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4話 情に掉させば流される

纏まった金を得たラクは、満足感でぐっすり眠り

気が付けば昼近くになっていた。軽く背伸びをして


「ん~…寝すぎたか…まぁ良いか、咎める奴もなし

ラストンは…朝一の乗合馬車で行っただろう」


布団を畳み、着替えてから市場に向かう

道中で串焼きを買って食べながら品物を見ていくが

安い物はとっくに売り切れていた


「ふむ…武器屋へ行ってメイスを買い直すとするか」


***


「毎度あり~」


メイスを買って武器屋を出たラク


「ん? 騒がしいな…」


城下町入り口付近で、1台の乗合馬車の周りに野次馬が集まって

中の様子を見ようと騒いでいる、ラクも近くで様子をうかがっていると

ルピーが担架に乗せられて出てきた


(ルピー!? 何故あんなボロボロに…)


何とか洞窟から這って出て、運よく乗合馬車と鉢合せすることができたが

服は泥だらけ、限界までアールスと戦士にヒールを使ったので

自分には使えず、脇腹の傷を押さえるためにハンカチと布で巻かれていた


歯を食いしばって苦悶の表情を浮かべている様子に

思わず駆け寄りそうになったラクだが堪え


「…皆! 怪我人が通るぞ! 道をあけてくれ!」


野次馬に向かってこう叫び、救命の補助に努めた


***


ルピーは教会の隣にある病院に運ばれて治療を受けた

幸い傷は内臓まで達してはいなかったので

異物除去、消毒の後に縫合され包帯を巻かれ

最後にヒールを掛けられて一命をとりとめた


***


正午を少し過ぎた頃、見舞いの許可が下り、ラクはルピーの部屋を訪れた


「入るぞルピー、良いか?」

「その声は…ラク? …どうぞ」


ベッドに横たわるルピーは疲れ切った表情をしていた


「無事だったようで何よりだ、その傷なら2日も経てば抜糸できるだろう」

「どうして…追放したのに…」

「私はアールスには追放されたが、ルピーには追放された覚えはないぞ」


ルピーは自虐的な笑みを浮かべ


「ふふ…結局、貴方の言う通りになった…

人さらいの情報があった洞窟に行ったんだけど…

グレーターヒールも使えず…あんな簡単にやられて…

バカみたい…」

「ルピーは何も悪くない、今はゆっくり休んで…」


ルピーは手で顔を覆う


「ジェニーを置き去りにして、戦士の人も…私だけ助かって

どうすればいいの…」

「ルピー…」


ルピーとジェニーが古い付き合いだという事は把握していた

そして酒場前で見たあの戦士に庇われたのだろうと…

このままでは、ルピーの心が壊れてしまうと感じ


「…よし、私がその洞窟の様子を見てこよう」

「…え?」


ルピーが顔を上げて驚く表情を向ける一方

ラクは不敵に笑ってみせた


「フッ…私は昨日Lv11になったのだ、さらに全能力倍増だぞ?

ちょっと行って…生き残りを見てくるさ」

「だ、ダメよ! 危ないわ!」

「それなら…情報をくれ、どんな危険な魔物でもあらかじめ知っておけば

生きて帰って来るのも簡単さ」


ルピーの頬に一筋の涙


「ラク…ごめんなさい…甘えさせて…もらうわ…」


***


昼過ぎ、ラクは高級な魔法アイテムを専門に扱う市場に来ていた

狙いは「爆炎玉」、使用するとファイアボールと同じ威力の爆発を

起こすことができる使い捨ての魔法アイテムだ


高価な割に人気が無く、売っている所はすぐに見つかった

それでも買えたのは、今回のライオンの稼ぎの残り全部使って3個だけだった


「毎度あり~危ないから気を付けなよ~」

「ああ…」


歩きながら自分の荷物にしまいつつ

先程の自分の行動を述懐する


「悪いな…今はラストンは居なくて全能力倍増じゃないんだ…」


あの場で言ったことは全て一時しのぎに過ぎない、もらった情報から

ジェニー達が1人でも生き残っている確率は低いと予想できる

さまよう鎧はタイマンなら勝てるだろうが、複数相手では厳しい

半裸の大男の存在も相まって、逃げ切れるかどうかも怪しい

何より…自分も今グレーターヒールを使えないのだ


「私が死んだらルピーの心も死ぬ、なんて…フフッ、自惚れだな」


そう呟きながら、ルイザの酒場の中に入る

予想通り、スタッフ以外誰も居ない


「今日も…居ないのか?」

「はい、残念ながら…」


ルイザの酒場は勇者でなければ使う資格が無いとでもいうのだろうか

内心憤慨しつつ、件の洞窟の情報をスタッフと共有し、一旦自分の

賃貸部屋に戻って、安い内に買い貯めていた聖水の入ったガラス瓶を

自分の荷物に入れ、ラクは1人で出発した


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