第96章 最後の侵略
魔王カズマサがこの世界…ゼロ・ワールドに来てから9年と364日…
彼は魔王として最後の仕事をするべく
始まりの街ブラドゥークへと降り立った。
ブラドゥークには緊急警報によって召集された冒険者達が魔王を撃退する為に集結しており
その中には
彼がパーティに指名した冒険者の少女ユキの姿もあった。
カズマサ『ふはははっ!今日よりこの街は我が魔王軍のものとなる!!逆らう者はこの死霊王!ロードリッチーが制裁を加える!!死にたい奴はかかって来るがいい!!』
ユキ『あ…あぁ…』
10年前…
当時14歳だったユキの姉はロードリッチーの魔剣によって真っ二つにされており
当時その場に魔王は不在だったものの
彼女の目には姉の命を奪ったモンスターが再び現れたようにしか見えなかった。
マリー『魔王様の前に跪いて命乞いをすれば下僕として働かせてあげるわ…ふふふ…ありがたく思いなさい!!』
ユキ『い…嫌…下僕になんて絶対なりません!!』
マリー『あら…生意気な魔法使いちゃんね…ロードリッチー!!お仕置きしてあげなさい!!』
マリーの指示で少女に襲い掛かるロードリッチー…
死霊王の剣は水の魔剣によって受け止められる事となり
次の瞬間
ロードリッチーの身体は冷気によって完全に凍結していた。
ユキ『アサミさん!?』
アサミ『もう大丈夫よ…ここは私に任せて!!』
青と白に彩られたノースリーブの姫騎士服…
アサミの服は魔王がリクエストしたものと完全に一致しており
少女を助けた彼女は魔王に対して一騎討ちを申し出てきた。
アサミ『始まりの街に対して総軍だなんて…ちょっと大人げないんじゃない…魔王君?』
カズマサ『なぁに…こいつらは4大国の制圧にも仕事をして貰う予定だからな…戦力は多いに越したことはないのだよ!』
アサミ『そう…なら戦力を温存させてあげるよ…私が君と闘うから…他のみんなには手を出さないで欲しいな!』
現在ブラドゥークで戦力となりうるのはアサミただ1人…
現在勇者パーティの面々は火の国ブラスターよりこちらに向かってるとの事であり
彼女の提案を快諾した魔王は
大勢のギャラリーが見守る中で憧れのアイドルと剣を交差させた。
カズマサ『(いつ見ても可愛いな…容姿だけじゃない…皆に認めて貰いたくて頑張ってる君は…俺にとって永遠のアイドルだ…)』
アサミ『どうしたの!?遠慮してると私が君を討伐しちゃうよ!!』
カズマサ『遠慮なんかする気はないさ…いくぜ!!我が炎の魔剣バルフォースよ!!暗黒の力を纏いて小娘を焼き払え!!!』
アサミ『ふふっ…魔法剣なら私も敗けないよ!!アビスさん…私に力を貸して!!』
数回剣を交えたところで間合いを取る2人
それぞれの魔剣に魔力を注ぎ込んだ必殺の魔法剣は街の中央でぶつかり合い
その衝撃は周囲のものを吹き飛ばした。
カズマサ『暗黒の魔炎斬!!!』
アサミ『深海の儚き者!!』
10年の時を得て交わる2人の魔法剣は全くの互角であり
まだまだ余力を残してるアサミはカズマサに追撃をかけてきた
冒険者として常に前線で闘い続けてきた彼女と
城に引きこもる事が多かった魔王では持久力に差がつくのは当然であり
劣勢の魔王をマリーは心配そうな眼差しで見守っていた。
マリー『魔王様…』
カズマサ『ハァ…ハァ…中々やるではないか…そう来なくては面白くない!』
明らかに劣勢にも関わらず不敵な笑みを浮かべる魔王
彼には敵味方誰にも伝えていない奥の手が残されており
魔王のマントを投げ捨てた彼は
体内に眠る竜魔王の力を魔力によって覚醒させた。
アサミ『えっ…』
カズマサ『冥土の土産に教えてやろう…魔王には第2形態があるんだぜ?』
竜魔王の力が覚醒し
背中より翼が出現するカズマサ
元より高い身体能力を持っていたが魔王だが
その身体にドラゴンの圧倒的な力と生命力が加わる事となり
瞬く間に形成は逆転した。
アサミ『う…うぅ…』
通常形態の彼とは打ち合えていたアサミも竜魔王との力の差は歴然であり
数回の衝突で力負けした彼女は腕を痛めていた。
劣勢の彼女を見た冒険者達の悲鳴が響き渡る中
竜魔王となったカズマサは彼女を痛みつけ
剣での戦闘が困難となった彼女の身体に
強烈な打撃が炸裂した。
アサミ『あ…ぎゃあああっ!!』
腹部を殴られた彼女から響き渡る断末魔の悲鳴…
軽く割れた腹筋を破壊されたアサミは腹部を押さえて崩れ落ちてしまい
そんな彼女に対して
カズマサはトドメの魔法を発動しようとしていた。
アサミ『(痛たた…第2形態があるなんて聞いてないよぉ…)』
カズマサ『ふはははっ!この街ごと消し飛ぶがいい!!』
アサミ『(傷ついたヒロインが最後の力でみんなを助ける…うん…100点満点だよ!)』
翼で上空へと舞い極大魔法を放つカズマサ
彼の真意を読み取ったアサミは残された力で全力の防御魔法を発動し
その極大魔法を蒸発させた。
カズマサ『魔炎爆撃!!!』
アサミ『深海の繋がり!!』
凄まじい爆炎と水流が激突し
煙で視界が遮断されるブラドゥーク
街を守る為に力を使い果たしたアサミはその場に倒れてしまい
煙の中から彼女の敗北を見た冒険者達は絶望に膝をついていた。




