憧れの人。
私の名前は本多 愛葉。
今日は私の話をしようと思う。
最近、以前から私の憧れであったメイドカフェでのバイトをし始めた。
きっかけは高校1年の夏。
あの頃の私は普通のコンビニでバイトをしていた。
そもそもメイドカフェでのバイトなんて考えたこともなかった。
むしろ、メイドカフェという場所に対しての嫌悪感があったくらいだった。
あんな場所に通っている客の心情なんて理解できなかったし、働いている女の子達のことも正直下に見ていた部分もあったのかもしれない。
それが世間一般からみたメイドカフェのイメージだったのだから。
だけどある日。
用事で日本橋のオタロードと呼ばれる道を通ることになった私は、道の端でチラシを配っている彼女らを横目に歩いていた。
ふと気になる声が聞こえ振り向くと、そこにいたのは男性2人に絡まれているまだ入ったばかりのDOLCEのヒメさんだった。
「君いくつ?」
「萌え萌えきゅんしてくんないの?やってよ!」
「俺行ったことないんだよね〜どんなとこ?」
正直メイドカフェなんて全く興味無さそうな、若いチャラチャラした男性2人は馬鹿にしたようにヘラヘラ笑いながらヒメさんに執拗に話しかけていた。
「え、何?メイドなのにやってくれないの?」
「てかこの服やばくない?メイドって芋っぽいブスばっかりなイメージなんだけど?」
「客来んの?」
ガハハと笑う2人に流石の私も少し苛立ちを覚え始め、私も向こうに行って言い返してやろうかと思った。
だけどその時。
真っ直ぐ目の前の2人を見て、ヒメさんはこれでもかと言わんばかりにニッコリと笑ってこう言った。
「ご帰宅されたことないんですね!でも、是非1度足を運んでみてくださいねっ!メイドさんたちの良さがとーっても伝わりますよっ!私たちメイドは皆ご主人様のお帰りをお待ちしていますから♪」
あれだけ罵声を浴びせられ続けて、きっとイライラしているはずなのに、その場を収めようと謝るわけでもなく逆に言い返すわけでもない。
彼女は〝バイト〟をしている自分より、
〝メイド〟である自分を選んだのだ。
私は今までの自分を恥じた。
媚びを売り遊び感覚で楽に稼いでいるんだなんて思っていたけれど、彼女達にはメイドという立場でありご主人様を楽しませるためのエンターテイナーであるということ。
嫌なことがあっても笑顔で対応する精神は、普通に仕事をする人達となんら変わりないのだ。
そんなヒメさんのトリコになってしまった私は、
あれからネットでヒメさんの情報を集め、DOLCEにも通い、グッズを集めイベントにも参加した。
程なくして、高校2年に上がったのをきっかけに1年間働いたコンビニのバイトを辞めて、私もヒメさんと働きたいという思いからDOLCEの面接を受けたのだった。
そう。ヒメさんは私にとって憧れの人だ。
ー登場人物まとめー
【主人公】久賀 大智
高校2年生/17歳/
大阪のメイドカフェ〝DOLCE〟に通う。
推しである人気NO,1メイドの〝ヒメ〟にバイト代をほぼ全額貢いでいるクソオタク。
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【新人メイド】本多 愛葉〝音〟
高校2年生/17歳/
〝DOLCE〟に新しく入った新人メイド。
以前からメイドへの強い憧れがあり、メイドへのこだわりとご主人様への想いはピカイチ。NO,1であるヒメ(姫乃)を尊敬している。
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【NO,1メイド】白石 姫乃〝ヒメ〟
高校3年生/18歳/
〝DOLCE〟の人気NO,1メイド。
ぶりっ子だがかなり性格は腹黒いらしい。
最近入った新人の音(愛葉)の人気に嫉妬と焦りを感じている。
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【友人】江山 剛
高校2年生/17歳
大智のクラスメイトであり親友でありオタク仲間でもある。
大智と違い特に推しは作らず、DOLCE自体が好きで店に通っているタイプのオタク。
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