運命の日
「男の子のほうは?」
ぼくは我慢できずに、尋ねた。
「わからない。その場に居たのは、わたしじゃなくて息子の五十朗だったんだけど。あの子は何か気付いてるみたいだけど、正義感が強くて絶対に他言しないの。まったくだれに似たんだか。」
ヤマトに聞いても無駄だろう。それに余計な心配をさせるだけだ。
「そうだ。あの子がこんなこといってた。」
そう前置きをして、ゆっくりと昔話を始めた。
泣きじゃくる女の子に、男の子は手を焼いたのか
「大丈夫、絶対迎えが来るから。」
と、無邪気に言った。
「来なかったら。」
そう女の子に泣きながら言われた男の子は、困る様子もなく笑顔でいったそうだ。
「来るまで、俺が一緒に居てやる。」
「ずーとずーと、来なかったら。」
そういい続けるその子に、男の子は何かささやいた。その言葉を聞いてか、その後は安心したのか男の子の背中にもたれて寝てしまったという。
「あいにく、何を言ったのか小声で聞き取れなかったらしいけど。実際には母親があわててやってきて、事なきを得たんだけどね。」
僕は新聞社を後にした。これ以上マリの過去に踏み込んでいいものだろうか?そう考えながらも、なぜか僕が解決してやらなければいけないことなんじゃないかという使命感も湧いてくる。
「五十朗。これでよかったの?」
「ああ、彼には知る権利がある。そして、解決する責任がある。」
イソコは息子と電話で話していた。