいかと思ってたけど、あまりに頻度が高い上に、最近気付いたのはその目が合う一瞬の視線にただならぬ熱を孕んでいること。それこそ勘違いだって思おうとしたけど、日に日に強くなる熱量と視線に、さすがのボクも勘違いではなさそうって気付いたんだよね。これはもしかしたらだけど、ブラックはボクのことが好きなんじゃないのかなあ。いつからなのかは全然心当たりないけど、ここ一年くらいから始まってるような気がする・・。


ボクはレッドより一つ年下の高校三年生だから、ブラックとは四つ歳が離れている。見た目もレッドやブラック、グリーンと違ってひょろひょろしてるし自分で言うのも悲しいけど華奢な体つきだから、レッドがさっきから喚いてるチームの「ヒロインポジション」とやらに充てられてる気もしてる。だからブラックは勘違いしてボクなんかに欲情してるんだろうか。ブラックの通う大学にだって女性はたくさんいるはずなのに、どうしてボクにそんな視線を向けるの?


なんて、初めてブラックの視線を意識した辺りからボクだってグルグル悩むことになった。ヒーローっていう危険な任務に着いてるから特別な女性ひとをつくらないんだろうか。手近にいるボクで発散しようとしてるとか?でもボクだっていくら小柄でも男だし、同じモノが付いてるのに。あ、ブラックは男もイケるタイプなのかな?でもそれだときっと、ボクのこと抱きたい側てことだよね。それは困るなあ。


「・・・だってボク、タチだからなあ・・・」


植物に話しかけながらボソッと呟いてみる。誰にも聞こえてないようだけど。ボクと同い年のパープルは独り言を呟きながらパソコンと睨めっこしてるし、前の三人は未だ恋だなんだ騒いでる。レッドはほんと典型的な戦隊ヒーローのリーダーって感じだ。正義感が強くて仲間思いで熱血漢。クリっと大きな赤い瞳と人好きする爽やかな笑顔は芸能人でいう正統派イケメンって感じ。グリーンも脳筋のようなマッチョ感だけど、サッパリ切りそろえられた緑の短髪に堀の深い顔立ちと緑の瞳は一見すると外国の血が混じっているようなイケメンだし。ブラックといいパープルといい、ボク以外みんな顔立ち整ってるの何の嫌がらせなんだろう・・。ま、平々凡々なボクからしたらこの美麗集合体は目の保養だし、そんな人たちとチームとして仲間やっていけてるなんて嬉しい限りなんだけどさ。



それにしても、最近のブラックの熱のこもった視線は困っちゃう。元々ゲイであるボクからしたら全然嬉しいことなんだけどさ、・・ブラックきっとタチだよね。見た目平凡なボクだけど、タチであるボクとは相性合わないんだよなあ・・・。いっそブラックをネコにするっていうのはどうだろう?あのクールな美男子がボクの下で苦痛と快楽に顔を歪める姿かあ・・・。いいな。見たいかも。



「なんの話してるの~?」



水やりを終えたとこでさりげなく合流する。ボクが隣に立った途端ブラックが一瞬身を硬くしたのをボクは見逃さなかった。やっぱりブラック、ボクのこと好きっぽいなあ~。



「なあブルーは好きな人いるのか?!」



レッドはほんとノンデリだなあ・・、普通女の子同士でもあるまいしそんな明け透けな恋バナこのメンツでするかな?少し呆れちゃうけど、キラキラした曇りのない瞳で見つめられて答えざるをえない状況に、ん~・・と少し考える。チラ、とブラックを見ると呆れた表情と共に好奇心が隠しきれていない。ボクに好きな人がいるかどうか気になってるのか~。・・・もうボクのこと好きなの確定じゃない?これ。



「え~・・・好きな人~・・・?えへ、いるよ~」


照れ恥じらいながら答えつつブラックを盗み見ると、ショックを受けた顔してた。うん、やっぱりボクのこと好き確定だよねもう。それならボク好みのネコになってもらわなくちゃ。今のままじゃボクら両想いには程遠いからね。



「ボクだけ答えるの恥ずかしいよ~。ブラックはいるの~・・?」



さあて、なんて答えてくれるかなっ。

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