6話 マグナム
爆炎玉の爆発で崩落した洞窟入り口から
大男の顔と右腕が飛び出た状態で…まだ生きている
恐るべき生命力にラクは一瞬たじろぐが
「こんな奴…生かしておけん!」
大男が使っていた投げ斧を両手に1つずつ持って突撃
「ぬおおおお!!」
左右交互に斧を振り下ろす。大部分は右腕に弾かれるが
顔面にも当たり、覆っていたマスクが割れる
中の顔は醜くおぞましい
バキィ
「くうっ…」
投げ斧2つの柄が壊れて使い物にならなくなったので捨てて
一旦下がり、右手にメイス、左手に棍棒を持って再度突撃
「まだまだぁ!!」
「グオオオ!!」
再び左右交互に攻撃、ついに大男の右腕の骨が折れたようで動きが鈍る
顔面に集中攻撃、大男の右目が潰れ血だらけになるも
なおも生きている…その時
「ガアッ!!」
「うおおっ!?」
大男の左腕が飛び出し、同時に棍棒とメイスが砕かれてしまった
ラクも気付かない内に酷使してしまっていたのだろうか
流石に素手で殴り続けるのは無理と判断し、一旦距離を取る
「くそぅ…もう、呪われたアイテムしか無い…」
これが毒薬である事を願って、大男の顔面にぶっかけるしかない
そう考えラクは荷物から取り出し、コルク栓の封を開けた
すると
ホワワワン
今までのどんな果物や菓子でも嗅いだことのない程の甘い匂いがし
目の前に極上の酒や御馳走が並んでいるかのような幻覚に襲われ
ラクは無意識に呪われたアイテムを自分で飲み干してしまった
「ングッ!? ゲハッ、ゲホッ…」
飲み終えてから我に返るも、吐き出すことができない、呪いの効力を甘く見ていた
心臓が早鐘を打ち、体中が熱い。何とか立ててはいるが動けない
そうこうしている内に、大男が左手で這い出ようとしている
「こんな…情けない…死に方ッ…!?」
異変はさらに続く、ラクの股間が光り輝きながら肥大化し
ズボンを突き破る。長さ30センチ直径5センチはある
「ウアアアア!?」
背中が反り返り、股間から極太のレーザー光線が放たれ
大男の顔面を貫き、洞窟入り口をも吹き飛ばす
ラクは一瞬それを見たと同時に白目をむき、仰向けに倒れた
***
どの位気を失っていたのか…日が沈み辺りは暗くなってきている
まだ視界がはっきりしないが、とにかく生き延びようと
左手を胸に当て
「ヒールッ…」
ふにゅ
胸が柔らかい、ヒールが発動しない、だがそれよりも大事な事は
タタッ…タタッ…タタッ…
2匹の狼がラクの周囲を回っている。今は警戒しているだけだろうが
ヘタに動けばその瞬間飛び掛かられるだろう
だが大男との戦いで武器もアイテムも全て使い切ってしまった
もはやここまでか…そう思った時、右手に何かがある
目の前に持ってきて見ると、どうやら銃のようだ
「砲撃師」が持っているのを見たことがある…それに比べると
撃鉄は無く、全体的に丸みを帯びて血管のような線が浮き出ている
「グルルルル…」
しばし見ていると、1匹の狼がのしかかって正面に迫ってきていた
もう迷っている猶予は無い
「くっ…喰らえ!」
ラクが引き金を引くと、レーザー光線が出て狼の頭を貫き、絶命させた
「す、凄い…!」
ラクは目を見開き、素早く起き上がると、もう1匹の狼に向けてレーザー光線を放った
「ギャン!!」
脇腹を貫かれて倒れ、そのまま絶命した。だがそれで終わりではなく
今度は森の方から3匹の狼が走り寄ってきた
ラクは冷静に狙いを定めて3連射、2匹に当たり絶命させ
もう1匹は尻尾をまいて逃げ出した
「キャイン! キャイン!」
「あ、あははは…!」
ラクは今まで経験したことのない無双感に酔いしれ
逃げた1匹を追いかけようと一歩を踏み出した…が
ズボンの裾を踏んで転んでしまった
「ふがっ!?」
だが、そのお陰で冷静になった。さっきまで死にかけていたのだから
深追いは禁物だ。正座になり改めて銃を見つめ、ベタベタといじる
「はぁ…この感じ、いつも便所で触っていたものだよなぁ…」
グリップを強く握ると銃身が大きくなる
この状態で発射したら、あの極太のレーザー光線が出ると
感覚で分かる
「じゃあ…ここは…」
ラクは穴の開いたズボンの股部分から手を入れて
股間に指を這わせた
「はぁぁっ…んっ…」
自分の股間の竿は分離して銃になったと理解した
替わりに空いた股間の穴に指を入れると
電撃が走るような快感と共に
もっと弄っていたいという気持ちになってくるが
「ここは…危険だ…」
なんとか抑え、ブカブカになった袖と裾をまくり
極太レーザー光線で開いた洞窟入り口から中に入って
まず、アールスが使っていた大剣を背負う
「くうっ…重っ…」
なんとかバランスをとった後、ジェニーが被っていた
とんがり帽子を被って引き上げた
「アールス…ジェニー…和解できなくて残念だ
あとの2人も、埋葬できないことを恨まないでくれよ…」