本多さんの正体。
日直の当番で、休みだったもう1人の代わりに本多さんと2人きりになってしまった。
「最っっっっ悪よ。」
「エッ そんなに??」
そんなに嫌われていたのか。とガックリきたが、初めて話したキッカケが顔面ボールだと思うとまぁ確かに納得が行く。
俺としては同じヒメちゃんオタクとして仲良くしたいのだが、そうはいかないらしい。
「しょうが無いだろ?先生に任された仕事なんだから...」
「無駄口叩く前に早く終わらせましょ?私、早く帰りたいので。」
「はいはい。わかってますよ...」
呆れるように俺はこう答えた。
前回話して分かったが、彼女はかなり捻くれ者らしい。
というか、何故か俺を目の敵にしているのだ。
そのせいで、可愛い音ちゃんのチェキも未だに返してもらえていない。
俺がヘタレのせいもあるが、せっかく2人きりなんだ。今日こそ返してもらおう。
「そ、そう言えばさ」
「ずっとタイミング逃して聞けなかったけど...前に俺がチェキ見せた時に持って行っちゃったDOLCEの音ちゃんのチェキ...アレまだ持ってる?」
よし!言ったぞ!俺!
「持ってないわよ!」
「え?!」
「あんなもの、捨てたわ。」
「ええええぇぇ!何勝手に捨ててるんだよ!」
「あなた、ヒメさん推しなんでしょう?それなら他のメイドのチェキなんて必要無いでしょ!」
「それとこれとは関係無いだろ?!別にだからって...持ってたらいけないなんてこと無いだろ?!」
「と、とにかく!捨てたわよ!早く手を動かしなさい!!」
「はぁ?んな理不尽な...」
あんなにしっかり者の音ちゃんとは正反対だ!俺の大事なチェキを勝手に捨てるだなんて...。
こいつとは仲良くなれそうに無い!
そう思ったのだった。
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言い合いをしながらも、なんとか掃除を終えたが、本多さんは何も言わず先に急いで帰ってしまった。
そろそろ自分も帰ろうかとしたその時、
本多さんがスマホを忘れていることに気付いた。
「またか...本多さん意外と忘れっぽいのか?」
俺は急いで本多さんの後を追った。
駅まで走り、なんとか本多さんを見つけた俺は声をかけようとまた走ったのだが、ギリギリのところで電車に乗って行ってしまった。
「マジかよ...明日土曜日だぞ...渡さないとこれ、俺が怒られそうだな...」
だが、ふと本多さんが乗った電車の方面を見た。
「ん?待てよ、もしかしたら...」
日本橋方面に行く電車だ。
しかも今日はヒメちゃんの出勤日。
ヒメちゃんオタクの本多さんならもしかするとDOLCEに行ったのかも!
そう思った俺は、一か八か日本橋へと向かった。
「ここの角を曲がればDOLCEだな!」
俺は急いでDOLCEへと向かう。
すると、前の方に本多さんの歩く後ろ姿が見えた。
「本多さん!」
「え?」
驚いた顔で振り向いた本多さん。
俺は大声でこう言った。
「スマホ!忘れてたぞ!!」
DOLCEの前で中に入ろうとしていた本多さんをギリギリで引き留め、走って駆け寄った。
「ちょ、あなた...」
するとその時だった。
「あれー?音ちゃん!遅かったね!早く着替えなよ!」
何か言いかけた本多さんを遮り、中から出てきた別のメイドが本多さんに話しかけた。
「ちょっと!!!!」
「へ?」
俺は固まった。
「今...なんて?」
今なんて言った?
本多さんに向かって...今なんと?
「ごめん、まずった?」
メイドさんのアハハ...と気まずそうに笑う声だけがその場で聞こえた。
ー登場人物まとめー
【主人公】久賀 大智
高校2年生/17歳/
大阪のメイドカフェ〝DOLCE〟に通う。
推しである人気NO,1メイドの〝ヒメ〟にバイト代をほぼ全額貢いでいるクソオタク。
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【新人メイド】本多 愛葉〝音〟
高校2年生/17歳/
〝DOLCE〟に新しく入った新人メイド。
以前からメイドへの強い憧れがあり、メイドへのこだわりとご主人様への想いはピカイチ。NO,1であるヒメ(姫乃)を尊敬している。
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【NO,1メイド】白石 姫乃〝ヒメ〟
高校3年生/18歳/
〝DOLCE〟の人気NO,1メイド。
ぶりっ子だがかなり性格は腹黒いらしい。
最近入った新人の音(愛葉)の人気に嫉妬と焦りを感じている。
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【友人】江山 剛
高校2年生/17歳
大智のクラスメイトであり親友でありオタク仲間でもある。
大智と違い特に推しは作らず、DOLCE自体が好きで店に通っているタイプのオタク。
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【友人】元井 咲良
高校2年生/17歳
愛葉の親友で、唯一メイドとして働いていることを知っている存在。
面倒くさがり屋で、楽観的な性格だが意外としっかり者な一面も。