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19.無神経な男


 鮮血が飛び散るミルシス社の敷地内。

 意識を刈り取られた者たちを踏み越え、レイラは進み続けた。


「と、止まれ!」


「止まれないわ」


「ならば……ここで死ねッ!」


「────!」


 正直、今回の任務は想定以上に遂行は容易そうだ。

 イシェルの手厚いバックアップを享受できるのに加えて、彼女──レイラ=ハシュテッドの戦闘力はあまりに高く、並の敵兵は動き出す前に床に伏していく。

 剣一本であのゲルシー公爵から自己保身をし続けてきただけある。

 

「……ガレン。外はこれで全滅です」


 息を切らすことなく、レイラは涼しい顔で剣を鞘に納めた。


「あー露払いご苦労」


「はぁ。貴方は見てただけですものね」


「見てただけとは人聞きが悪い。俺は不測の事態に備えて全体に目を光らせていた」


「ああ言えばこう言う……」


「優秀な上司とはいかに下を動かして仕事をこなせるかどうかだ。その点俺は超優秀だな。指示だけ出して後方で腕組んでただけで目的を達したのだから」


「私は貴方の部下になった覚えはありませんけどね」


 レイラとの言い合いを続けていると先駆けで進んでいたイシェルが呆れ顔でこちらへと戻ってくる。


「なーにしてんすかぁ二人とも。さっさと裏帳簿探しに行くっすよ?」


「あいあい」


「もちろん。分かってます!」


 今回の主旨はゲルシー公爵の悪事を証明できる証拠を手に入れること。

 門前でアホみたいな言い合いをすることではない。


「お説教は後でな」


 茶化すようにそう告げると、彼女は振り返ることなくサッサと建物の中へと行ってしまった。

 首を傾げる俺の小腹をイシェルは強く小突く。


「……ノンデリ」


「え、今の俺が悪いの?」


「ボスは本当にどうしようもないやつっすよね。彼氏には絶対したくないくらい終わってる性格だし、私が仮に男でもボスとは絶対友達になりたくないですもん」


「酷過ぎる……」


「事実ですもん。少しは反省した方がいいっすよ」


 辛辣な部下だ。

 俺のことを組織のボスとして慕ってくれているとは思えないほど棘だらけの指摘である。

 先に行ったレイラを追うようにイシェルもミリシス社の建物の内部へと進んでゆく。


「……ノンデリ? 俺が? 何を言っているのかさっぱり分からねぇな」


 愚痴りながら二人の後を追いかけるのだった。

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