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12.新たな刺客



 寄り集まった男たちは躊躇することなくレイラ=ハシュテッドの首を狙って刃物を振り続けていた。

 正面戦闘を仕掛ける者。

 背後からの不意打ちを狙う者。

 遠くから様子を覗う者。

 それぞれが彼女の首を取るために最適な動きを取っている。


「ボス。助ける?」


「いや。少しだけ様子見だ。あの女が持っている天恵の正体が知りたい」


 建物の物陰に隠れ、レイラとゲルシー公爵に雇われたであろう刺客との戦闘を静観する。


「らぁッ!」


「ふっ!」


 レイラは太刀筋を読み切り、刺客の握っていた得物を的確に弾き飛ばす。

 

「くそ。お前ら囲め!」


「死ぬ気で討つぞ!」


 四方を塞がれたものの、彼女の面持ちは冷静そのもの。背後からの襲撃を警戒していないようにも見えた。


「おらぁッ!!」


「────ッ!」


 四方向から5人が同時に切り掛かってくる。

 しかし彼女はその場から微動だにしないまま、正面の敵だけを真っ直ぐ見据えていた。


「イシェル。よく見てろ……」


 双方が衝突する瞬間に目を凝らす。

 背後から迫る凶刃がレイラの首筋を断とうとした瞬間、刺客の振るった剣は謎の力によって歪曲し砕けた。


「──んなっ!」


 背後の敵が怯んだのを確認して、レイラは一気に正面へと詰めた。

 一点突破を狙った猛突進に敵もすぐに剣を構えて横薙ぎ振り抜くが、レイラは跳躍し、いとも簡単に攻撃を躱す。


「ぐがっ!」


 空中で反転し、彼女はそのまま刺客の首を跳ね飛ばした。


「…………まず一人」


「ぐっ!?」


 なるほど。

 戦闘風景を目の当たりにして、彼女の天恵についてはある程度理解できた。

 視覚外からの一撃は全て無力化してしまう特殊なもので、とにかく正面からの重圧だけを跳ね除けるような立ち回り。


「不意打ち殺し……」


「ボス?」


「あの女は意識外からの攻撃を受けないような天恵を持っている。だから暗殺されないんだ」


 首に巻き付けた鋼糸が意味不明な解け方をしたのにも納得だ。

 意識外からの攻撃を受けないと分かっているのなら、背中を見せて逃げ出すふりをした俺を追いかけるために迂闊な前進も行える。

 だが……あの天恵には欠陥もある。


「ありゃ多分。正面から正々堂々と力で捩じ伏せれば、殺せるな……」


 暗殺者との相性は最悪だが、彼女を力で押し切れるだけの猛者が一騎打ちを行えば成す術なく討たれてしまうことだろう。

 ただ──。


「はぁっ!」


「ぐが……ッ!!」


 暗殺者側の力量が足りていない今回に限っては、レイラが殺されることはない。

 周囲に集まっていた暗殺者を一人ずつ処理した彼女は涼しい顔で剣を鞘に収める。

 血の池を作り出したその姿は凛々しくもあり、常人であれば見惚れてしまうほど美しかった。


「終わったっすね」


「まあだろうな。この程度で殺されていたらあのクソ公爵も大金積んで依頼なんてしてこねぇさ」


 金貨5000枚。

 確かに彼女を殺すリターンとしては相応な額だろう。

 あの女。天恵のお陰で不意打ちを受けないというものあるが、単純に正面戦闘が強過ぎる。ロード王国内でも指折りの強者に数えられそうな剣の腕前だ。


「行くぞ」


 周囲に喧騒さが失われたところで俺は物陰からゆっくりと出て彼女の方へと歩き出す。

 さあ。本日二度目の対面。

 

 ──この女はいいクライアントになってくれそうだ。


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