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7 入浴

 サンルームを出て廊下をずっと歩いていくと、とある扉の前で立ち止まった。


「お入りください」


 年嵩の侍女が扉を開けて私の入室を促した。


 脱衣場とメイクルームも兼ねているような広い部屋で、マッサージ台まで据えてある。


 壁に取り付けられた鏡の周りは手の込んだ彫刻で飾られている。


 何もかもがため息の出るような調度品ばかりだ。


 脱衣場でこんな状態なんだから、お風呂はもっと凄いことになっていそうだわ。


 あまりの豪華さに見とれているうちに、侍女の方達が次々と脱衣場に入って来た。


「アリス様。失礼いたします」


 そう声をかけられて、何だろうと我に返ったら、侍女の一人が私のシャツのボタンを外しにかかっていた。


「あ、あの、一人で、脱げます」


 そう言って遠慮しようとしたのだが、


「とんでもございません。私の仕事を取らないでくださいませ」


 と、怒られてしまった。


 結局、シャツを脱がす人と、ズボンを脱がす人の二人がかりで服を脱がされてしまった。


 下着と靴下を履いただけの姿になると「まあ!」と侍女達の声があがった。


「変わった下着を着けていらっしゃいますね。こちらはどういった物ですか?」


 年嵩の侍女が私のブラジャーを指差している。


 あの人攫い達も驚いていたけど、この世界にはブラジャーなんて無いみたいね。


「これはブラジャーと言って、胸の形を整えたり、胸が下がらないようにするものです」


 説明している間も侍女達は私のブラジャーをしげしげと眺めているんだけど、いくら同性でも流石に恥ずかしい。


「素晴らしいレースが使われていますね。それに下履きも同じレースでデザインされているなんて。相当裕福なご家庭のお嬢様なんですね」


 えっ!


 いやいや。


 上下セットでイチキュッパの量産品ですよ。


 高級下着なんて学生には手が届きませんって!


 ワイワイと侍女達が盛り上がっていると、年嵩の侍女がパンパンと手を叩いた。


「お喋りはそこまで! いつまでもアリス様をこの格好のままにしていてはいけません。そのブラジャーと下履きも脱がせてください」


 侍女達はサッと仕事モードに戻ると私の下着と靴下を脱がせて、髪を纏めて上に上げられた。


「アリス様。こちらのブラジャーと下履きをお洗濯した後で、奥様にお見せしても宜しいでしょうか?」


「構いませんけど、どうしてですか?」


「勿論、これと同じ物を作って頂くためですわ。きっと奥様もこれを欲しいと仰られると思いますので…」


 確かに、私もこれ一枚しかないから、同じ物を作って貰えるのならば、それに越した事はないものね。


「わかりましたけど、くれぐれも洗濯をしてからでお願いします」


 流石に脱いだままの下着を他の人に渡したくはないものね。


 年嵩の侍女が請け負ってくれたので、その点は大丈夫でしょう。


 私達の話が終わるのを待っていた別の侍女が浴室に続く扉を開けた。


「うわぁ」 


 思わず声が出てしまうほど贅沢な造りのお風呂だった。


 浴槽は二~三人が足を伸ばして入れるほどの広さがあり、ここにもマッサージ台が設えてあった。


「こちらへお座りください」 


 籐のような物を編んだ椅子に座ると、かけ湯をしてくれた。


「熱くありませんか」


「大丈夫です」


 かけ湯が終わると浴槽へと連れて行かれ、入る時も手を添えてくれた。


 温かいお湯に浸かって、ほうっとため息が漏れる。


 十分に体が温まった頃、浴槽を出ると体を洗われた。

 

 体を洗い終わると、美容院に置いてあるような頭が下がる椅子へと座らされる。


「御髪を洗わせて頂きます」


 上げられていた髪を解かれ、お湯が掛けられる。


 洗髪剤の匂いがして髪を洗われているのがわかる。


 頭皮もマッサージされて気持ち良さにうっとりしていたが、それも終わってお湯がかけられた。


「きゃあっ! 侍女長! 髪の毛が!」


 髪を洗っていた侍女が叫んで年嵩の侍女を呼んだ。


 一体何があったのだろう?


 体を起こそうにも上手く起き上がれない。


 侍女長が私の体を起こしてくれたが、何故か戸惑ったような表情をしている。


「アリス様。御髪の色が…」


 私の目に洗われた髪がハラリと下がってきた。


 黒かった髪は紫がかったシルバーブロンドに変わっていた。

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