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1.プロローグ



『王国近衛騎士のレイラ=ハシュテッドを抹殺しろ』



 懇意にしている太客から通達された一件の依頼が全ての始まりだった。


 ──ガレン傭兵団。


 ロード王国の都心から外れたオンボロな廃屋。

 そこを根城としている俺たちガレン傭兵団は十数人の小規模な集団だった。

 暗殺、強盗、禁制品の密輸など。

 違法な仕事を生業とした傭兵稼業を行う組織。

 そして俺、ガレン=バレフはその傭兵団の頭を張っていた。



「なぁボス。この暗殺依頼ちょーきな臭くね?」


「……報酬額のことか?」


「報酬が高額なのもそれもそうだけどさ。それ以前に依頼内容が簡単すぎるってこと!」

 

 密使から手渡された依頼書に書かれていた内容に再度目を通す。

 下っ端王国近衛騎士の暗殺。

 報酬額は金貨5000枚──庶民の大家族が、誰一人として働かずとも生涯食べていけるだけの額だ。


「……まあ、相手は貴族だし。金払いがいいのは別に不思議じゃないだろ」 


 依頼主はロード王国の財務大臣を務めているゲルシー公爵。

 表向きは国王の忠臣として国営に携わる男だが、本性は国内に蔓延る様々な犯罪を手引きしている極悪非道なクズ野郎である。


 人として信用はしていないものの、金払いの良い太客であるのは確かなため、毎度の依頼は全部請け負っている。


「……にしてもレイラ=ハシュテッドねぇ。イシェル、この女についてなんか知ってたりするか?」


 部下であるイシェルにそう尋ねるが、彼女は間髪入れずに首を横に振った。


「いえ。全く知らんっすわ」


「まあだよな」


 レイラ=ハシュテッド。

 性別女性。

 年齢は23歳。

 王国近衛騎士としてはまだ二年目の新米である。

 ロード王国の裏社会に深く入り込んでいるゲルシー公爵にとって、それほど危険視するような存在には思えないが……大金を積んででも殺したい理由があるのだろう。

 

「……まあいいか」


 思考を巡らしゲルシー公爵の思惑について考えるのはすぐにやめた。

 クライアントの事情なんざ気にしても仕方がない。

 下請けは下請けらしく、降り注いできた仕事に集中するのみ。

 大事なのは依頼を成功させたら、きちんと報酬が支払われるかどうかだけ。

 傭兵なんてそんなもんだ。


 座っていた椅子から立ち上がり、廃屋の古びた扉を力いっぱい押し開く。


「んじゃ。ちょい行ってくるわ」


「ボス。私の援護は?」


「いらん。どうせ首チョンパして終わりだよ。報酬はちゃんと全員で山分けするから、お前は別の依頼をこなしとけ。出掛ける時は戸締り忘れんなよ」


「りょーかい」


 イシェルにそう言い残して、俺はそのままロード王国の王都へと繰り出した。

 外は真っ白な雪化粧に包まれ、寒空の下で俺は白い息を吐き出した。


「さて……仕事するか」


 お気楽な空気は一蹴し、冷酷な瞳で先を見つめる。

 女騎士一人の暗殺。

 何も難しいことはない。

 いつものようにターゲットに気付かれずに這い寄って、急所に一撃。実にシンプルな動作である。



 この時の俺はイシェルの提案を断ったことを後悔するだなんて夢にも思っていなかった。



 ──女騎士一人を殺す簡単なお仕事だなんて、つくづく考えが甘かったのだと思う。



 


反逆者として王国で処刑された隠れ最強騎士4巻発売に際して新連載開始します!

隠れ最強騎士もリメイクして投稿していきますので、そちらもよろしくお願いします

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また楽しく拝読させて頂きます。
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