文学賞ごとの面白さ分析
私は読んだ本すべてを面白かった順に順位を付けてランキングしている。2023年4月2日の時点で日本語小説(一般書含む)を1041作品読んでいた。それをもとに、文学賞ごとの面白さの比較を行ったので、それを公開したい。
まず、1041作のうち234作が何らかの文学賞を受賞しており、全体の22%にあたる。そのうち、五作以上を読んだ文学賞をすべて取り上げて、具体的に作品名を示して面白さの順位をまとめてみた。
芥川賞
24位 日蝕・一月物語
156位 道化師の蝶
323位 ゲルマニウムの夜・王国記1
488位 太陽の季節
559位 赤頭巾ちゃん気をつけて
615位 スクラップアンドビルド
674位 火花
678位 コンビニ人間
830位 限りなく透明に近いブルー
883位 アメリカン・スクール
888位 苦役列車
899位 死者の奢り・飼育
977位 杳子・妻籠
981位 蛍川・泥の川
1026位 笙野頼子三冠小説集
1037位 蹴りたい背中
平均順位 689位
1041作中 16作
直木賞
35位 地図と拳
71位 空中ブランコ
86位 サラバ!
255位 GO
294位 私が殺した少女
313位 プラナリア
707位 恋
817位 容疑者Xの献身
829位 赤目四十八滝心中未遂
1011位 テロリストのパラソル
平均順位 441位
1041作中 10作
ハヤカワSFコンテスト
25位 最後にして最初の人類
56位 オーラリメイカー
67位 人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル
81位 みずは無間
120位 構造素子
245位 ダイダロス
246位 ヒュレーの海
317位 ユートロニカのこちら側
321位 ヴィンダンス・エンジン
407位 標本作家
408位 スターシェイカー
432位 サーキット・スイッチャー
433位 トランスヒューマンガンマ線バースト童話集
569位 天象の檻
691位 コヌルトピア
702位 世界の終わりの壁際で
734位 ニルヤの島
741位 世界の涯ての夏
平均順位 366位
1041作中 18作
谷崎潤一郎賞
39位 沈黙
260位 東京自叙伝
265位 万延元年のフットボール
549位 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
929位 センセイの鞄
978位 告白(町田康)
平均順位 504位
1041作中 6作
山本周五郎賞
140位 夜は短し歩けよ乙女
174位 ゲームの王国
528位 ふがいない僕は空を見た
535位 TUGUMI
1006位 閉鎖病棟
1010位 火車
平均順位 565位
1041作中 6作
三島由紀夫賞
21位 阿修羅ガール
116位 クォンタム・ファミリーズ
426位 伯爵夫人
944位 あらゆる場所に花束は……
1026位 笙野頼子三冠小説集
平均順位 506位
1041作中 5作
星雲賞
51位 プリズム
79位 くるぐる使い
85位 ハイブリッドチャイルド
126位 ゴルディアスの結び目
159位 地球はプレインヨーグルト
275位 太陽の簒奪者
290位 七瀬ふたたび
297位 異常論文
327位 終わりなき索敵
482位 日本沈没
561位 石の血脈
750位 象られた力
799位 結晶星団
825位 敵は海賊・海賊版
839位 グリーンレクイエム
875位 霊長類南へ
891位 言葉使い師
895位 グインサーガ
966位 戦闘妖精雪風
969位 日本以外全部沈没
990位 沈黙のフライバイ
平均順位 576位
1041作中 20作
日本SF大賞
34位 チグリスとユーフラテス
68位 上弦の月を喰らう獅子
84位 戦争を演じた神々たちⅠ
337位 天冥の標
425位 文字禍
685位 皆勤の徒
686位 盤上の夜
698位 アドバード
737位 ハーモニー
749位 象られた力
763位 ペンギンハイウェイ
865位 かめくん
896位 太陽風交点
986位 ヴィーナスシティ
987位 宝石泥棒
1037位 戦争を演じた神々たちⅡ
平均順位 627位
1041作中 16作
日本ファンタジーノベル大賞
133位 後宮小説
299位 世界の果てへの庭
404位 パガージマヌパナス わが島の話
450位 太陽の塔
854位 隣のずこずこ
平均順位 428位
1041作中 5作
創元SF短篇賞
190位 機械はなぜ祈るか
264位 拡張幻想
392位 うどん、キツネつきの
449位 原色の想像力
459位 Genecis 時間飼ってみた
478位 量子回廊
588位 記憶翻訳者、いつか光になる
628位 天駆せよ法勝寺
685位 皆勤の徒
686位 盤上の夜
687位 七十四秒の旋律と孤独
741位 あがり
791位 極光星群
793位 さよならの儀式
801位 原色の想像力2
810位 半分世界
871位 ランドスケープの夏の定理
941位 折り紙衛星の伝説
972位 結晶銀河
平均順位 643位
1041作中 19作
読売文学賞
181位 インザ・ミソスープ
435位 ねじまき鳥クロニクル
553位 高丘親王航海記
629位 意識と本質
765位 博士の愛した数式
平均順位 512位
1041作中 5作
メフィスト賞
44位 六枚のとんかつ
119位 〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件
429位 クビキリサイクル
677位 すべてがFになる
893位 煙か土か食い物
平均順位 432位
1041作中 5作
日本推理作家協会賞
7位 魍魎の匣
475位 秘密
482位 日本沈没
550位 時計館の殺人
772位 ジョーカー・ゲーム
892位 赤朽葉家の伝説
900位 新宿鮫
1000位 龍は眠る
1018位 ガダラの豚
1040位 独白するユニバーサル横メルカトル
平均順位 713位
1041作中 10作
日本冒険小説協会大賞
150位 今夜、すべてのバーで
376位 神々の山嶺
624位 不夜城
733位 深夜特急(1巻だけ。2巻までで受賞)
754位 影武者徳川家康
平均順位 527位
1041作中 5作
吉川英治文学新人賞
52位 総門谷
150位 今夜、すべてのバーで
422位 国語入試問題必勝法
487位 皆月
556位 恋愛中毒
624位 不夜城
639位 アヒルと鴨のコインロッカー
772位 ジョーカー・ゲーム
900位 新宿鮫
916位 ミノタウロス
919位 夜のピクニック
933位 子産
979位 本所深川ふしぎ草紙
平均順位 596位
1041作中 14作
以上、ぜんぶで15個の文学賞の面白さの平均順位をサンプル抽出によって行った。面白さは私の個人的な主観によるものであり、別の人は異なる好みをしている場合もたくさんあるだろう。しかし、☆5評価などという主観的な体性感覚による評価に私は疑問を持っていて、いくらかのまとまった数を鑑賞しているものによるデータ分析を見てみたかった。他にやっている人がいないので、私が自分でこのような読書ランキングを作ってみたのである。
なぜこんな低い順位なんだと疑問に思い、怒る人もいるかもしれないが、それは、もっと面白い本が他にあるからである。
それでは、それぞれの文学賞を面白かった順に並べてみよう。
文学賞の面白さの平均順位の比較
1位 ハヤカワSFコンテスト 平均順位 366位
2位 日本ファンタジーノベル大賞 平均順位 428位
3位 メフィスト賞 平均順位 432位
4位 直木賞 平均順位 441位
5位 谷崎潤一郎賞 平均順位 504位
6位 三島由紀夫賞 平均順位 506位
7位 読売文学賞 平均順位 512位
8位 日本冒険小説協会大賞 平均順位 527位
9位 山本周五郎賞 平均順位 565位
10位 星雲賞 平均順位 576位
11位 吉川英治文学新人賞 平均順位 596位
12位 日本SF大賞 平均順位 627位
13位 創元SF短篇賞 平均順位 643位
14位 芥川賞 平均順位 689位
15位 日本推理作家協会賞 平均順位 713位
どうだろうか。私はSF小説が好きなので、無意識にSF小説の順位が高くなっている傾向があるかもしれない。しかし、誰にも好きな分野はあるものだろう。
ハヤカワSFコンテスト、日本ファンタジーノベル大賞、メフィスト賞の三つの賞は新人賞である。これらの新人賞は、直木賞より面白いという結果になった。
作家にデビューするのはたいへんであり、中堅作家の文学賞より新人賞の方が難易度が高いという結果が見て取れる。
芥川賞は、我が国で最も有名な文学賞であるが、有名であるがゆえに簡単に面白いものを受賞させない。下から二番目になるのは、芥川賞の権威にどう影響するのかわからないが、芥川賞にも面白い小説はたくさんあり、文学賞の順位が低いからといって、その受賞作がダメなわけではない。私が芥川賞より直木賞を好む読者であることも、この文学賞比較の分析から見てとれる。
私は短編小説が好きなのだが、我が国では短篇小説の文学賞はあまり盛り上がっていないようである。小説の長さは内容によって決まるべきであり、最も好まれる長さが一冊の本の長さにそろうことであるのは、書籍の流通によって決まっていることであり、物語の本質とは異なっていると思うが、難しい問題である。短編小説は、私にとっても、面白さの順位をつけるのが難しいのである。
文学賞を受賞していない名作もたくさんあることがこの分析からもわかるだろう。受賞せず、候補作や最終選考などにとどまった小説にも、面白いものはある。今回は、候補作や最終選考作の分析までは行っていない。
小説の面白さのデータは、2023年4月2日の時点でのものを使っており、そのデータはあまりにも厖大な量になるので、見せることはできない。現在における面白さランキングは、「記憶喪失した男の読んだ小説2000冊の面白かったランキング(随時書き変えで更新)」にあるので、それを見ていただければ幸いである。
文学賞は、あくまでも、本を探す際の補助的なものだと思うが、文学賞は本を探す時に役に立つものであり、その分析を公開できることは嬉しい。この分析を読んで不愉快な気持ちになる人もいるかもしれないが、読書家の善意によるものであるので、どうか許してほしい。それでは、みなさん、良い読書を。




