白石姫乃という女が大嫌い。
私は白石姫乃という女と名前が嫌いだ。
見た目と真逆の姫乃なんて可愛い名前は、私を押さえつけるただの名前に過ぎない。
中学時代。
クラスメイトから嘲笑うかのように呼ばれる
「お姫様」
というあだ名。
イジメられているなんて誰にも言えなかった。
メイクなんてしたことが無かった。
眉毛も剃った事なんて無かった。
自分の服装なんて気にしたことが無かった。
髪も、寝癖がついていても起きたらブラシでとけばそれでいいと思っていた。
自分の見た目に興味なんてなかった。
そんな不安も食べれば私の心は満たされた。
だって最初から自分はどう頑張ったって、ブスのままだと諦めていたから。
だけど。そんな私とは正反対の、大好きだった憧れの地下アイドルがメイドカフェで働くことになりましたと、ブログで報告していたのをキッカケに私もいつかメイドカフェで働くことが私の夢になっていた。
アニメが大好きで。
アイドルが大好きで。
でも、憧れや夢だけではどうしようもなくて。
鏡を見ながら、やっぱり無理なんだと諦めていた。
だけど、ある日。
憧れの地下アイドルが写真と共に過去の自分はこんなにもブスでしたと暴露しているブログが投稿された。
あんなにもキラキラしていて、とても可愛いと思っていた彼女とはあまりにもかけ離れた豚のような女がそこには載っていた。
だけど彼女はこう言った。
「私も、地下アイドルやメイドになる前はこんなにも太っていてブスでした。だけど、女の子は頑張れば誰でも可愛くなれます。あなたの頑張り次第なんです。私は私が嫌いです。だけど、頑張っていない卑屈な私はもっと嫌いです!」
と。
ああ、この子も私と同じなんだと思った。
同時に、頑張ってもいないのに最初から諦めていた自分のことが大嫌いになった。
ダイエットを頑張って、メイクを勉強して、見た目や服装にも気をつけた。
高校1年の春。
自分史上最高に可愛いと思える自分になった。
念願のメイドカフェの面接も無事に合格した。
入学式ですれ違った男子に言われた「あの子可愛くね?」の言葉に、もう過去のブスな私じゃない!と自信が持てた。
今の私なら誰にだって勝てる。
だって人一倍努力したんだから。
「なんて呼べばいい?」
高校に入学してできた、初めての友達にこう聞かれた。
「あ...」
一瞬。中学時代のあだ名が頭をよぎった。
だけど、それはもう過去の私。
だから私は顔を上げて笑顔でこう言った。
「ヒメって呼んで!」
こうしてヒメは、白石姫乃という過去の自分から解放されたのだった。
ー登場人物まとめー
【主人公】久賀 大智
高校2年生/17歳/
大阪のメイドカフェ〝DOLCE〟に通う。
推しである人気NO,1メイドの〝ヒメ〟にバイト代をほぼ全額貢いでいるクソオタク。
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【新人メイド】本多 愛葉〝音〟
高校2年生/17歳/
〝DOLCE〟に新しく入った新人メイド。
以前からメイドへの強い憧れがあり、メイドへのこだわりとご主人様への想いはピカイチ。NO,1であるヒメ(姫乃)を尊敬している。
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【NO,1メイド】白石 姫乃〝ヒメ〟
高校3年生/18歳/
〝DOLCE〟の人気NO,1メイド。
ぶりっ子だがかなり性格は腹黒いらしい。
最近入った新人の音(愛葉)の人気に嫉妬と焦りを感じている。
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【友人】江山 剛
高校2年生/17歳
大智のクラスメイトであり親友でありオタク仲間でもある。
大智と違い特に推しは作らず、DOLCE自体が好きで店に通っているタイプのオタク。
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