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5話 ただのお人よしの戦い

夕方、ラクは件の洞窟の入り口に辿り着いた

アンデッド相手なので本来は朝を待ってから突入した方が良いのだが

もし万が一、生き残りが居た場合は悔やんでも悔やみきれない


「よし…行こう」


右手にメイス、左手に貯めていた聖水の瓶を持って

慎重に足を運ぶ


***


最初の部屋にはやはり何も無く、壁沿いに左手の通路に向かい

壁から顔を出す。すると…


(アールス、ジェニー、あと2人…くっ)


4人が倒れたままピクリとも動かない中、4体のさまよう鎧が

剣で4人を繰り返し突き刺し続けている


(迂闊だった…数日もすればアールスの頭も冷えるだろうと

まさかこんなに早く死なれてしまうとは…折角の勇者が…)


…もはや4人が生きている可能性は完全に無くなった

ラクがそう確信したその時、1体のさまよう鎧がこちらに向かってきた


「…っ!?」


それを認識した3体も一斉にこちらを向き、合わせて4体が向かってきた

だが、走れない事は事前にルピーから聞いていたので、ラクは落ち着いて

洞窟入り口に引き返す


「よし…情報通りだな…」


***


入り口に戻ったラクは聖水の瓶を開けて振りまいた後

入り口横でメイスを構えて待ち構える

やがてさまよう鎧が入り口で聖水を踏む、すると

アンデッドモンスターゆえか、動きが止まり転んだので

ラクはメイスを渾身の力で振り下ろす


「ふんっ!!」


同じく3体も転んだので、同じ様にメイスで砕いた


「ふぅ…ふぅ…上手くいったな…」


そう呟くと、ラクは鎧の残骸を蹴とばして入り口を開け

まだ来る奴がいないか確認してから再び洞窟内に入った

…聖水の残り分量的に、あと1回は同じ手が使えそうだ


***


4人とも死んでいるのは残念ではあるが、やることは単純になる

勇者パーティの物と分かる遺品を持ち帰るだけで良いのだ

アールスが使っていた大剣、ルピーの心情を考えて

ジェニーが被っていたとんがり帽子…この2つで良いだろう


***


大剣は目立つのですぐ見つかった。とんがり帽子の方も

ジェニーから離れていたからか、傷は少ない

ラクは自分の荷物にしまおうと座り込んだ…その時である


ガシャ


「!?」


ラクが驚いて振り返ると、死んでいたはずの戦士が立ち上がったのだ

だがその瞳は陥没しており、腐敗臭を漂わせている

どうやらゾンビになってしまったようだ


ラクがメイスを構えて警戒する、しかし戦士ゾンビは襲ってこず

盾を剣で叩き始めたのだ。「挑発」スキルである


「やめろ!」


ゾンビは生前行っていたことを繰り返すと聞いた事がある

だが、今それをされたら件の大男に気付かれてしまう

ラクは焦り、メイスを振りかぶるが、盾でのされてしまう


「くっ…」

「ウオオオオン!!」


後ろから大声が聞こえてきた。明らかにさまよう鎧のものではない

さらに前からも3体のさまよう鎧がやって来るのが見える

そんな中、戦士ゾンビは盾を剣で叩き続けている…最悪だ


「まだだ!!」


ラクは聖水の瓶を戦士ゾンビに向かって投げた。瓶は割れ

中の聖水が戦士ゾンビに掛かって動きを止める

そのスキを見逃さず、ラクは体当たりで戦士ゾンビを転倒させてから

メイスを逆手に持ち、頭を突き潰して倒した


間髪入れず、ラクは爆炎玉1個をさまよう鎧に向かって投げて伏せた

大きな爆発が3体を飲み込み、ただの残骸と化した


爆発音を聞きつけ、後ろからやって来る大男の速さが上がったので

ラクも様子をうかがいながら、古い革の盾を取り出し左腕に装備して

爆炎玉を投げた方へと走る


すると、ルピーからの情報通り投げ斧を投げてきたので

とっさに回避した。前方から何かが割れる音がした


***


走り続けるとまた広い空間が広がる

中央に祭壇らしきものがあるが、先程の投げ斧でぐちゃぐちゃになっていた

右手側に奥へ続く通路があるが…


「よっ…と」


投げ斧を取得して荷物にしまい、祭壇の裏に回り込む

隠れるのが目的ではなく祭壇を中心に回って入れ替わるのが目的である

大男はラクを見失っておらず、予定通り入れ替わった


そして、ラクがアールス達の死体付近

大男が祭壇への入り口に立つという位置関係になった時


「フッ!!」


ラクは再び爆炎玉を投げつけた。大男に見事に命中して爆発した

しかし、向こうからも投げ斧が飛んできた、投げ斧は1つではなかったのだ


「うおおっ!?」


ラクは左腕の盾でとっさに防御した。投げ斧は盾を貫通し

骨折は免れたものの、左腕に突き刺さった


「ぐうぅ…ヒー…ルッ」


ヒールを掛けながら投げ斧を引き抜く。左腕は動くが

古い革の盾は真っ二つに割れて、片方が地面に落ちた

だが大男の方も爆炎玉を受けてよろめいている


ラクはその間に古い革の盾を捨て、洞窟入り口に走る


***


入り口から出た所で、ラクは最後の爆炎玉を持って大男を待ち構える

まだ投げ斧を持っているかもしれないので遠くにいても集中する

そして大男が入り口に差し掛かったところで、爆炎玉を投げて

入り口から離れて伏せた


ドドドドド…


「ウオオオ!?」


爆発を受け、大男を巻き込んで入り口が崩落していく

これこそがラクの狙いだった


「遺品は回収できなくなるが、命には代えられない

これを食らえば流石に奴も…!?」


夕日に照らされ、崩落した入り口の土砂がモゾモゾとうごめき


「ウガアアアッ!!」


大男の顔と右腕が飛び出てきた


「クソッ…なんて日だ!」


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