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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者と魔王殺人事件〜探偵王女は眠れない〜

作者: Taylor raw

深淵の闇に溶けるような滴るあかがしとしと、と跳ね返る。

物言わぬ骸を顧みてその人影は何事か囁き──

そして闇へと消えていった。











「は?は⁈もう一度仰って頂けませんか?申し訳ありませんがどうやらまだ頭が眠っているようで……」


ただいまの時刻は深夜2時。

惰眠を絶賛貪っていた私は見飽きた顔であるお付きの者に叩き起こされ着の身着のままで案内されるままにとある一室にやってきた。

目の前には豪奢な椅子に立派な黒い顎髭を伸ばした尊大な男が佇む。

この男とこうして差し向かって話をするのもいつ以来でしょうか。


「……よかろう。無理もない。お前の目が醒めるまで何度でも言ってやろう。レブルタークで勇者と魔王が死んだ。先ほどな。胸や頭に大きな刺し傷や切り傷があった以外は死因や詳しい死亡時刻などは不明。なにしろつい先ほど通信水晶を用いたヘイグによって火急で寄越された報せなのだ。こちら側が先に関知したのが不幸中の幸いだな。よって今すぐお前にはレブルタークに向かってもらいたい。現場の捜査権と裁定権はやる。以上だ」


頭が痛くなる。

これは夢でしょうか?

それとも目の前の男は正気なのでしょうか?


私は痛む頭を押さえながら声を絞り出す。


「……冗談は復活祭の時だけにしてくださいませ、お父さま」


本当に趣味の悪い冗談だ。

全くもって笑えない。


ひと月ほど前から人間側の代表である勇者一行と魔族の長である魔王とその幹部によりレブルタークという都市で人間と魔族の戦争を終わらせるための講和会議が開催されています。

半世紀にもわたり繰り広げられた人と魔族の戦争にお互いに疲れ果て、もう双方ともに殺し合うことに飽き飽きしていたからです。


しかし半世紀もの殺し合いで出来た溝というものはひと月で埋められるほど浅いものではありませんでした。

当初の予想通りこの会議は荒れに荒れ、会議室では毎日お互いの怒号が飛び交い紛糾の様相を呈しているそうな。

レブルタークは現在、勇者軍と魔王軍が講和会議を開いている真っ最中の正に震源地中の震源地。火薬庫といってもいい。


そんな折にお互いのリーダーが会談中に謎の突然死を遂げたとなれば休戦状態はすぐにでも解除され人魔大戦がたちまち再開してしまうでしょう。

本当に趣味の悪い冗談です。

全くもって笑えない。

この男は底意地が悪く、気まぐれでたまにこういう悪戯をする。やれやれ。

私が頭をふりふり席を立とうとした時でした。


「残念だが冗談ではないのだよ。突拍子もなく、信じられない悪夢のような悲報ではあるがな。ここに至って信じられていないのは私の人徳の為せる業だな……やれやれだ。なぜこのような深夜にからかい甲斐の無いお前を呼び出したのだと思う?他に26人の子を持つ私が。城に詰めている多くの部下の中には話術に長け面白い者もおる。このような深夜にでも私を笑わせてくれよう。暇で暇で眠れない夜ならばつまらないお前ではなくそのような者を呼びつけるわ」


諦観と疲労感を表情に滲ませる男は私に疲れたような目線をくれる。

真剣な眼差しだ。この男からこんな眼差しを受けたのもいつの日以来だろうか。

言っていることも確かに一理ある。


私は男の目を暫く見据え再び腰を下ろす。


「……では勇者と魔王が今夜亡くなったのだとしてなぜ私が召し出されたのでしょうか」


私は震える声で男の目を見つめ当然の疑問を口にしました。

──冗談であってくれ

ことここに至ってまだ私はこの男の性悪な人間性・・・に期待していました。


「……まだ信じられぬのか?司法解剖とかいう禁忌の技術を持つ変人など世界中どこを探してもお前しかおらん。この事件の解決にはお前が最適なのだ。もう一度言う。急ぎレブルタークに向かい勇者と魔王の死因を調べ然るべき措置を執行せよ。わかるな?もはや我々には一刻の猶予もないのだ」


──決定的だ


声音はしっかりとしているが微かに震えがみられ、顔色も青白い。

道理は通っている……嘘を言っているようには見えない。冗談にしては全然面白くない。

ここに至って確信する。この男の言っていることは冗談でも虚言でもないのだろう。

死体の調査をこの私に任せると今この男は言った。

勇者と魔王は今夜死んだのだ。

世界の命運を握る講和会議真っ最中に。

最悪だ。最悪だ。最悪だ。最悪だ。

私は呻きながら頭を抱え込む。



目の前の我が父である皇帝・・は「探偵王女」と呼ばれる私の捜査能力に期待してこの逼迫ひっぱくした状況の切り札に選んだのだ。

こんなことなら普段から探偵の真似事などしなければよかった……

キリキリと胃まで痛んできた。

普段であれば侍従が私の身体を支えに来るなり薬の用意をするなりの処置があろうところだが生憎この部屋には私と目の前の性悪な男しかいない。

自ら気を奮いたたせ椅子から立ち上がるまでたっぷり5分はかかっただろうか。その間この男は一言も私に声を掛けてこなかった。こんな男にも良心の呵責というものがあるのでしょうか。

やがて私はすっくと立ち上がり部屋の扉へと向かう。

この男の言う通りもはや一刻の猶予もない。


「……やってくれるのだな。すぐにでも権利書は私の名で用意する。現場の捜査権、裁定権その他諸々必要な権利をお前に与えよう!」


男の青白かった顔に微かに熱が戻ったようだった。

あの悪辣な男があまり仲のよろしくない・・・・・・・・私にそこまでして頼み込むのだ。よっぽど追い詰められていたのですね……

少し面白く思った私は振り返ってこの男に対して久しぶりにしかし自棄やけ気味に白い歯を見せてやる。


「ええ、やりますわ。やりますとも。世界がひっくり返ろうという時分ですもの。いくら大嫌いな相手にこのような深夜に無作法に呼び出され仰せつかったとんでもない用事であっても。この国の火薬庫が爆発すれば私まで燃えてしまいますもの。でも着替えの時間だけはくださいね。いくら15番目の変人王女とはいえこのような格好では人前に出ること叶いませんわ」


私はそう言ってお気に入りのぶかぶかのパジャマの袖をひらひらと振る。


私の父は苦笑で顔を歪め椅子に座りなおした。

その表情にはやはり諦観がこもっていた。


「わかった。わかった。頼んだぞ我が娘、第15王女ジェシカ・ブレストリーよ……」










──ジェシカ・ブレストリーとは生来の探偵気質である。

この変わり者の王女は知識欲が異常に強く幼い頃より魔法学や数学はおろか、医学や理学、科学の分野にまで手を染め遂にはこの国の宗派的に禁忌とされてきた(死体を用いた)人体解剖という実験を敢行した。

それが原因で聖十字教会からは破門されているが本人はどこ吹く風で自らの立場を利用した理学実験などを行い日々知識欲を満たす生活を送っている。

その副産物と言ってもいいものか、蓄積されたその知識によって彼女自身が解決した事件は少なくない。

そのような「変人」と揶揄される彼女には敬意と嘲笑をこめていつしか「探偵王女たんていおうじょ」という渾名が付けられた。



「……ふうう、いくらバリアを張ってあっても冬の夜空は冷え込みますわね……ちょっとさっきから何を1人で呟いているのかしら?不気味ですよ、ナナ」


──因みに現在父君である皇帝の命により王家御用達の輸送巨鳥タリムの背に乗って護衛兼秘書官である私ことナナと2人くだんのレブルタークに急ぎ向かっているところでございます。

冬の夜空を高速で飛ぶ怪鳥に乗っている私たちが呼吸もでき凍えずに済んでいるのは魔力バリアを張っているからなのです。

王女の仰る通り少しうすら寒いですが。


「ちょっとお、ナナ?大丈夫ですか?」


王女殿下が心配そうに私の顔を下から覗き込む。

夜空の星空がその瞳に反射して美しい……

こんな状況でもなければ拝めないレアアングルだ。

この間15になったばかりとは思えないくらいに幼さを残しつつもその容貌の完成度は高い。


「ご心配には及びません。日課の日記をつけているところですから」


俄然ボルテージの上がった私は心配する王女に向けてニコリと小さな笑みを返す。


「……そう、相変わらずこんなときにまでまめ・・なことですわね。これから火薬庫に突っ込もうという時にまで。こんな真夜中に叩き起こしてごめんなさい。でも頼れる者は貴女しかいませんでした。緊急の出勤手当てはたっぷりとはずみますからね、ナナ。生きて帰れたら、の話ですけど」


この状況への自嘲と皮肉をこめてころころ、と笑うがしかし王女は私への気遣いを忘れない。

変人と呼ばれてはいるがそれは周りが彼女に付いて行けていないだけで根は合理的でお優しい方なのだ。

私はよく知っている。

だからどのような危険な場所であろうとも、たとえ最期の旅となろうとも何処までも彼女についていくと私は決めている。


「いいえ、お気遣いなく。こうした一大事に私を頼って下さり光栄です」


私は王女殿下に向けて恭しく跪く。

彼女は慌てたように私の手を取り立ち上がらせる。普段から偉ぶるのが嫌いなお方なのだ。

一応私はジェシカ殿下の専属騎士の礼を執ってはいるが彼女はまるで友人と接するかのように気安く私に話しかけてくる。

本当にお可愛らしいことだ。

うん、今晩のボーナスとして帰ったらジェシカさまの衣服の1つを拝借しよう。クンクンしてねりゅんだぁ……

って言うか夜風に微かに漂ってくるジェシカしゃまぁの匂いを嗅いでいるだけでほぼいきしょうににやりゅうぅぅぅぅ……



……そんな楽しい事を夢想していたら顔に出てしまっていたらしい。

王女殿下が今度は怪訝そうに私の目を見つめる。


「……何か企んでいる顔ですね?いつもながらその笑顔怖いですわ」


やはり彼女は勘がいい。

私は笑って誤魔化すが、笑顔を作るのは苦手だ。

私が笑うとさらに怪しまれてしまった。












「王女殿下!お待ちしておりました!早速中へ」


巨鳥タリムは目立たないようにレブルターク城の屋上に静かに着地した。

到着早々、事情を知る衛兵の1人がジェシカたちの元に駆け寄ってきた。


「皇帝陛下から話は通っていますね?では案内してください。現場は誰も通さず何も動かしてないですよね?」


ジェシカはタリムから降りると衛兵に直ぐ現場保存の状況を確認する。

事件の捜査において現場を保存する、という概念はこの世界ではジェシカ以外には無い。


「はい。手は少ないですが何とか現場は封鎖しております。地下だったのが不幸中の幸いでした」


例の現場へと向かう廻廊や通路を静かにしかし足早に急ぎながら情報を擦り合わせる。


「あなた、死体発見者の1人ね?死体を発見した時の状況を説明してくれる?」


老兵、といった風貌のその衛兵にジェシカは問いかけた。

衛兵は疲れた表情ではあるが記憶を辿るように話し始める。


「はい。深夜0時過ぎ頃でした。私を含む衛兵3名チームの巡回が地下1階に差し掛かった時でした。最初に血の匂いに気づいたのは私です。残りの2人に警戒を促しながら血の臭う部屋に踏み込み中を調べたのです。むせかえるような血の匂いの中でした……」


衛兵はそこで一旦話を区切り息を飲み込む。やはり衝撃は大きいのだろう。

先を急ぎながらもジェシカたちは黙って男の回復を待つ。


「その部屋には頭を割られた勇者殿のご遺体とにっくき魔王の心の臓を貫かれた遺体が無惨にも横たわっていたのです……殿下……いったい我々はこれからどうしたらよいのでしょう……?」


衛兵の説明は途中から縋るような悲嘆と不安へと変わる。

やはり混乱ぶりが伺える。


ジェシカは落ち着いた声でその疑問に応え先を急ぐ。


「……まずは真相を究明して……事態を収拾しなければなりません。現在このことを把握している者は……?」


衛兵の説明によると現在事件を把握している者はジェシカとナナの2人と皇帝、そして彼女たちの案内人を含む第一発見者である衛兵3人、最後にその死体の発見報告を受けたヘイグ第6王子の7名のみだ。

つまりはこの事件の拡散は最小限の人数で止まっている。

事が事だけに無闇に混乱を拡げず出来れば(そんなことは不可能に近いが)秘密裏にこの事件を解決したいという帝国側の思惑もある。



6階もあるレブルターク城を屋上から地下まで降りるのは鍛えあげた兵士でも大変なものであるが古参のこの衛兵だけが知る近道でジェシカたちは比較的早く地下へと降りることができた。

要塞レブルターク城には様々な仕掛けがあり建設当時から居るこの衛兵でなければ知らない仕掛けまであった。


「面白い仕掛けですね。やはり激戦地の要塞ということが伺えます」


「今やここまで城の仕掛けを知り抜いた古参は私くらいのもんですよ、殿下」


「さすが、バルマー様。歴戦の英雄でいらっしゃいます」


「昔のことです……」


バルマーと呼ばれたその衛兵は苦笑する。

その男の右腕の聖痕を見ながらジェシカは感心するが、今はそれどころではない。


いよいよくだんの部屋の扉が見えてくる。

扉の前には一際身なりのいい男が衛兵2名とともに全員が焦燥し切った表情で立っていた。


その高貴な身分と思しき栗毛の男はジェシカとナナを確認するとすっと前に歩み出る。

男の目には隈ができており顔色も青白く呼吸も浅い。


「……ジェシカ、陛下より連絡は受けていたがまさかお前が派遣されてくるとはな」


「お久しぶりです。ヘイグ殿下」


ジェシカは落ち着いた様子で軽く頭を下げ挨拶をする。

彼は第6王子ヘイグ・パリストン。

ジェシカ・ブレストリーの腹違いの兄であり今回の講和会議に同行・参加していた。

こんな大事な会談に同行していただけあり優秀な男ではあるが今晩はいつもの落ち着きや余裕は見られない。

無理も無い。今晩、勇者と魔王が共に死んだ。

明日どころか今すぐにでも足元から燃え上がりそうな状況なのだ。

並みの男であれば情報封鎖すら出来ていなかったであろう。


ヘイグ王子は青ざめた顔に笑顔を浮かべながら自嘲的な調子で彼女たちに扉の先を促した。


「挨拶はいい……とりあえず見てくれ。腰を抜かすなよ。お前の武勇伝は聞いているがな、やはり次元が違う」


「お心遣い感謝します。ですがここへ来ると決めた時から私は覚悟は出来ております」


「……ふむ、ではこちらへ」


そうしてヘイグ自ら禁断の扉を開ける……


部屋には僅かばかりのランプの灯りしか灯っておらず入り口からは何も見えない。

彼女たちが入室すると濃厚な血の香りが鼻腔を劈く。

すでにこの時点で尋常な殺人現場では無いことが察せられる。

2、3歩進んだところでヘイグの制止を受けた。


「……そこで一旦止まれ。現場・・はもう少し奥だが今灯りの量を増やそう。衛兵たち、扉を閉めよ。絶対に誰も通すなよ」


絶対に誰にも見られてはならぬ……

衛兵たちの短い返事とともに扉は固く閉ざされる。

ヘイグが呪文を唱えると壁にかかった全てのランプに灯りが灯った。

そうして──ゆらゆらと揺らめく灯りに死体が2つ浮かび上がる。


死体の1つは頭部から胸にかけて一文字いちもんじに割られたような斬り痕があり、驚愕の表情で剣を右手に掴み天を仰ぎ見て壁に寄り掛かるように事切れていた。

右手には刀身が紅く染まった抜き身の剣が握られていた。

血溜まりの海が出来ており衣服は真っ赤に染まっている。

こちらは写真で確認した勇者のものだろう。


もう1つの死体は数メートル離れた先の石床の血溜まりにうつ伏せになって倒れこんでいる。

ジェシカが確認したところ胸から背に貫通するような斬り痕があり白目を剥いて絶命していた。

特筆すべきことは左腕の手首から先が何かで斬られたようになくなっていた。

こちらも風貌の特徴から資料で確認した魔王のものと断定して間違いないだろう。


「……衛兵が発見した時からこの状態だった。慌てず現場を動かさずすぐさま私の元に報告に来たことは褒めてやってもいいかな」


ヘイグは動揺を必死で抑えるような声でそう言うがやはり震えがみられる。

現場が発見当時のもの同様である事を確認するとジェシカは準備を始める。


「ではさっそくここで検死解剖を行います。よろしいですね?お兄さま。ナナ、解剖キットを」


「はい」


「……よし、頼んだぞ」


ジェシカとナナはゴムで出来た手袋に白いキャップとマスクを嵌めると自ら開発したメスを使ってまずは傷口から調べていく。

勇者の診療記録やプロフィールなどはここに来る間に巨鳥の上で確認している。


「勇者……24歳男性。既往歴なし。腹部の大きな傷跡は魔族との戦いで受けたもの、と」


ジェシカは独自開発したカメラで勇者の死体を映像記録すると傷口をメスで開いていった。


「……頭部への外傷は脳幹に達している。しかし死因と断定せず引き続き検死は続行する……腕や腹部に浅い裂傷が確認できるわね。傷の状態から死亡直前についたものと推定」


「やはり、か。勇者殿は魔王と斬り合って相討ちとなったのだろう?くそっ……想定し得る最悪のケースだ……」


側で見守っていたヘイグが頭を抱えながら嘆息する。

確かにこの現場を見れば大抵の者はそう推理するだろう。

だが……


「そうと断定するのはまだ早いですわ、お兄さま。毒殺や病死の可能性も調べます。それに……いろいろ引っかかりますわ、このご遺体」


「何がおかしいのだ……?私にはよくわからぬが……」


ヘイグは冷や汗を拭いながら首を傾げる。

ジェシカは兄の質問には応えず微笑むと更に大きなメスを手にする。


「これから勇者様の臓器を摘出しますわ。魔王様も同様に解剖します。もし血と臓器を見るのがお嫌でしたら離れていた方がよろしいですよ、ヘイグ殿下」


「……わ、わかった。では頼んだぞ、ジェシカよ」


ヘイグはこの尋常ならざる妹に幾らかの恐怖を覚えながら扉の方へと歩みを進め距離を置き現場から背中を向けた。









1時間半ほどの検死ののちに城の一室でジェシカとナナ、そしてヘイグ3人が集いテーブルに着いていた。

現在時刻は午前4時過ぎ。

もうあと数時間で人が起き出してくる。

事件を解決し早急に善後策を練らなければならない。

この件を公表するべきか秘密裏に処理すべきか。

そんな方針すらまだ定まっていなかった。


ジェシカが検死結果の報告を始める。


「お2人の死亡推定時刻は昨夜午後10時頃から発見された12時前後。これは死後硬直状態や胃の内容物、ご遺体の発見された時間から推定しました」


講和会議の出席メンバーの1日のスケジュールはほぼほぼ決まっていて昨夜の食事の時間は記録にも残っていたのでこれは断定しやすかった。

手にした書類に目をやりながらジェシカは淡々と検死報告を続ける。


「──結論からして勇者様の死因は頭部に受けた斬撃。状態から推測するに一撃で脳幹に達しており即死だったものと思われます」


「……ああ、なんてことだ……!」


ジェシカの報告にヘイグは頭を抱え悲憤の声をあげる。

唇まで紫色になった今にも倒れそうな兄をみて心配になるがジェシカは先を続ける。


「……続けます。魔王様の死因は胸への斬撃。これも一撃で貫通しており即死だったものと思われます。どちらも達人の仕業ですね……」


「くそっ……講和会議はもはや終わりだっ……!もはや続けられぬ……!」


更にヘイグは頭を抱え床へと転がり落ちんばかりの勢いで身を捩った。


「何故です?」


首を傾げながらジェシカがヘイグに問いかけると兄王子は青ざめた顔で声を荒げた。


「決まっておろう⁉︎勇者と魔王が講和中のこの城で斬り結び、共に息絶えたのだぞ⁉︎この事実が明らかにされた瞬間に全面戦争が開始されようぞ……ああ……もうおしまいだ……もういい……夜明け前にお前はここから逃げよ」


ヘイグは顔を覆い悲嘆の声をあげる。

そんな兄王子にジェシカは微笑み返す。

──まだ帰るわけにはいかない。


「お優しいお心遣い感謝します。ですが私は逃げませんし、殿下のその見識は間違っておりますわ」


「ぬ……?どういうことだ……?」


ヘイグが顔をあげジェシカに問い返す。


「お2人の斬り痕から鑑別して両者の殺害の凶器には勇者様の聖剣が用いられたものと断定しました。これは刃に残った細胞や傷跡の型と照合したところから断定した証拠なので間違いないです」


「なにぃ⁉︎両者の殺害に勇者殿の聖剣が用いられたというのか⁉︎これはいったいどういうことだ⁉︎聖剣は勇者しかその手にできないのだぞ?」


その意外な返答にヘイグは拳で机を叩き立ち上がった。

そう、聖剣は剣に勇者と認められたに者にしかその手にすることすら叶わない。


「つまり……勇者様と魔王様の殺害犯は勇者様ということですわ」


「……勇者殿が魔王を殺しその後に自ら命を絶ったということか?」


ヘイグが頭を抱えながら疑問を呈するがジェシカはその推論に首を横に振る。


「いいえ。死体を見たでしょう。勇者様の自殺はありえません。この事件にはお2人を殺害した犯人がいます。我々にはわかるはずです。聖剣は勇者しかその手にするしかできない。ならば犯人は──」



犯人の名を聞いたヘイグが驚愕の表情で声を絞り出す。


「……それは本当か?……しかし、ならば……どうする?どうすればいいのだ……!」


動揺するヘイグを落ち着かせるようにジェシカは笑いかける。


「殿下、私に考えがあります。聞いていただけますか?」











その日の午前10時頃、連日進まない会議が行われる大部屋に集った講和会議の評議員たちが待ちくたびれたようにいつものテーブルについていた。

そう、いつもならば会議がとうに始まっている時間なのだが両陣営のリーダーである勇者と魔王の姿が見えないためその開始が遅れている。


堪りかねたと言った表情で1人の女が声を荒げた。

その表情には焦燥の色が見える。


「ねえ、勇者はどうしたの?そろそろ会議始めたいんだけど」


焦げた茶色の髪をかき上げ苛立った様子の女騎士はエミリー。

勇者とは長い旅路を経て友人以上恋人以下の関係を築くに至る。


「……連日の会議に次ぐ会議で疲れているのだろう。もう少し休ませてやれ。それにしても一向に折り合いがつかないのは誰のせいかな?」


「これっ、やめんかブロン!」


嫌味を言いながら魔王陣営を一瞥するスキンヘッドの男はモンクのブロン。

10以上の拳法を修め数々の魔族を戦場で討ってきた。

それを嗜める白髪の老人は大賢者オッジ。

彼もその魔力と豊富な知識で人魔大戦に貢献してきた。

3人は勇者パーティーの面々であり講和会議の出席メンバーである。


それを聞いた対する向かいのテーブルに座る面々の表情が強張る。


「フン!こちらがどれだけ譲歩してやっていると思っている!勇者はどうした?もうこんな会議などお開きでいいんだぞ?」


癖のある長髪に大きな二本の角を生やした狷介な表情の男は魔王軍の参謀長マルゼノス。

この講和会議で最も強硬な態度を貫いてきた。


「……まあこちらも魔王さま遅刻してるんですけどね〜はあ……まじたりいっすわ」


紫色の髪を伸ばし片目だけを隠した無気力な態度の細身のこの男は魔将軍ドンラルフ。

こう見えて魔王軍一の武力を誇る。

講和会議に関しては全くやる気がない。


「もういいんじゃない?戦争続行で。私もう疲れたわー」


そう言って伸びをする妖艶な長身の女は同じく魔将軍カルナバル。

魔王の長女であり絶大な魔力と武力をもつ。


講和の成就を最も望んでいたのは勇者と魔王であった。

その2人がいないこの場には険悪な空気が流れる。


「……やめんか若僧ども……ここは講和の席ぞ」


大賢者オッジが年の功らしく場を嗜めるが両陣営の険悪なその視線は消えない。


しばらくすると扉前の衛兵の挨拶が聞こえ会議室の扉が開いた。

2人の男女が会議室に入室してくる。

入ってきた男の方はいつもの評議メンバーヘイグ王子だ。


ヘイグの短い挨拶の後にもう一方の少女が頭を下げ面々に挨拶する。


「失礼します。初めまして。本日より協議の場に出席させていただきますアイゼル帝国第15王女ジェシカ・ブレストリーと申します。以後お見知りおきを」



全員が着目したもう一方のまだ幼い、と言った風貌の女は王女を名乗りこの講和会議に出席するという。

鼻で笑う者、訝しむ者、全く興味を持たない者、それぞれが一様の反応を見せるが誰もこの少女に期待する者などいなかった。

しかしジェシカが席に着き発した次の言葉で全員の表情は凍りつく。


「さて、早速皆様に伝えることがございます。この講和会議は開催されてより29日間、一向に進展しないと聞きました。こうなっては致し方ない、と最も平和を願う勇者様と魔王様は東の塔にお2人で籠られて自身たちのみの話し合いで講和条件を練る、と仰っておられます。お2人のご意志を尊重し講和の内容をお任せしよう、と思うのですがいかがでしょうか?」


すぐさま机を叩き立ち上がり激昂したのは女騎士エミリーだった。

その瞳は怒りの色に燃え目の前のジェシカを射殺さんという勢いだった。


「ふっざけんじゃないわよ……!聞いてないわ!そんなこと!勇者を今すぐここに呼んできなさい!」


王女と名乗るジェシカに対してもエミリーは怒りの余り高圧的な態度をとる。

彼女は数年前に魔族との戦争で父を亡くしており、講和には元来乗り気ではなかった。


次に声をあげた魔参謀マルゼノスは冷静な様子だったが声と表情には激しい怒りが見え隠れしていた。


「俄かには信じられませんね。魔王様は何も相談無しで重要案件を決められる方ではございません。私から出向きますので一度会わせてもらえませんか?」


「ははっ!まじうける!アンタ信用されてねーんじゃねーの?」


マルゼノスは茶化すドンラルフを射殺しそうな目で睨む。


意外な展開に会議室は俄かに騒めきはじめた。


ジェシカはよく通る声で一同に向き合う。


「本当です。お2人が1番和平を望んでいたことはよくご存知でしょう?どうかご着席ください」


会議室はしん、と静まり返り激昂していた2人も渋々着席する。

ジェシカは丁寧に頭をさげると話を続ける。


「感謝します。では落ち着いてご静聴願います。まず先ほどお2人の決められた条件としては3つございます。皆様にはこの案件について詰めていただきたいのです」


渋々といった様子で評議員は先を促す。


「……では読み上げます。『一つ、帝国、魔王国ともに戦争の損害賠償を請求しないこと。二つ、工業地帯ルースベルトは帝国と魔王国の共同経営とすること。三つ、勇者は魔王の娘のいずれかと婚姻すること』。ひとまずは以上です」


評議員たちとしては急な展開であった。

確かに落とし所としてはこれが無難なところではある。

しかし今の今まで議案に上ったこともない案件まであり即決というわけにもいかなかった。


「……はあ?こんなことを勇者と魔王だけで決めたって言うの?嘘をつきなさい!」


机と椅子を蹴り飛ばしながら憤怒の表情で再び立ち上がったのは女騎士エミリーだった。

魔族への積年の恨みだけではない。

3番目の条件は彼女にとって寝耳に水で受け入れ難いものであった。


「本当です。いい落とし所だとは思いますが。私も兄もこの案には賛同しております」


「ふざっけんなよっ……!2人がこの案を私たちから隔離したところで決めたっての?法螺も大概にしなさいよ……!」


今にも飛びかからん勢いでエミリーはジェシカを睨むがこの王女は寸分の怯みも見せない。


「法螺ではありません。評議員の皆様の裁可を頂けなければ私の権限を持って評議員の変更をお願いする所存です」


「だまれっ!2人が話し合いできるわけないでしょうが……!」


ジェシカの強硬な態度にエミリーはさらに激昂する。


「何故です?私は先ほどお2人からこの案件を手渡されたのです」


エミリーは一筋の涙を流しながら椅子を蹴り飛ばした。

その絶叫は会議室を震わせる。


「2人はとっくに死んでるからだよ!昨夜見たのよ!地下で!2人の死体を!騙って講和を成そうというつもり?それともこれは陰謀かしら?」


評議員たちから驚愕の声が上がる。


「なぁーにぃー‼︎」


「それは本当か⁉︎えらいことだぞ!」


「バカなっ!魔王様が……!」


「ははっ!超ウケる!」


「ふぅーん……パパ死んだの?」


まるで折り込み済みといった様子でジェシカは扉の方に手で合図を送る。

すると衛兵達がぞろぞろと入室しエミリーを取り囲んだ。


「ただいまの発言……聞き逃せませんね、エミリー様。何故お2人が亡くなっていることを貴女が知っておられるのか。情報は封鎖していたはずです。少しお話お聞かせ願えますか」


「このっ……!世間知らずの小娘がっ……!」


悔しがりながらも絶叫するがエミリーはたちまちのうちに拘束された。

涙で溢れる目で睨みつけるエミリーにジェシカは少し歩み寄る。


「魔王様の左腕の行方も宜しければお聞かせください。では評議員の皆様、結果的に騙してしまってごめんなさい。後日すぐにでも講和を仕切り直させて頂きますのでどうかご容赦を。では」


深々と頭を下げジェシカは呆然とする評議員たちを背に会議室を後にする。










コツコツ、と暗闇に足音が響き渡る。

一つのランプの灯りだけが闇を蠢き床を探っているようであった。


「……あの無能王女め、何が天才か。ふん、上手いこといったわ」


男の独り言が暗闇の部屋に響く。

昨夜殺人が行われたこの部屋だが死体は運びだされ今は何もない。

ゴソゴソと床を弄る物音が暗闇に響いた。


「……しかし、アレは、アレだけは始末しておかねば……」


そうして暗闇の男の動きが止まりやがてガラガラと鎖を引くような音が聞こえる。


「フンッ!」


男が勢いよく床に隠されていた鎖を引くと壁の一部に引き戸ができ隠し扉が表れた。

男は立ち上がりその扉を開き中へと歩みを進める。


やがてその隠し部屋の奥に無造作に置かれた白い布の包みがランプの灯りに照らされる。

男は駆け寄りその包みを抱え上げた。


「忌々しい……さてどう処分してやろうか……」


男がその包みを手に取った時だった。

やって来た方の部屋の灯りが一斉に灯り人の気配が俄かに増える。


やがてコツコツ、と幾人かの足音が聞こえると男のいる隠し扉を開いた。


「こんばんは。バルマー様。早速で申し訳ないですがその包みをお見せくださいますか?」


「ジェシカ……ブレストリー……」


灯りを手にしたジェシカとナナがそこには立っていた。


男、いや元勇者バルマーはその決定的な証拠品を自身の手に掴んだまま固まっていた。


「それは魔王様の左手首ですね?昨夜あなたが聖剣によって切り落とし咄嗟にこの隠し扉に隠蔽した。この城の仕掛けを知り尽くした貴方だからできたことですね」


「……なんのことだ。犯人はエミリーだったのだろう?」


ジェシカの質問にバルマーは無表情で答える。


「いいえ。私は犯人は貴方だと判っていました。この事件の犯人は聖剣を使って勇者様と魔王様を殺害し、遺体の一部を隠し扉に隠しました。そんなことが出来るのは元勇者で城の隠し部屋の存在を知っている貴方しかいないのですよ、バルマー様」


じっと見つめるジェシカの瞳から目を逸らしバルマーはふっと嗤う。


「……状況証拠にしか過ぎませんな。それにこの魔王の手首も今偶々発見しただけですよ、王女さま」


自身の所有するブツを魔王の手首であることは認め白い包みを一部開く。

そこには確かに何者かの手首があった。

その手首は何かを握りこんでいるように拳をつくっていた。


「ではその手首をこちらにお渡しください。なぜ貴方がその遺体を切り裂き隠さなければならなかったか、私から説明しましょう」


そう言ってジェシカは無造作にバルマーに歩み寄る。


堪え切れなくなったのかバルマーは腰の剣を抜刀した。


「ククク……この頭でっかちの小娘があっ‼︎」


その瞬間、薄闇にバルマーの身体が一回転すると床に叩きつけられる激しい音が響いた。


「……ぐっ、ぐはぁっ……?」


ジェシカに寄り添っていたナナがバルマーを投げ飛ばし倒れこんだ身体を踏みつけ手首を極め完全にホールドしたのだ。

バルマーは呻き声をあげることしかできなかった。


「死後硬直で開きませんね。申し訳ありません、魔王様、切り開かせて頂きますね。よっと……」


ジェシカは何事もなかったかのように取り落とされた魔王の手首を掴み上げるとメスでその遺体の指を切断する。

中からは血に塗れた金属の勲章が表れた。


「これが動かぬ証拠です。先代陛下が貴方の為に作られた勲章です。なぜ魔王様の手首が貴方だけが持つはずの勲章を握りこんでいるのでしょうか?」


地面に組み伏せられたままバルマーは憤怒の表情で怒号を発する。


「お前らに何がわかるっ……!魔族によって故郷を焼かれ家族を奪われた者の憎しみと悲しみが‼︎この戦争は終わらせてはならぬっ!魔族を殺し尽くすまでなあっ!講和だと?クソ食らえだっ‼︎」


ジェシカは憐れむような目でバルマーの顔を覗き込んだ。


「その不遜な態度と荒々しさが父の怒りを買い、いち衛兵の立場まで落とされた、とは聞いています。ですが私は貴方を全力で否定します。平和を求め戦った2人の命を奪った老害の言葉など響きません」


「小娘ぇぇぇ……!」


絶叫するバルマーを取り囲むように衛兵が駆け寄ってきた。

やがて完全に拘束されたのを確認するとヘイグがバルマーの前に歩み出た。


「バルマーよ……残念だ。追って沙汰を伝える。1番頑丈な牢に連行せよ」


ヘイグの命令によって恨みがましい目をしたバルマーが連行される。

勇者と魔王の殺害犯だ。

それ相応の罰が下るだろう。


幾分落ち着きを取り戻したヘイグがジェシカに向き合った。


「ジェシカよ、なぜわざわざエミリーを1度逮捕したのだ?」


「バルマー様をこうして嵌める為です。エミリー様が恋人を探してこの部屋に来ていたことは指紋の痕跡から判っていました。悪いことをしましたね。魔王様の手首には何かが隠されているからこそ犯人は隠蔽工作をしたのだと思っていました。しかしどこに隠したのかは分からない。バルマー様を張っていて良かったですね」


ジェシカはバルマーを油断させ遺体の回収に誘導する為、敢えて1度はエミリーを逮捕した。

評議員たちには集まってもらい事件が解決するまで暴発しないようにもう一度話し合いをしている。


「何よりお手柄だ、ジェシカ。しかし、講和はどうする?こちらの不手際で勇者と魔王が殺されてしまった事実は変わりないぞ」


ジェシカは父王から手渡された書類を兄に見せる。

それは緊急にしたためられたものであるがこのレブルターク城に於ける全権委任状だ。


「私の手元にはこんなものがあります。なんとか和平に漕ぎ着けて見せましょう。ただし、もう今晩は休ませて頂きますが」


ジェシカは拗れに拗れたこの講和会議を自分の手でなんとしてでも締結させるつもりでいた。


「わかった。お前ならできるだろう。今日はゆっくり休めジェシカ」


ヘイグは苦笑しながらも安堵の表情を見せた。










「……全く、忙しいったらありゃしない……安請け合いすべきじゃなかったわ」


「もう少しですよ、ジェシカさま。美味しいケーキが焼けますからね」


書類の山に向き合いながら筆を走らせるジェシカにナナは隣の台所から声をかける。


事件の解決からひと月。

現在は帝国側、魔王国側双方ともに戦争のしがらみのない人材を評議員に登用して協議を行っている。

調整役はジェシカだ。


「くっそっ……どうして人は偉くなるほど面子ってものに拘るのかしら」


以前よりは協議は進行している。

しかしお互いの主張が食い違い、中々結論は出そうにない。


「人は登りつめれば登るほど多くの責任を伴います。それは多くの人の願いです。一つ一つに折り合いをつけるのが偉い人の役目ですよ、ジェシカさま」


オーブンを覗き込み焼き加減を確認しながらナナはジェシカを諭す。


「はあ〜〜分かってはいますけど投げ出したくなりますわ……終わったら当分働きませんからね!」


ペンを机に放り出しジェシカは伸びをする。

いい加減疲労はピークに達している。


「ええ、いっそ2人で洋菓子店でも開きましょうか?」


「それもいいですね。お茶とお菓子に囲まれる生活なんて夢のようですわ」


ジェシカはその提案に目を輝かせる。

賢い彼女もこういう時だけは童女の頃に還る。


しかしこの大事件を解決した彼女の「探偵王女」という異名は売れに売れ、数々の事件に引っ張りだこになるのだがそれはまた別のお話。

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