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14.共闘の誓い



「ボス〜話し合いできそうすか?」


 手を取り合った俺たちの方を見てイシェルは警戒しながらもレイラの方へとゆっくりと歩み寄った。

 

「まあ少なくとも仕事相手として話し合いはできそうだな」


「……協力を依頼する前に、まずは貴方が知っているゲルシー公爵の情報について、詳しく聞かせてもらいます」


 大金の絡んだ仕事。

 レイラも慎重な姿勢で交渉に望もうとしていた。


「いや。先に聞くが。こちらがあのクソ公爵を潰す手伝いをするとして支払われる報酬額がいくらくらいだ? 提示額によっては交渉は決裂するが……」


「貴方はかのゲルシー公爵に対して何ができるのですか?」


「お望みとあらば全身全霊を以ってして、ヤツの首を斬り落とすくらいはやってやってもいい。あとはまあ……やつの暗躍具合についてはアンタ以上に色々と情報を握ってるくらいだな」


 裏稼業においてゲルシー公爵とはつい昨日裏切られる前までは元請けと下請けの関係だった。

 政界のフィクサーとして日向に陰に巨悪の根を張り巡らしたゲルシー公爵の強大さに関してはよく知っている。


「前情報として伝えておくが……あの男はアンタみたいな一介の騎士が手に負えるような相手じゃねぇぞ」


「理解しています。だからこそ、貴方に協力を仰いだのです」


「それで報酬額は?」


「依頼達成の後に望む額を用意します」


「はっ。本気か?」


「……私は本気ですよ」


 正義を語った騎士が巨悪を討つために小悪党の手を取ろうとしている。生半可な覚悟がなければそんな危ない橋を渡ろうとはしない、か。

 報酬額に詳細な言及はない。

 こちらの望む額を用意すると……下手すれば法外な金銭を要求されてそれこそ泥沼に沈む可能性だってあるのに、彼女の言葉には迷いというものがなかった。

 

「……やっぱ。腹は決まってんのか」


「本音を言えば貴方のような犯罪者の手など取りたくはありませんが、私個人でゲルシー公爵について調査するのには限界があります」


「調べるだけなら探偵でも雇えばいいのに」


「何十人と声を掛けましたが、全て断られてしまいました」


「だろうな。死にたがりの馬鹿じゃない限り、虎の尾を踏みたいやつなんていない」


 得意げに語る俺を真っ直ぐ見据えて彼女は告げる。


「でも貴方は……この仕事を断らない」


「へぇ。なんでそう思った?」


「金さえ積まれればなんだってやる。そう言っていた貴方の目に嘘は見えなかったので」


 彼女の見立て通り。

 俺は金の亡者と呼ばれても差し支えないほどの人間だ。大金を積まれればどんな仕事でする。それが例え、一国家を相手にする無謀な案件だったとしてもだ。


「……いいんだな?」


「ええ」


「ならそちらの要求通り、あのクソ公爵について知っていることは話すとしよう。情報料に関しては成功報酬に付けておいてやる」


 レイラとの会話を終えた俺は「というわけで」と前置きをしてイシェルへと視線を戻す。


「彼女を拠点に招待するぞ」


 そう告げた俺に対して怪訝そうに顔を顰めていたイシェルはジト目で呟いた。


「ボス。王国の近衛騎士を拠点に招くとか……一度クソ公爵に裏切られて衛兵どもに拠点バレしてんのに懲りてないんすか? ……馬鹿なんすか?」


「………………」


 辛辣な一言だが。

 全くもってその通りなので何も言い返すことはできなかった。



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