第53章 救援の竜魔王
各地で続く円環の騎士団の襲撃
その戦火は当然4大国最後の1つである風の国シュトゥルムにも広がっており
アルザーク同様
この国は実質的に魔王軍の拠点として防衛戦が行われていた。
かつて勇者イオリや騎士団ディーネと死闘を繰り広げた砂の魔人ロックゲイルも苦戦を強いられており
敵の雷を纏った槍の一撃で
配下のゴーレム達は瞬く間に解体されていた。
アルゲース「相手にならぬな…勇者も魔王もいなければこの程度か…」
雷魔騎士アルゲース
その体格や戦闘スタイルは風魔剣士ファントムブリーズとよく似ており
彼とはライバルのような関係だった。
アルゲースの鎧には魔力によって発生した電流が常に帯電し、近接攻撃に対しては無条件でカウンターか発生する厄介なものであり
人海戦術が通用しない以上
彼を倒すには真向勝負で打ち破るしかなかった。
ゲイル「ここまでか…すまないな…麻美…真理…魔王様…」
真向勝負となればアルゲースとロックゲイルの力の差は歴然であり
槍の一撃で貫かれた彼は謝罪の言葉を残して崩れ落ちた…
彼にトドメを刺すべく槍を構えるアルゲースだったが
上空より黒い影が見えるとそのい威圧感に身構える事となり
絶体絶命のゲイルにとっては最強の助っ人が登場する事となった。
アルゲース「竜魔王バルフート…どうやら俺は最大級の当たりを引いたらしい…」
竜魔王バルフート
漆黒の翼と身体に全長8メートルはあるであろう巨大なドラゴンは、魔王軍の幹部でも最強の存在であり
彼は傷ついた同僚を下がらせるとアルゲースの前に立ち塞がった。
炎魔王とも面識のあるバルフートは、敵陣営から見て最も警戒するべき存在であると言われており
バルフートは鎧の電流をものともせずに強靭な爪で猛攻を仕掛けた。
バルフート「ゲイル君は大切な同僚なのでな…本来この世界と無関係な者に倒させるわけにはいかぬ!」
アルゲース「ぐっ!?」
バルフートの爪でヒビが入る鎧
竜魔王の爪は鋼鉄よりも硬く物理的な力ならば現職の魔王を遥かに凌駕しており
不利とみたアルゲースは素早い動きで距離をとり
魔法重視の戦法に切り替えた。
アルゲース「魔雷連撃!!」
槍を地面に挿し
両手から雷魔法をマシンガンのように連射するアルゲース
並のモンスターなら1発でも即死する威力だったが
高い生命力と耐久力を持つ竜魔王は雷を受けながらも魔力をチャージし
全力の一撃を放った。
アルゲース「馬鹿な!?これだけの攻撃を喰らって動けるはずが!?」
バルフート「この魔法を使うのも久しぶりだな…聖魔砲…混沌波動砲!!!」
バルフートの口から放たれる凄まじい威力の爆裂魔法
光と闇の魔力と竜王の闘気が合わさったその爆風は、大地に大穴を空ける程の威力でアルゲースに襲いかかり
直撃を受けた彼は塵1つ残らず爆散していた。
雷魔法を受け続けたバルフートもかなりのダメージを負っており
すぐに魔王城へと戻る事は出来ず
シュトゥルムで同僚のゲイルと休息をとる事となった。
ゲイル「さすがだな…あんたが味方についてくれて正直ほっとしてるよ…奴らとも知り合いなんだろう?」
バルフート「今この時代を創るのは今の魔王君と今の勇者だ…彼らではない…!」
ゲイル「バルフート…」
バルフート「だがバルフォース君達も召喚された以上は頂点を…世界征服を狙ってくるだろう…彼らを眠らせてやるのも魔王君の…そして配下である我々の仕事だよ…」
魔王軍に味方しつつも円環の騎士団にも理解を示すバルフート
竜魔王の立場ならばどちらを選ぶ事も出来たが
あくまでも自分を召喚した魔王の配下として闘う道を選び
彼の言葉にゲイルも魔王を心酔するマリーの気持ちをなんとなく理解していた。
両名は体力が回復次第魔王城へと戻るつもりだったが
この間
魔王城にいたマリーに最大の危機が訪れていた。
マリー「はぁ…はぁ…」
マリーを纏っていた天使のローブはところどころを炎によって焼かれてしまい
穴の空いた部分からは痛々しく腫れた素肌が露出していた。
円環の騎士団の最大の狙いは
4大国を襲っている間に魔王城に居るマリーを手に入れる事であり
傷ついた彼女を前にしたバルフォースは
その左手の大砲を突き付け
忠誠を誓うよう勧告していた。




