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っ・ぼみは開いて、そして──散る

 火の粉を零しながら刀進んでいく。

 刀は太一目掛けて上へと振りかぶった。炎を纏うこの刀が人間の身体を切る。


 風が桜吹雪を引き起こした。




 もう後悔しない──

 太一は前、命を賭して私を助けてくれた。結局死ななかったけど、私はとことん後悔した。

 太一に危険が及んだ時、今度は私が命を懸けようと動いた。それは間違いで、太一を一人失う結果を作ってしまった。

 今度こそ──私は太一を守る!!私は命を賭けて守りたい。守らなければ後悔する。後悔したらもう生きようとは思えなくなりそうだ。


 私は太一の前にきた。

 耳元で囁く。


「私達って結婚したじゃん!?その次は子どもを産んで一緒に育てて……なーっんてのをしたかったなぁ。」

 私の腕が太一の身体に抱きつく。

「私は先に向こうへ行くけど……絶対に太一君のこと待ってる!!何年、何十年、何百年、ずっと待ってる──だから、」


 「私を向かいに来てね────」


 身体が冷たい。

 桃色の雪が身体を冷やす。意識も朦朧として瞳に映る全てがぼやけていく。唯一、太一だけが目に映っていた。

「俺は絶対に向かいに行く!いや違う、一緒に生きよう!!気を確りして!!」

「もう…無理かな!だからさ、太一君には私の分まで生きて……欲しいの」


 温かい身体に包まれながら私は違う世界に吸い込まれていった。



◇◇◇



 冷たい身体が俺に絡みつく。

 脈はない。呼吸も、意識も、もうこの世に葉月の存在は……ない。

 瞳から雫が溢れ出していく。


「絶対に足掻いてやる!どんなに奈落へと落ちたって……俺は理不尽な世界に抗ってやる!!そして、最後にお前を助けに行く!絶対に!!」

 強く誓った。

 俺は目の前にいる葉月を優しく強く抱きしめた。


「僕は……本当に──」

「俺らと同じ犯罪者の仲間入りだな」

 糸を弛める。

 黒服、大樹、はこの瞬間に目を奪われ動いていなかった。まさに雪によって凍らされたように。

「いや、これは事故だ!正義の執行を邪魔したそいつが悪いんだ!!」

「混乱してるな。こりゃあ、一番厄介で危険な奴だな」

 糸が大樹を襲う。

 糸に触れた刀。刀の炎が糸を伝い燃え進んでいく。糸は無残にも溶かされてしまった。

 糸を伝って炎は瀧を襲う。瀧は急いで糸を解き、逃げ出した。着火した火は地面に転がることで消火した。が、もう瀧は火傷を負って動けなくなってしまった。

「僕の仕事は終わってない」

 太一に近づいていく大樹。

 大樹の眼は揺るがない信念で固まっていた。


 太一は葉月を抱えて動かない。

 すぐに大樹は太一のすぐ近くだ。刀を強く握る。


  バシャン──


 水が刀の火を消した。

 大樹の後ろにはバケツを持った隆志が立っていた。

「頭を冷やせ!!……大樹」

 隆志はバケツを投げ捨てる。


 濡れた服。湿ったせいでライターの火はつかない。苛立ちながらポケットへとしまう。

「負けたのに何で来たの?」

「親として……の義務があってな──」

「僕は僕のやり方でいく!そんなもの関係ない!!」

 隆志は大樹の胸ぐらを掴んだ。

 片手には握り拳を作ったが、すぐに解いた。

「物事には何でもやっていいことと悪いことがある。大樹に悪いことをさせないのが親の役目というのに……間に合わなかった。これは私の責任だ!!だから、その責任を持って大樹を止める!」

 隆志は深呼吸をついた。

 隆志は悲しい瞳で大樹を見つめていた。

「悪いのは向こうだ!犯罪者を庇ったんだ!!愚か者を庇ったあいつが悪い……」


「「犯罪者は確かに愚か者。けどな、一番愚かなのは罪を犯したのにその行為に気付かない者だ!!」」


 土は水を吸い地面の中へと落ちていく。

「もう──使命を一人背負う必要はない。一人背負えば道を間違いかねない。だから、何世代にも渡って着実に背負っていったんだ。」

「だからって、使命を放棄する気はない……。僕はもう子どもじゃないんだ!説教される気はない!!」

「そうか、、、私と大樹とはもう対岸の敵か」


 虚しい独り言が空に響いた。

 そして、隆志は徐に口を開き始めた。


「今日は私達の負けだ!!殺人を起こしたことは言わない。代わりに、今日は退いてくれないか?」

 大樹は苦笑した。

「今のを全てチャラにするってこと?」

「そうだ!?いい条件だろ?ここで逃して、明日以降また太一さんを殺しに来るか……それとも、ここで殺して明日以降牢屋で太一さんを殺せない生活を送るか」

「なるほど──仕方ないね。その約束を契約しよう」


 その一言を機に、黒服は退いた。

 この家の外で偵察をする黒服の車。明日また捕まえにくるようだ。

 猶予は──今日まで!!

 そのお陰で大樹の奇襲から助けられた。


 冬秀は自慢の力で穴を掘る。瀧の火傷したために見ることしか出来ず、監督に徹していた。

 そして、俺らは墓を作り葉月をそこに埋めた。


 そこに向かってしゃがんで手を合わせた。

「來愛……「絶対に向かいに行く!!」だから、それまで待ってて欲しい。俺は負けない!!」


 俺は立ち上がって、空を眺めた。

 その時、隆志が近づいてきた。

「来て欲しい場所があるんだ!!」

 俺は隆志に連れられるまま工事現場の中へと入っていった。


◇◇◇


 冬秀はある男のことを考えていた。

「あいつは作戦を成功させてるのか?」


 その男は今、汚れた工場の中にいた。

 手に持つパイプで中にいるヤンキーを半殺しにしていく。そして、その男は何十人もいるクローンの所へ来ていた。


「助けに来たぜ!」

 タダ働きで過労死し、分身を増やす太一。そのような無理難題を太一に強いていた者共をその太一は倒していた。


「俺は佐藤太一による《《新世界》》を拓こうと思っている。俺は今お前らを勧誘しに来た!どうだ?一緒に作らないか?新世界!!」


 そして、彼らは闇の中へと隠れ見えなくなった。

次回予告


 まさかの衝撃の展開────!?


 誰も想像出来ない意外な展開が君を待つ?


 思わぬ展開!?

to be continued

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