第1章 悪役に憧れる少年
ここはとある私立高校
本日行われた体育の授業にて1人の生徒が注目を集めていた
この高校では体育の授業にて武道が必修科目となっており
それは柔道の授業での出来事だった。
友助「いくぞ!!」
一優「そりゃっ!!」
先生「おおっ!100点!!」
注目を集めていたのは投げ技を決めた友助…
では無く投げられた方の生徒だった。
夜神一優
彼は中学時代に柔道部で鍛えた受け身の技術を存分に発揮し
投げ手に合わせて動く事で
投げ手の力0で投げられる離れ業を見せつけていた。
彼の友人である友助は運動神経皆無で体育の赤点が危険視されていたが
一優の活躍で友助は赤点を免れていた。
友助「何という才能の無駄遣い…いや…助かったんだけどさ…」
一優「悪役の美学って奴だよ…如何に綺麗にやられるか…俺は中学時代それだけを考えて部活に参加してたからな…」
悪役の美学…
一優は幼少期よりアニメや漫画において悪役に感情移入する変わった感性を持っており
それは歳を重ねる事にエスカレートしていった。
勉強も運動もオールマイティーにこなせる彼だったが
その特殊な感性は回りからイロモノ扱いされるには充分な破壊力があり
そんなイロモノの彼を幼少期より支えてきた1人の少女が放課後
校門で一優を待っていた。
伊織「あっ!やっときた!」
一優「悪い!遅くなっちまった!」
伊織「罰として今日は君の奢りね!◯健美茶でいいわよ!」
宮野伊織
一優の幼馴染みである彼女は受け身気質な一優を度々奴隷のように扱っており
一優本人もその関係には満足していた
ショートボブでボーイッシュなイメージの伊織だったが
その容姿は高いレベルで整っており
イロモノの一優には勿体無い程だった。
伊織「ねぇ…明日の土曜日って空いてたりする?」
一優「悪い…明日はどうしても外せない用事があるんだ…」
伊織「用事って…アイドルのライブがこの私より大事だと?」
一優「いや…そんなつもりは…」
伊織「冗談よ…別に急ぎの用じゃないから…」
電車で帰る2人の帰り道
デートの誘いを断る一優だったが
伊織の言う通り
彼は翌日にアイドルのライブを控えていた。
無論伊織はそれを承知でからかっただけであり
自動販売機で○健美茶を奢らされた一優は最寄り駅にて彼女と別れ
自宅にて翌日の準備を整えた。
一優「あれ…何だか…今日は麻美ちゃんとよく目が会うような…」
青野麻美
彼女はアイドルヲタである一優が今一番推してるアイドルであり
大人しそうな見た目に反して露出度の高い衣装のギャップが人気を爆発させていた。
彼女のライブに参加した一優だったが
ライブの最中…
麻美と目が合ったその瞬間
彼の魂は謎の異空間へと飛ばされていた。
一優「こ…ここは!?」
マミ「ヤガミカズマサさん…ですね…?」
一優「ま…麻美ちゃん!?」
マミ「ここは天界です…今日は私のライブに来てくれてありがとうございました…貴方は今日来てくれた3000人の中から選ばれたのです…」
謎の異空間で目を覚ます一優
彼が気がつくと目の前には憧れのアイドルに良く似た人物が立っていた
思わず目を疑う一優だったが
彼女はそんな一優に説明を始めた。
マミ「私はマミ…貴方の知っている青野麻美とは少し違う存在です…」
一優「髪が水色ですね…凄く似合ってますよ…」
マミ「私は女神としてある世界を担当としています…ヤガミカズマサさん…貴方には私の担当とする世界を救って貰いたいのです!」
一優「勇者となって魔王と闘えばいいのですか?麻美ちゃんの為なら魔王だろうが宇宙の帝王だろうが闘いますよ!」
マミ「逆ですね…貴方には魔王となって勇者と闘って貰いたいのです!」
一優「魔王に…!?」
勇者では無く魔王になって欲しい…
幼少期より悪役に憧れていた彼にとっては最高の頼みであり
一優はマミから詳しい話を聞く事となった。
マミ「貴方ならわかっているとは思いますが…世界を維持する為には勇者のみならず魔王も必要不可欠なのです…」
一優「魔王や魔物が居るからギルドの冒険者達が生活出来るって事ですよね…?」
マミ「その通りです…極端な話ですが勇者より魔王の方が大事なくらいなのです…魔王の任期は10年間です…やって頂けますか?」
一優「その話乗ります…ですが…俺の居た世界の俺は…失踪なんかしたら麻美ちゃんに迷惑が…」
マミ「心配ありませんよ…平行世界として…貴方は今私のライブを楽しんでいるはずです!」
一優「良かった…なら喜んでお受けします!!」
マミの話を受けた一優は魔王として彼女の管理する世界に転移する事となり
新米女神と新米魔王の物語はこうして幕を開けた。
マミが担当としている世界の魔王は10年間の任期を終える関係で後任を探している状態であり
異世界のゲートを通過した一優は魔王カズマサとして先代魔王の前に姿を現す事となった。