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シ・かけられた罠!!

・マスクのようなもの→ベール 訂正しました。

 俺は常に監視されている。

 いつどこで誰か見ているか分からない。その誰かがネットに俺の情報を上げれば忽ち俺の行動が世に知らされる。それだけでない。それを行い者が一人二人、と増え続け常に監視されているようになる。ネットを見れば俺の行動が逐一報告されている。



 全国に知られた殺人事件の犯人が"俺"ではないかと疑われた。



 フードの奥を見た人がいたようだ。ただし、追いかけたのも俺である。「犯人の一人」との任務認知だけでなく「追いかけたが捕まえられなかった人」としても認知されている。追いかけた人を犯人と見間違えたのではないかという声が多く出た。

 それでも疑問の念は晴れず俺を監視し、犯行を行う所を目撃しようとする者が不特定多数いる。


 ツイッターに「東京に双子がいる!」と呟かれてから、その双子の一人が大阪で犯行し、それを双子の俺が追いかけたという憶測を呼んでいるが、何しろ犯行のあった大阪と東京は離れすぎていて事実ではないことは殆どの人は分かっていた。

 だが、憶測は憶測を呼び巡り巡って犯人の一人は俺ではないかと疑われ始めた。

 ただし、それはネットの界隈の話であり、現実では俺はただの一個人として日常の生活を営んでいる。今までと変わった所は絶えず監視されるようになったことでしかない。

 取り敢えず、俺は犯人ではないし犯行する気もないので家の中などプライバシーに関わる事柄に踏み込まなければそれでいい。俺には関係ないことだ。犯人は俺ではない三人の俺なのだから。



 ネットに書かれた俺の情報を見ているだけで、いつの間にか会社へと着いていた。

 俺はスマホを鞄に終い、仕事をする脳へと切り替えた。



「太一!仕事は覚えたか?」

 この会社に務めて約二ヶ月。まだ不慣れな事もあるが多少は慣れてきた。

「まあまあ覚えてきました!!」

「それじゃあ、ノルマ分頑張るんだぞ!!」


 部長は励ましの言葉をかけたすぐに、俺から離れていった。俺はその言葉に「はい!」と返事して黙々と作業に取り掛かった。

 小学校でよく使われる糊を作る作業だ。俺的には何でもいい。たまたま俺が務めたのが文房具に関する仕事で、たまたま糊を作るだけのことだった。


「た~いちっ!」

 作業が一段落終わるとすぐに八茂が肩を組んできた。取り敢えず休憩の時間だ。

 彼は俺の一()上なのだが、俺はタメで呼んでいる。それは同期だからで、俺と八茂はフレンドリーな仲だ。

「お前、あの事件の犯人だと疑われてんぞ!」

「ネットの一部でな。結局、やっていないのは事実なんだ!どんなに監視したって意味がないってのに」

 全くだ。俺をどんなに監視したって欲しい情報は入らない。もし真相を明かしたいのなら非現実的なことを受け入れなければならない。俺には俺以外の奴が非現実的なことを受け入れることは出来ないと思っている。

「まあ、監視されてるってことは些細なミスでも炎上騒ぎになるからな!気をつけろよ!!」

「八茂もなっ!!」


 休憩の時間も終わり、ノルマをこなす為に再び作業に戻った。

 仕事が終わる頃には夕焼けが美しく映っていた。帰宅ラッシュの満員電車で疲れた身体がさらに疲弊する。家に着く頃にはくったくただ。


 俺は独りで何もすることがなくただただ明日へ向けて準備するのみだった。



◆◆◆



 梅雨が過ぎて夏になった。

 異常気象のせいなのか前年度よりも暑いと感じる。この夏の間は仕事服は半袖となり、ネクタイもつけなくて良くなった。いわゆる、クールビズだ。俺はクールビズに感謝しながら日々を過ごした。

 そして、七月の中旬へと入りたてた頃には汗が滴る程に暑くなった。半袖は当たり前。そこに、団扇か扇子か手持ち用の扇風機がなければ外を出歩けなくなった。家内ではクーラーをつけっぱなしじゃないと熱中症になるぐらいだ。


 仕事の無い休みの日は外へ出掛ける気力もなく家でクーラーの涼しい風を受けながらのんびりする。外へは極力出たくない。こんな猛暑はごめんだ!!まだ七月の中旬だというのに、七月の下旬から八月の中旬頃まではさらに猛暑となると考えると余計に動く気力が失われる。


 何でもいいからこの暑さから解放されたいな……とフローリングに転がりながら呟いていた。冷房の風が床を冷やす。まさにそこは冷蔵庫で冷やされたようにひんやりとしていて気持ち良かった。



 その時にチャイム音がする。

 俺は天国かと思ってしまう程の気持ちいい床から離れ地獄かと思う外へと通じる玄関へ向かった。

 玄関の丸穴から外を覗くとそこには見知らぬ女性が立っていた。イスラム教の女性でそれも戒厳が厳しい方だと分かる。

 真っ黒な服装に身を包みベールで鼻や口元を隠す。誰かを目だけで判断するしかないのだが目だけで誰かを判断することは困難である。こんな真夏によくそんな服装になれるな…と思いながら玄関の戸を開けた。

「何のようですか?」

「俺だ!LQ-449の捨て猫だ!!」

 その者は何とアポ電強盗殺人の犯人である内の一人で、俺の分身であった。

 イスラームにいる一部の女性が着ている黒に覆われた服装。女性は肌を見せてはいけないという宗教上の理由から着られる服を男である太一が着ているのだ。あまりにも衝撃でド肝を抜かれた。


「何で男なのにそんな服装してるんだ!?」

「そうした方が自由に動ける!ここがドイツじゃなくて良かったよ!!」

「まあいい、まずは家に上がっていい!外はあまりにも暑いだろうし」

「いや、ここで手短に話すからここで話そう」


 折角クーラーのついた涼しい部屋へと上がるよう促したのに断るとは……「熱中症になっても知らんぞ!!」と心の中でぶつけた。


「それで何でここに来たんだ?」

「俺らの内一人は遂にサラ金に追われて殺された。そして、分身しその二人は過重労働を強いられている。残る俺らももうすぐその労働をやらされる……」

 死なない身体を活かして過労死となる仕事が出来る。それも、安く働かせれる。だが、それをやる方は地獄である。

「────で?」

「俺らはこれから殺人を起こして金を手に入れる!!」


 また、懲りずに人を殺すのか。金のために……

 俺はそんなこと絶対に許せない!


「それで、《本物》に殺人を一緒に手伝わないかと誘いに来た。何せ一人仲間が減っているからな。どうだ、得た金は等分に分ける。悪い話じゃないだろ?」


 金のために殺人を起こす?

 そのために俺に協力を求めるためにここへ来たのか?


 冗談じゃない────!!


「俺はそんなのに協力しない。いや、絶対にさせない!!!」

「そう来たか。だがもう俺は戻れない!!作戦は決行だ。じゃあな《本物》」


 偽物の俺は何処かへ向けて走り出した。俺はそいつを捕まえ、殺人を起こせないように止めるため追う。

 同じ《俺》であるのに運動神経に違いが起きていた。明らかに走りにくい服装であるのに速い偽物。毎日鍛えているのだろう。一方、俺は近頃運動をしていない。言うなれば会社の飲み会などで肥った気がする。差は縮まることはなかった。

 縮まらないけど離されもしなかった。必死に喰らいつこうと全速力で走った。


 彼はどこへ行くのだろうか。人の気配のない小路地を走っていく。複雑に進んでいくせいでこの一体が迷路のように感じた。


 そして、俺は必死に走ったが、、偽物が路地を曲がった所で見失ってしまった。



 この暑さが解放されたと思うほど無の境地で走った。その反動で俺は大量の汗が噴き出してきた。さっきまで気にしていなかった汗が今では鬱陶しい。直接届く日光が俺を射す。

 もう息が切れた。ハアハアといいながら片手でコンクリートの壁にもたれた。もう動けない。

 誰もいない小さな路地の中で俺は一人息を切らしていた。これ以上走ったら嘔吐する。


 誰もいないはずのこの路地に青色の制服を来た二人組が俺のすぐあとにやって来た。その二人組は俺の近くに来ると否や俺の腕を掴み引っ張った。



「14:23分。傷害罪の罪で現行犯逮捕(・・・・・)!」



 すぐさま彼らは懐の手錠を俺の腕にかけた。俺は無抵抗のまま捕まってしまった。青色の制服……彼らは警察だ。俺は何も悪いことはしていない。それも現行犯?俺が何をやったというんだ?


 頭の真っ白となった。何が起きているのか分からない。ただ、予想外なことが起きていることだけが理解出来た。



◆◆◆



 何故こんな悲劇が起きたのか────

 それは偽物二人による俺を排除する戦略が働いていたのだ。これは俺の知らない作戦だ。


 イスラム教の戒厳の強い女性の服装をしていた偽物をLQ-736、もう一人の残った偽物をLQ-105としよう。


 LQ-736は俺の済むアパートに行き、俺を呼び出した。彼らは《本物》が必ず殺人を止めようと追いかけることなど想定済みだった。

 その間、LQ-105は俺を監視するために隠れていた人に近づいた。探偵なのかもしれないしただ興味本位で俺の行動を監視していたのかもしれない。そんな者に近づくLQ-105。

 さぞかし驚いただろう。家にいるはずの俺が実は背後にいたのだから。そして、LQ-105はその者に暴行。そして、重大な怪我を負わせた。


【傷害罪-15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金もしくはその両方が課せられる】


 そして、警察が来るまで暴行を加え、警察が来たら最初(はな)から決めている目的地に向かって走り出した。

 逃走中でハンターが逃走者を容易く捕まえるのは逃げている敵を捕まえるからだ。何処に逃げるか目的もなくただ逃げるだけの逃走者。さらに、背後との距離を見定め、前からの敵に注意するためにスピードが落ちてしまう。だから捕まってしまう。

 しかし、LQ-105は違った。目的地に向かってただただ全速力で走るだけだった。


 そして、複雑な路地を抜けて警察を上手く誘導してから隠れた。警察が追った先にはLQ-105ではなくLQ-133である《俺》がいた。


 チェイスの末に捕らえられた俺は現行犯逮捕となったのだ。



 何故、彼らはこの計画をたてたのか?

 それは犯行するためには注目されていると出来ないからだ。佐藤太一らしき存在はバレればすぐにネットに挙げられる。まさに、監視されている状態だ。その中では犯行は起こせない。

 犯行を起こせずに金を得れなかった一人の偽物は過重労働を強制された。残された二人は金のためにまずは監視状態から解き放たれるように作戦を立てたのだ。


 無事、本物の俺は捕まり彼らは再び悪に手を染めることが出来るようになった。

 まさに、彼らは廃れた人生の成り果てを表しているように見えた。



 無実な俺は────彼らの罠にかかり警察に身柄を拘束されてしまったのだった。

次回予告


 捕えられた俺は裁判へ!そして、俺に課せられた罰の重さとは?


 そして、囚人としての囚獄生活が幕を開けた。


 逃げることは不可能?常に監視され、監視を潜り抜けても壁がある。

 俺に希望はあるのか────?



次回はあるはずだと思う。

  to be continued

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