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リフレ・デフレ論争を十年後に評価する

 2012年に第二次安倍政権が発足してから、十年がたった。アベノミクスといわれた経済現象をいま、簡単にであるが評価してみたい。久しぶりの意欲作の記事だ。

 まず、注目する数字を挙げる。


  2012年

民間預貯金残高:1193兆円

日本政府債務残高:1112兆円

日銀の国債引き受け金額:120兆円

国民総生産(GDP):517兆円

日本の国民総所得:349兆円

ドル円為替相場:86.35円(1ドルあたり)



  2020年

民間預貯金残高:1901兆円

日本政府債務残高:1212兆円

日銀の国債引き受け金額:461兆円

国民総生産(GDP)(2019年):533兆円

日本の国民総所得(2019年):401兆円

ドル円為替相場:107円(1ドルあたり)



 これを見ればわかるように、国民総所得は2012年の349兆円から2019年の401兆円に52兆円増えた。日本の給与上昇率は14.7%である。日本人の年収は、ものすごく増えていることがわかる。


 しかし、これを疑問視する数値がある。

 日銀の国債引き受けにとられた金額がいくらになるのか。日銀の国債引き受け額は、2012年の120兆円から2020年(この年数は不正確。正確な年度がわからない)の461兆円に増えている。

 日本の国民総所得を五年間で364兆円増えているが、その期間に日銀の国債引き受け金額が361兆円増えている。

 日本人は、アベノミクスにおいて、日銀に361兆円を借金させた代わりに、364兆円の給与の上昇を得た。


 日本の民間預貯金残高は、2012年の1193兆円から、2020年には1901兆円に増えている。これは、日本人の資産が708兆円増えたことを意味する。

 リフレ政策はリフレーションを目指したものだったが、財源を日銀の国債引き受け金額に見出して、日本人の資産を708兆円増やした。

 日銀が民間預貯金残高にまで政府債務を引き受けてよいのなら、689兆円分をまだ新しく日本政府が国債を発行できる余裕があることになったことになる。この新しく作られた689兆円の余裕が、七年間日本人が仕事をした蓄積によるものなのか、日本政府が経済運営を賢明にしたために生み出されたものなのかをおれは知りたい。


 政府が民間預貯金残高まで借金をしてもよいというのは、政府が銀行に指示を出すことにより、政府国債を償却できることを意味する。そのような意味を持つ基準線である。

 政府がGDPまで借金をしてもよいというのは、政府債務が破綻した場合、一年間働けば返済することのできる基準線を意味する。


 日銀の国債引き受け額がGDPに近づいたため、次は為替から金額を持ってこようとしたのか、ドル円相場で円安がつづいている。


2012年の日本のGDP:517兆円

2012年の日本のドル円相場:86.35円(1ドルあたり)

2019年の日本のGDP:533兆円

2019年の日本のドル円相場:112.10円(1ドルあたり)


 なので、2012年度のドル資産を基準に計算して、

2012年の日本のGDP:446兆4295億円

2019年の日本のGDP:597兆493億円

差額:151兆635億円


 これは、2012年度のドル資産に比べて、日本人の一年間の生産力が151兆635億円増えたことを意味する。

 為替は貿易と関係しており、貿易を計算するのはめんどうくさそうで考えたくないが、この151兆635億円は、ドル円為替の相場に吸収されたのか、日本人が働いて築いた資産なのかの区別が難しい。

 ドル円相場に151兆円が吸収されたのなら、151兆円分の貨幣が商品とサーヴィスに対して増えていることになり、ドルと円の総量が増え、日本とアメリカ合衆国の物価が151兆円分インフレするはずである。

 151兆円分の生産量が増えていなければである。しかし、特にそこまでインフレしたという話は聞いていない。


 岸田政権は、積極財政に舵を切っている。日本人の資産が708兆円増えており、ドル円相場でも151兆円分の生産力が増えているのなら、そのような判断もあるかもしれない。

 おれは緊縮財政派だが、積極財政でも日本は負けていないという数値が結論として出てきた。

 日本の経済政策の十年間のまとめはこんな感じになるようだ。

 おれはまだ積極財政派になれないが、積極財政をつづけるのに日本に余力はあると、この計算では出ている。



追記。

 2012年から2020年までに民間預貯金残高が708兆円も増えたが、これはいったいなぜなのか。政府国債が361兆円増えているが、それで、なぜ、民間預貯金残高が708兆円も増えたのか。ひょっとすると、これは、政府の負債に計上される361兆円と、日銀の資産としての政府国債361兆円が信用創造され、民間預貯金残高に708兆円という資産の増加が生まれたのかもしれない。361兆円の信用創造が発生すれば722兆円という金額になるはずだが、14兆円分どこかに消えている。少し数字がズレるが、361兆円を二倍にした数値分だけ民間預貯金残高が増えているのは、これは政府国債が信用創造されたためだとおれは考える。



追追記。

 信用創造は、銀行が預貯金を預けてもらった金額を、貸し出すことによって発生する。

 日本政府の国債が日銀の引き受けによって信用創造されるには、日銀が政府債務の金額を貸し出さなければ発生しない。おそらく、日銀は、政府債務をもとに貸し出しは行っていない。ゆえに、政府国債が日銀の国債引き受け額で信用創造されていたとするおれの経済分析はまちがっていた。

 まちがった追記を追加して申し訳ない。


 貨幣は労働の裏付けを持たなければ意味を持たない。

 日本の民間預貯金残高は、過去に働いた日本の国民の労働の価値の蓄積である。過去に働いた者が、これから受け取ることのできる労働の量を意味する。

 日本の政府債務残高は、日本政府が国債の権利者に対して労働をする量を意味する。

 日銀の国債引き受け金額は、日本政府が働いて返済すべき金額を、日銀のために働いてもらうことを意味する。

 これが本来の経済的意味であるはずなのだが、政府が積極的に借金をして国家を運営することがどのような意味を持つのか。これが賢明な経済運営というものなのだろうか。


 政府の財政支出は、政府と民間の労働の配分を変えているだけのはずである。政府が国債をたくさん発行して、政府のする仕事を増やしているのは、政府の仕事の量を増やしているという意味を持つ。民間より政府に優れた人材が集まっているという判断からであろう。

 政府が最も賢い組織だと考える国家は、課税が暴走して破綻する。

 それはとても危険なことである。

 日本が政府債務を増やして国家運営をすることを、おれはまだどのような経済的な意味があるのか理解することができない。ここに書いたことまでは理解したつもりである。


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