01・赤のお話
時は20××年、場所は日本。この世は今世界を侵略しようとする悪の組織”Ruin(破滅)”と、世界を守るヒーロー戦隊”Messiah(救世主)”の激しい戦いによって均衡が保たれている。ただし勝率は0対10。圧倒的Messiahの勝利によって世界は全くの平和であった。
━━━━これは、そんな世界で起きる平々凡々とは少しばかり言い難い人間たちのお話である。
「おーっす!今日もお疲れー!」
皆が集まる俺らの基地は、色々な武器や道具を作っているチームの科学者のラボだ。もちろん実験室や研究室は別の階にあって、俺らメンバーが集まるのは最上階の指令室だけど。そこへいつものように元気に入ってきたのはこの俺、Messiahのリーダーであるレッドこと赤坂大河だ。トレードマークは燃えるような赤い髪に赤い瞳、名は体を表すとはまさにこのことだな!昼間は普通の大学生、そしてときおり襲ってくるRuinとの戦闘に駆り出されてる日々だ!俺たちMessiahはチーム仲もいいし、楽しくて刺激的で、充実した毎日だ!・・・と思ってたんだ、最近までは。
おっと、その前に俺たちMessiahの紹介を軽くしとくな!リーダーはさっき言った通りこの俺レッド。そしていつもクールで冷静沈着なブラックの黒谷亮、気は弱いが誰よりも優しいブルーの青木輝、筋トレが趣味で誰よりマッチョな緑原卓、そして最後にまるで俺と真逆なタイプ、物静かで何を考えているのかいまいちわかりづらい紫藤楓。まるでテンプレなのは俺くらいで何がどーしてこうなった、ってくらいアンバランスなヒーローチームだよな。そしてきっと君も気付いただろ?
・・・そう、このチームには”女の子”がいないんだ!普通戦隊モノって男3,女2くらいの割合編成じゃないか?いや大体そうに決まってる!小さいころから観てきた憧れのヒーローたちは大体そんな割合だったんだから!ピンクとか黄色とか”女の子”がいるもんなはずだよな?!なのに、なのに!俺たちはなぜか男だらけのヒーローチームなんだ・・・!こんなのってありなのか!?・・・・そりゃRuinとの戦いは命懸けだし、危険が大きいから女の子には危ないのかもしれない。それでもさ・・!小さいころ憧れてたヒーローに選ばれた時、すごく嬉しかった。誇らしかったしメンバーの皆ともすぐ仲良くなれた。今だってメンバーに不満はないし俺なんかをリーダーとして認めてくれてるのだってすげえ嬉しい。
・・・・・嬉しいんだよ、だけどさ、なんてゆーか・・、華がねえっていうか癒しが欲しいっていうか。いや、勘違いしないでくれ!たとえチームに女の子がいたって邪な目では見ねえ!チームにかける想いは男だろうと女だろうと同じつもりでいる!それに、ヒーローに選ばれたばっかの頃はがむしゃらだったしそんなこと思う暇も考えたこともなかった。でも俺は最近思ったんだ。もうすぐ19になるのに、恋の一つも知らないでいいのか?って。そりゃ大学に行けば女友達はいるし、自慢じゃないが友達の数は多い方だ。・・でもダメなんだ。”友達”ならいくらでも作れるのに、”恋”っていうのがわからねえ。命懸けで戦いあう、お互いがお互いを信頼して背中を預けられる、そう、チームにそんな女の子がいたらもしかしたら”恋”に繋がる何かがわかるんじゃないかって。・・いや、矛盾したこと言ってるかもしれないけど最初から女の子ってだけで邪な目では見ねえってことだぞ!命を懸けて熱い時間を長く共に過ごす、そんな女の子なら”友達”とは違う気持ちを抱くんじゃねーかって最近思い始めたんだ。
だけど実際はチームは男のみ、俺らが所属する組織も男のみ、対するRuinも男だらけの悪の組織だ。なんでなんだ?女人禁制ってルールでもできたのか?なんて馬鹿みたいなことを考えてしまうほどに女の子がいない。世界の平和はもちろん一番大事だ!だけど青春真っ盛りな俺としちゃ、甘酸っぱい思いもしてみたいんだ!高校時代にレッドに選ばれてから、ただひたすらに世界平和だけを考えて生きてきたんだ。高校時代が戦隊一色なのは後悔してないし今後だって後悔することなんてない。でも大学一年生の今、ようやく他の事も考える余裕が出来てきたんだ。そして俺は思った。恋がしてみたい!って。そう思うのは俺の年なら普通だろ?だけどさっきから言ってる通り俺には”恋”がどんなものなのかわからない。
━━━━そこでだ、俺はチームの中で一番経験がありそうなブラックに聞いてみることにした。