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8話 敵に利用される

食堂を出て、病院内に残る敵を撃ちながら外へ出たラクが見たものは…


「まずいな…」


正規軍が出動しているが、猿や角ウサギに圧倒されている

当然盾は鉄製のはずなのだが、穴だらけにされている

鉄よりも固い角など想像したくなかった

そんな強化された獣が城下町入り口からどんどんなだれ込んでくる


「…!」


ふと上空を見上げると、背中から翼をはやした人型の魔物が

剣を手に、ラクに切りかからんと急降下してきているのが分かった

ラクは寸前で転がって回避し、銃を2連射して仕留めた

遠目には、同じ魔物が獲物を探して上空を散開しているのが見える


「正規軍を囮にはできないか…加勢して戦線を押し上げてもらうか」


***


正規軍は、小さな角ウサギによって隊列が乱され、思うように

集団戦闘が行えずにいた。正面からは猿、上空からは翼人が襲い掛かり

旅人達の援護攻撃はあるものの、一歩間違えれば総崩れになる状態だった


「…良い場所だ」


そんな中、ラクは猿の集団の側面にあたる場所に移動し

グリップを強く握って極太のレーザー光線を発射した

光は猿達を貫通し、一掃していく…しかし

ラクは1発撃ってすぐその場を離れた


ガキィン


位置を特定した翼人が剣を手に襲い掛かってきたのだ

剣はラクがいた位置に突き刺さっている


「そう来ると思ったよ!」


ラクは慌てず、銃を2連射して仕留めた

予想通り、空に目がある限り固定砲台にはなれそうにない


正規軍の方を見ると、角ウサギは自力で倒せて戦線自体は上がっているように見える

猿はまだまだなだれ込んでくるので、同じ様に戦線を上げさせようと

ラクは駆け出した


***


ラクが猿の集団をヒット&アウェイで薙ぎ払い

正規軍が戦線を押し上げた事で、翼人に対処する余裕が生まれ

旅人達が弓や魔法で迎撃していった。そしてついに

城下町入り口まで戦線を押し上げる事に成功する

だが、そのすぐ外側で正規軍達が見たものは…


「な…なんだあれは…」


まるで待ち構えていたかのような魔族側の布陣にたじろぐ

前衛に、巨大な棍棒を持った半裸の肥満男達が20体

後衛に、1つある台を取り囲んで担ぐ、2頭身で短い手足で短杖を持つ魔物達が10体

その台の上には、立てて固定されている1本の棒に、縄でぐるぐる巻きにされて

拘束されているラストンが居た


ラストンは2頭身の魔物の1体に怪しげな術を使われると、ビクビクと体を震わせ

それと同時に、肥満男達の筋肉が隆起していく


「ウボオオオ!!」


肥満男は大きくジャンプして正規軍達に向けて棍棒を振り下ろす

すると、地面の石畳が陥没するほどの衝撃が走り、前列の正規軍はミンチになった


「ひ、ヒィィィィ!!」


あまりの攻撃力に戦意喪失する者が続出し、統制が失われていく

そうこうしている内に、第二、第三の肥満男の攻撃が続き

城下町入り口は大混乱に陥っていた


***


(あれは…ラストン!?)


ラクがラストンの姿を確認したのは、正規軍達より後の事だった

今までの強化された魔物達の原因はラストンの能力だったのだ

恐らくマインドコントロール等で魔物が仲間であると

思い込まされているのだろう


(不憫な…すぐ助けるからな)


翼人達は倒し終え、高台に上れるようになっていたので

ラクは街を囲む壁に上って、後衛の2頭身の魔物を狙い撃った

2体はそのまま倒せたが…


「メロ…メロ…メロ…」


魔物が怪しげな術を使うと、ラストンを中心に薄い膜が形成され

射撃を弾いた


「くっ…」


極太のレーザー光線なら貫通できるかもしれないが、その場合

ラストンもただでは済まない…そう考えていると

今度は2頭身の魔物達が数えきれないほどのファイアボールを放ってきた


「うおおっ!?」


たまらずラクは退避、元居た位置の壁は粉々に吹き飛んだ

先に肥満男達を一掃しなければ辿り着けないだろう


***


「怪我人はどけい! 爆炎玉投擲!」


正規軍の指揮官らしき者の指示によって、肥満男達に爆炎玉が投げられる

1個や2個ではない、石畳を埋め尽くす程の量が投げられ

余波を防ぐために盾が構えられる


ドドドォォン


「豪勢だな…私も負けてられん」


そう呟くと、ラクは肥満男達の側面を取る為に移動を開始する


「投擲やめ! …どうだ!?」


煙が晴れて肥満男達の姿を確認した正規軍と指揮官は驚愕する

倒せたのは突出していた3体だけで、後の肥満男達は

酷い火傷はあれど未だに立って棍棒を構えている


「化け物め…!」


そんな中、ラクは肥満男達の側面にあたる場所に辿り着き

グリップを強く握って極太のレーザー光線を発射した


「食らえ!!」


今回は肥満男達を確実に仕留めるように

長く照射しながら横方向に平行移動させた


「ううっ…」


そのせいか、ヒールを繰り返し限界まで使ったかのような脱力感が襲う

今日はもう極太のレーザー光線は発射できないだろう


「チャンスだ! 前進しろ!!」


指揮官の声が響く、このままへたり込んでいれば

ラストンも魔物の一味として殺されてしまうだろう

ラクは歯を食いしばって、後衛の2頭身の魔物が

ファイアボールで崩した壁の位置へ向かい

伏せて機会を待った


***


「投石機用意! 放てー!!」


指揮官の命令により、2頭身の魔物の上方から岩が降り注ぐ

薄い膜は魔法攻撃には強いが、物理的な攻撃には弱いらしく

岩が当たった所からヒビのようなものが走っていった


(あの指揮官の判断は的確だ…膜が割れたら突撃しよう)


2頭身の魔物は台を降ろし、台の周囲から動こうとせず

その場から正規軍達に向けてファイアボールで応戦する

最初は正規軍達を圧倒していたが、盾持ちが次々と前に出て

負傷者と素早く交代することで、投石機が発射する時間を作る


そして、ついに膜が割れた


(今だ!)


ラクは飛び出て2頭身の魔物の元に駆け寄り、銃を連射した

全員正規軍達に目が向いていたようで、4体は不意を突いて撃ち抜けた

途中で気付いて術を使おうとするものもいたが、銃を撃つ方が早く

銃自体の攻撃力の高さもあって、残りの4体にも反撃されずに一掃できた


「ラストン…! 危ない!」


魔物は全滅できたが、遅れて飛んできた岩が流れ弾となってラストンに

当たりそうになっていたので、ラストンの前に立ってラクは素早く

岩を撃ち抜いた。どうやら無事のようだ…安心したのもつかの間


「そこまでだ! 大人しくしろ!」


正規軍達がラストンの台を取り囲んで剣を向けてきたので

ラクはその場で大人しく正座した


「私は敵ではない!」


すると正規軍達はラクの事は無視して、意識が無いラストンを

拘束している縄を外し、4人がかりで両手足を掴んで乱暴に連れ去った

ラクがその様子を見ていると指揮官が話しかけてきた


「君が光線で魔物を薙ぎ払ったお陰で我が軍は前進でき

勝利を収める事が出来た、奮戦に感謝する」

「いえ…捕らえられた彼はどうなりますか?」

「君は身内か? …彼は軍事裁判にかけられる、重い刑罰は避けられないだろう」


「そんな…縛られ、捕らわれているのを貴方も見ていたはず」

「だが、そんな状態でも魔物を強化している所は私の部下たちが目撃している

無罪を勝ち取れるとは考えない事だ」

「…」


ラクはしばし考えた後、立ち上がった


「指揮官殿、軍事裁判はいつ開廷されますか?」

「ふむ…今日の日没後になるだろう…邪魔立てするなら…」

「いえ、私はこの国の法にのっとり準備をするまでです」

「ほう、では来るのを楽しみにしている」


頭を下げ、ラクは駆け出した


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