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サマセット・モームの「世界の十大小説」読破

 おれは、サマセット・モームの「世界の十大小説」の十作品をすべて読破しました。オースティン「高慢と偏見」だけは、セス・グレアム=スミスが改作した「高慢と偏見とゾンビ」で読んでいることをお許しください。いやあ、荘厳な十作でしたね。最初に読んだのはドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」で、2007年頃に読んだと思う。想像していたよりも面白かったので、ちょっと文学というやつにも手を出してみるかという気になりました。

 サマセット・モームの「世界の十大小説」をすべて読むのに、十五年間くらいかかったことになりますね。「世界の十大小説」というのは、サマセット・モームの読書エッセイの書名なのですが、その本は読んでいません。題名だけ聞いて、少しずつ読んでいたものです。小説をテーマに沿って狙い通りに読書を行うのは、想像以上に難しいことでして、「世界の十大小説」も、たった27冊ですが、これをちゃんと狙い通りに読破しようとすると十五年間かかります。他にも、同じ作者の小説を全部読むとかやろうとすると、二十年くらいかかります。おれは、ヴォネガットの長編12作をすべて読破しているけど、それを読破するのに大学の頃から初めて二十年間かかりました。

 サマセット・モームの「世界の十大小説」の面白かった順位を付けると以下のようになります。以下にあるのは、おれが今までに読んだ590作の翻訳小説(サイエンスフィクションを除いたもの。サイエンスフィクションはサイエンスフィクションだけで順位を付けているので別になっている)の中における面白かった順位です。


33位:トルストイ「戦争と平和」

61位:ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

128位:スタンダール「赤と黒」

203位:ディケンズ「デイヴィッド・コパーフィールド」

233位:フィールディング「トム・ジョウンズ」

295位:オースティン、セス・グレアム=スミス「高慢と偏見とゾンビ」

354位:メルヴィル「白鯨」

355位:バルザック「ゴリオ爺さん」

561位:ブロンテ姉妹「嵐が丘」

570位:フローベール「ボヴァリー夫人」

以上、全590作品の中で。


 この順位を見ればわかるかもしれないですけど、サマセット・モームの「世界の十大小説」の面白さは、平均が真ん中になるくらいに均等に分布しています。それなら、批評なんていらないじゃないかということになるかもしれないですけど、いや、たぶん、指標となる批評がないと読む小説の面白さはもっと下がると思います。おれは暇があれば、面白そうな本を探している人種なので、おれが読もうとした本は、広告の中で面白そうな見せ方がしてある本であるはずなのです。玉石混交の中から、おれが面白そうなのを見抜いて選書しています。それなのに、面白さが平均値に分布するなんて、何も考えていないようなものじゃないかと思う人もいるかもしれないですけど、偏屈なおれの趣味嗜好であるとはいえ、順張り思考のおれの選書はそんなに下手ではないはずです。いやあ、読書が趣味だといっても、面白い本に遭遇しないとやっぱり疲れて、嫌になってしまうものなのですよ。ちゃんと面白い本が見つかるから、ここまで読書をつづけているというのは確かなのです。ちなみに、これまでに2373冊を読んでいます。

 小説の分野には、主流文学というものがあり、サマセット・モームの「世界の十大小説」は主流文学という分野になります。日本には、純文学という分野がありますが、主流文学と純文学は厳密には少しちがうものです。主流文学の描く物語は、人生であり、恋愛模様であります(純文学の定義は、秘密なんですよね。純文学の定義に合う小説を書くのは難しいです。定義を聞けば、ああ、そういうものかと思うことでしょう)。

 サマセット・モームの「世界の十大小説」は、フィールディングの「トム・ジョウンズ」だけが十八世紀で、残りの九作はすべて十九世紀に書かれた小説です。

 サマセット・モームの「世界の十大小説」の知名度は高く、売上を十倍にしたと思われるくらいに宣伝効果がありました。それなら、二十世紀の小説で十大小説を選んでくれという需要は高いと思うのですが、くだらない小説を選んでしまう危険の方が大きく、まあ、たいていの「二十世紀の十大小説」が相手にされないでしょう。おれは空想科学小説読みであり、文学読みではないので、おれが二十世紀の十大小説を選ぶつもりはないのですが、むかしは、自分で「二十世紀の十大小説」を選ぶのは夢でした。自分で選ばなければならないと思うくらいに、世間に出まわっている小説の広告に疑問を持っていました。

 しかし、サマセット・モームの「世界の十大小説」を読み終えた感慨は大きいですね。トルストイとドストエフスキーのどちらが面白いのか、むかしから知りたかったのですが、実際に読んだところ、おれはトルストイを選びました。日本では、トルストイよりドストエフスキーのが一般には人気が高いそうです。

 そして、こんなに有名なのに手に入らないフィールディングの「トム・ジョウンズ」。いったいどんな物語なんだろうと好奇心がありましたが、そうくるか、という内容でした。文学に本格なし。文学は異端ばかり。すべての名作が唯一無二の異端の書物。やはり、名作とはそういうものです。人生の正解なんて誰も知らないと思うのですが、文学は変格ばかりです。

 まあ、そういうわけで、今日は、サマセット・モームの「世界の十大小説」を読破した記念すべき日なのです。読破できて気分がいい。

 これからは、十九世紀の十大小説を読むより、二十世紀の十大小説を探す作業をした方がよさそうな気がします。二十世紀に書かれた膨大な小説群から十作を選べといわれると、どんな有名作家の有名小説でも心もとなく、いったい、これからの世代の読者に読んでもらうべき小説は何なのかとても難しいですよ。二十世紀の十大小説を選ぼうとした試みはいくつかあるものの、ほとんど受け入れられていません。二十世紀の十大小説を選ぶとなると、「失われた時を求めて」「やし酒飲み」「一九八四年」「ノルウェイの森」、他に何があるでしょうか。二十一世紀になって二十年以上がたちましたが、まだ二十世紀の小説にどんな傑作があったのか、紹介し合うことが充分に行われていないんじゃないでしょうかね。売上が十倍になるというなら、考えに考え抜いた十作を誰かに選んでほしいものですね。アメリカ文学も知りたいし、イスラム文学も知りたい。面白い十大小説が決まったら、ついつい気になって、五十年後のみんながそれを読んでしまうのかもしれないですね。

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