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15.第二拠点 未開森林沼沢支部



 ロード王国の都心部から馬で2時間。

 ひとけのない静かな林道を抜けた先には広大な沼沢が木々に囲まれながらひっそりとそこにあった。


「はぁ。こんな辺鄙な場所の第二拠点を使うことになるなんて……」


「文句を言うなイシェル。第一拠点の近くじゃ芋蔓式に炙り出された可能性だってあった。その点ここは人通りも少なく、衛兵たちに見つかる可能性も低い!」


「立地が終わってるっすけどね……王都まで馬で2時間とかどんだけ山奥に拠点作ってんすか!? いっそのこと街中に隠れ家みたいなの借りてくださいよ!」


「イシェル……ガレン傭兵団にそんな金はないぞ」


「だぁぁぁぁぁっ! これだから守銭奴な金の傀儡人間は嫌なんすよ! ボスがたらふく溜め込んでる組織の内部留保をさっさと吐き出すべきっす!」


「……はぁ。もちろん嫌だ」


「死ねボケカス」


 自組織のボスに対して酷い言いようである。

 まあ割と頻繁に罵倒を受けてはいるが……。


「ぬぐぅぅぅぅぅぅぅ!!」


 馬の上で華奢な手足をジタバタ動かしながら猛抗議を繰り返すイシェルを無視して、一番最後尾を付いてくるレイラの方に声をかけた。


「そろそろ到着だが、大丈夫か?」


「ええ。まさかこんなに移動するとは想定外でしたが、日々訓練で鍛えているのでこれくらいは余裕です」


「そりゃ頼もしいこって」


 長時間の移動で少しばかり疲労の色が見えるが、彼女の瞳はブレることなく真っ直ぐ前に向いていた。

 沼沢の前で馬を停め、沼沢の中へと入り込む。


「うぅ。この拠点入る時必ず服が濡れるから嫌なんすけど……」


「それはそう」


「そう思ってんなら改善すべきでは?」


 拠点は沼沢の中心にある小さな孤島のような陸地に存在している。

 一見すると平坦な地面に思えるが、陸地の中央には円形の鉄板が草花に埋もれるようにあった。


「ここですか?」


「ああ。ここが俺らの第二の拠点──未開森林沼沢支部と呼んでいる場所だ」


「あっ。それ言ってんのボスだけっす。他の組織の人間は巨大な排水溝って呼んでるっすよ」


「あいつら……あとで締めるしかねぇな。この基地の名称はちゃんと覚えさせないとだし、どんな拷問をしてやろうか……」


 組織の人間に一喝入れることを目論む俺を無視して、イシェルはさっさと中へと入っていく。

 

「ほらお姉さんも入って。そこの馬鹿なボスは無視していいんで」


「は、はぁ……」


 二人が拠点の中に入ってしまったことに気付かないまま、俺は入り口の前で唸りながら5分以上もの間、部下の忠誠心が低いことを嘆いていたのだった。




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