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02・黒のお話

「なあブラック!恋ってなんだ!?」




━━━━入室早々、歩み寄ってきて何かと思えば本当になんだ?


レッドの突飛もない話は今に始まったことじゃないが、今回も相変わらず意味がわからない。


「・・・それはどういう意味だ?」


眉根をしかめて近付いてきたレッドを訝し気に見上げれば、キラキラした目で俺を見つめてくる。


「だーかーらー、恋ってなんだ?どういうものなんだ?」


「それをなんで俺に聞くんだ?」


「だってブラック経験豊富そうじゃないかっ」


ジト目でレッドを見れば相変わらずのキラキラした目で興奮気味に畳みかけてくる。経験豊富だと?たった二歳しか離れていないこの俺が?


「それならグリーンに聞いたらいいだろう。俺より更に二歳年上の最年長者じゃないか」


そう言いながら横目で筋トレに励んでいるグリーンを指す。俺はレッドとは違う大学ではあるが同じ大学生だ。グリーンは社会人なのだからそれこそグリーンの方が適任だろう。


「いやグリーンはそういうの疎そうだろ?ブラックの方が豊富そうだ!」


ケロッとした顔でなんとも酷いことを言う・・。最年長者だぞ?それに俺のが豊富そうってどういう意味だコイツ・・。


「おいおいひどいぞレッド。こんな俺でも人並みには色々経験してるんだぞ~?」


話が聞こえていたらしいグリーンが汗を拭きながら寄ってくる。ていうか汗かいたまま近付いてこないでくれ。いくら男同士でも汗臭い男の体臭は勘弁だ。


「大丈夫だブラック、制汗剤のシートで拭いてるから」


ハハハ、と笑うグリーンから漂ってくる匂いは確かに制汗剤の爽やかな香りだ。・・ていうか俺口に出してないけど顔にでてたのか?なんか悪かったなグリーン。


「グリーン!人並みに何を経験したんだ?恋したことあるのかっ?」


今度はキラキラした目がグリーンへ向けられる。そうだな、なんてやり取りは自分たちの席でやってくれよ。きっと今も顔に出ているだろうけど、残念なことに二人は俺の席の前で会話を始めてしまった。コイツら人の話を聞かないとこそっくりなんだよな・・。

なにやら語り始めたグリーンを横目にソッと斜め後ろのブルーを盗み見る。ブルーのデスクは小さな植物がたくさん置いてあってちょっとした庭みたいだ。その小さな鉢植えに何やら話しかけてるのはいつものこと。そしてその様子を盗み見るのもいつものことだ。


”恋”、ね。21歳になる俺も人並みなことは経験済みだ。恵まれた容姿のお陰で相手に困ったこともない。確かに俺は”経験豊富”だろう。だがそんなこと、ヒーローに選ばれた時置いてきた。そこから女っ気一つない。だがそれがまずかったのか。


━━━━━━━━気付いた時にはブルーを目で追うようになっていた。


天使の輪が出来るほど艶やかな青い髪に色素の薄い水色の瞳。小柄で華奢な体躯はまるでヒーローというよりヒロインのようだ。パープルも似たような体躯をしているが、いかんせんパープルとはあまりまともに会話したことがない。ミステリアスと言えば聞こえはいいが片目が隠れるほどの長い前髪のせいか、喋るときにウサギのぬいぐるみを媒体にしてくるせいか、パープルはどちらかというと悪の組織にいそうな陰キャ感だ。今も一人デスクでパソコンをいじりながらブツブツ言っている。どうしてパープルがヒーローに選ばれたのか、パープルとは組んで一年ちょっとだが未だにわからない。きっと他のメンバーも口には出さないが同じことを思っているだろう。


それに比べて、とまたブルーを盗み見る。植物相手に話しているが圧倒的ビジュの良さ。目の前でグリーン相手にレッドが「チームに女の子がいないなんておかしくないか?!」なんて息巻いているがそもそも戦隊ヒーローに女が必要か?戦闘だぞ?普通に考えて危険だし、男に比べたらやはり非力すぎる。チーム内で色恋沙汰なんて勘弁だし、ヒロイン要素なら確実ブルーで事足りてる。それに陰キャ感は否めないがパープルもヒロイン枠だろう。ブルーに引けを取らない小柄で華奢な体躯に、片目が隠れている髪型はどうかと思うが深い紫の髪に大きめながらこれもまた陰キャ感を醸し出す深い紫の垂れた瞳。小ぶりな鼻は筋も通っているし、ブツブツ呟いている唇は薄く、ほんのり血色感のある紅色だ。そこに高身長、スマートとはいえ筋肉質なTHE男、って感じの俺たち三人なんだからむしろバランス取れてるだろ。


なんてレッドたちの話を聞き流しながらブルーを盗み見ている俺も進展しないな。確かにこれが女相手なら簡単に押していけたんだろう。だが相手は見た目ヒロインと言えどしっかり男だ。ブルーにこんな感情を抱く前に一度レッド、俺、ブルーの三人で銭湯へ行ったことがある。あの時は何とも思ってなかったし、むしろほっそい体だな。くらいにしか思わなかったけど今は絶対無理だ。反応する自信しかない。あの時を思い返しただけでも股間がヤバいのに一緒に入るなんて絶対不可能だ。あの時の体の線の細さ、色の白さ、濡れた髪、火照って赤い顔、潤んだ瞳・・・・・やめろ鮮明に思い出すな俺。



「レッド、グリーン、なんの話してるの~?」



植物に話しかけながらの水やりが終わったのかこちらへ来たブルー。近くでみるとより一層可愛い。それに女に引けを取らないくらいいい匂いがする。・・・耐えろ俺の股間。


「おおブルー、いやレッドが恋について知りたいんだってよ」


「ブルーは恋がわかるか?!恋したことあるか?!」


グリーンの声に被さる勢いで答えづらい質問をかましてくるレッド。いや俺もぜひ聞きたいけどな?ブルーの答えには興味しかないが、人としてそんなノンデリでいいもんなのかレッド?



「え~・・・好きな人~・・・?えへ、いるよ~」




嘘だろ俺詰んだじゃん。

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