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複数の奴隷商が集まっているようだ。
市には、檻に入れられた老若男女が、所狭しと集められていた。王允はあまり良い気分はしなかった。
張温は男が集められている檻を、注意深く見ている。
張温は『侍女に手を出さない、去勢された男手』を探しているそうだ。
去勢となると、罰を受けた者も含まれる。
つまり良き者と悪き者との見極めが難しい。
それで張温を心配し、ついてきてしまったのだ。
「王允殿、やはり私にはさっぱりです。王允殿から見て、良い人はいましたか?」
「あそこに座っておる老人は、品も良く知性がありそうだが」
王允は檻の奥にいた六十過ぎの老人を指した。
探している条件とは違ったが、目についたのだから仕方ない。
「本当ですね。市で老人とは珍しい」
「珍しいのか?」
「ええ、最近は老人と、あと女の子は中々見ないですよ」
女の子はすぐに売れる。
売れなければ、色街にでも売られるという事だろう。
王允は顔をしかめ、気晴らしに周囲を見渡す。
王允は子供がカゴに売られているのを見つけた。
中を覗くと籠に掴まり立ちをしている赤子が入っている。
服装から女の子だと知れた。
「あの、王允殿何しているんですか」
「見てわかるであろう。金を出しておるのだ」
「あんなに小さい子を、どうするつもりですか」
「屋敷に歌姫がおらぬ」
「言葉すら話せそうにないですが……」
「邪魔をするなら、あっちへ行っておれ」
追い払うしぐさをすると、張温は苦笑いしながら離れて行った。
主に金を払い終わり、売買が成立した。
買い取った赤子を抱っこして、王允は満足しつつも後悔した。
これだから奴隷市には来たくなかったのだ! 歌姫を一から育てなくてはならなくなってしもうた。
王允は、抱っこされながら不安そうにしている女の子を見る。
「さて、張温はどこにおるのかのぅ」
そう女の子をあやしながらそう呟いた。
「王允殿~!」
声がする方へ振り向くと、こちらへ向かってくる人物が二人いた。一人は張温。もう一人は
「お前、儂が言うた老人買うたのか!?」
「何故か私、年寄りに甘いんですよね」
首をかしげる張温に、もしや儂に懐いている訳は、人より老けて見えるからではないか?
と疑念がわいたが、気にしないことにしてやる。
「まぁ侍女を襲いはせぬであろう」
お前が良いなら良い、とも言おうと思ったが、お互い様だ。
「王允殿、その子の名前は?」
「儂が名付ける」
「それはもう我が子じゃないですか」
「おお、それは良いな。儂の初めての子だ」
朝廷へ帰りながら、そんな軽口を言い合う。
あまり良い時勢ではないが、幸せにしてやろう。
のちの世にて
張温、逆賊・董卓により処刑。
王允、養女を差し向け董卓暗殺。
今はそのようなことなどつゆとも知らずに
ただ純粋に、突然できた娘を胸に抱きながら、友と帰る。
中国四大美人の一人、『貂蝉』物語の始まりである。




