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一千年後の魔法世界  作者: 采
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プロローグ

 今から1000年前、この星には科学というものが溢れていた。 

 明かりの消えない街に、遠くの人と話せる機械、空飛ぶ金属の乗り物。海の底や空に浮かぶ星にまで行けた。だが、どれも今ではないものばかりだ。


 1000年前のこの星では地球温暖化による異常気象によってとある計画が持ち上がった。

 その計画とは、簡単にいえば星を乗り換えるという計画だ。

 この星は年々上昇する気温、異常気象による災害、氷山が溶け海面上昇による居住地の喪失など、様々な問題が次々と起きたことによってとても生き物が住める状況ではなくなっていった。


 このままでは人類は滅亡する。それがわかっていても、この便利さに慣れた我々人類は科学によって齎される恩恵を手放すことはできなかった。

 科学は手放せない。しかしこのままでは滅亡する。そうなった時に人類が思いついたのが、我々人類が住み得る新たな星を探すというこの計画であったのだ。


 それから人類は新たな星を探すのと並行して、何億光年先にあるかわからないその星への移動手段を研究した。長期保存できる宇宙食や水問題。生き残った人類が乗れるだけの超大型機体開発に度重なる宇宙実験。そうやってより温暖化が加速しようとも構わず実験に実験を重ね、それまでアニメや漫画の中だけであった技術、ワープを手に入れたのだった。


 だが、人類が住み得る星というのはそう簡単には見つからなかった。地球に近い環境の星があったとしても、空気がない、水がない、温度がたりない。何かしらが足りないのだ。

 そうこうしているうちにどんどん地球の居住区域は狭まり、干ばつにより食物も無くなり、人類はどんどん減っていった。

 だが、地球に住める期限があとわずかというところでやっと見つかったのだ。第二の地球になり得る星が。


 これで我々は助かる。急ぎ地球を脱出しなければ。

 そんな極限の状況下でとある問題が起き、人類が二分した。


 一派は言った。次の星ではさらなる科学の発展を、と。

 次の星はまだまだ時間がある。ならばさらなる科学の発展を目指し、また機が来たら次の星へ向かうのだと。


 一派は言った。この反省を生かし、次の星では自然と共に生きるのだと。


 この論争は世界を二分する大論争を巻き起こした。

 話しても話しても分かり合えない対極の思想。この過酷な環境の中、人類がまとまらないまま次の星へ向かうことになると懸念される中、ある大事件が起きたのだ。


 科学の発展を望む一派が、自然との共存を目指す一派を地球に置き去りにしたのだ。


 論争により人類が二分したとはいったが、自然との共存を目指す一派は劣性だった。

 なぜならば、人類は欲深い生き物だから。一度便利な生活を手にしてしまえば、それを手放すというのは相当のことであった。


 だから置き去りにしたのだ。次の星での便利な生活を脅かされないように。


 残された人々は滅びかけた地球で懸命に生きた。自然に寄り添い、自然を愛し、自然を敬った。

 そうした生活を続けていたら、驚くべきことが起こった。回復したのだ。地球が。


 いや、回復したと言ってもよいのだろうか?

 気温は徐々に下がり、干ばつや災害も少なくなっていった。そこまではいい。問題はそこからなのだ。ある日、ものすごい地鳴りがあった。それは立っていられない程だったと伝わっている。そしてその地鳴りが落ち着くと、地球にある変化が起こっていた。


 『迷宮』


 あるものは岩壁にある洞窟に、あるものは大樹のウロの中に、あるものは砂漠の砂の中に。


 異形の生き物が湧き出る穴が出来たのだ。

 異形の生き物『魔物』は最初こそ穴から湧き出たものの、そのうち自然と出てこなくなった。だが、最初に穴から湧き出た魔物はそのまま地上で独自の生態系を築いていていった。


 人類は必死に戦った。生き残るために。

 魔物達は人類の天敵であると同時に、良い食糧であり、良い素材であった。

 そうして戦って、戦って、戦っているうちに、不思議なことが起こり始めた。


 『恩恵』


魔物と戦ったり、特定の技能を磨いていくと、不思議な力が備わることに気がついたのだ。


 魔法。それまでの我々にとっては御伽話の中だけのものだったが、科学が発達する前、我々人間が自然と共に生きていた時代、魔法使いは存在したのだ。とある部族にいた魔術師。魔女狩りにあった女たち。東方の国にいたとされる巫女や陰陽師。

 科学の出現によって廃れ、忘れ去られ、御伽話の中だけのものになったが、確かにあったのだ。


 あるものは足が早くなり、あるものは力が強くなった。そしてあるものは手から火を起こしたり、風を起こしたり、水を生み出したのだ。そう、魔法のように。 


 そしてそれは鑑定という能力の発現によって確かなものとなった。

 そしてそれを誰かが自然の女神様による恩恵だと言い始めた。

 地球が滅びかけてから自然に寄り添い、自然を愛し、自然を敬い生きてきた我々への自然を司る女神様からの恩恵だと。


 我々はそうした力を使い、迷宮に潜り、魔物を倒し、自然の恵みをいただき、生きていった。

 ある一定以上の科学を禁忌として。


これはそんな地球のとある世界線の、一千年後の物語。

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