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な・らされた警告の行方とは──

 乾いた茶色の土が桃色の花びらに覆われている。

 落ちた桜葉を踏みしめる。切羽詰まったことを知らしめるように颯爽に走る。靴に引き寄せられた桜葉は小さく地面スレスレを舞った。


 俺らを待ち伏せしていた数十の黒服の猛者共。黒服は俺を捕まえようと動くが、冬秀と瀧が黒服の相手をした。

 剛腕の腕が黒服の男をなぎ倒していく。

「俺は今も警察から追われる身柄。暴力も恐くはない!!」

 飛ばされた黒服は地面に打ち付けられた。少し柔らかな土が傷をつけることはなかった。

「フォーメーション ふゆひで(h)ひとり(h)ハントする(h) を実行」と一人の黒服。

 それに応じて多くの猛者共は冬秀を狙う。

 冬秀を狙うことで俺の逃げ道が空いた。が、勿論全員が冬秀を狙うのではなく2、3名の黒服が立ち塞がる。


「そんなんで俺を止められるとでも?」

 冬秀は黒服の集団に突撃した。吹き飛ぶ者もいれば束になって飛ばされずにいた者もいる。

 タックルされなかった者達が冬秀の腕や身体を強く握り捕獲しようとする。

「もう終わりだ。脱獄犯雀坂冬秀。」

「俺はこんなもんでくたばらん!暴走族一怪力だった力を見せてやるよ!!」

 冬秀は片足を軸にして思いっきり回った。絡みつく黒服は思わず飛ばされた。

「まだまだぁ!!俺は新世界を作り……差別のない社会を作り直す!そのために俺は負けられん!!!」

 束となる敵に懇親の殴りをお見舞いした。目の前の敵は吹き飛ばされる。が、まだ立ち上がる。


「それじゃあ、彼らは俺が止めとくよ!!」

 透明で目には見えない糸。その糸が邪魔する敵に絡みつく。

 俺の目の前の道は冬秀と瀧によって開けられた。俺は葉月とともに進んだ。


「俺は──まだ!!差別され続けた……そんな醜い社会を打ち壊すまで負けられな……」

 冬秀は束となって襲う黒服に推され重心が後ろへと向かっていった。それを堪えようとする冬秀だが……。多勢に無勢、冬秀は地面に打ち付けられた。

「これで終わりだ!!」

 多くの黒服が冬秀を上から押さえつける。数に圧された冬秀の身体は動かなくなっていた。さらに、一部の黒服は標的を冬秀から俺に変えた。


「今度は俺が相手するよ~」

 瀧は糸を操って黒服を縛る。糸は何重にも重なると彼らは動けなくなる。

「さて、今回のマジックは急に動けなくなるという超能力です!!」

 瀧は手元の糸を手馴れた動きで操っていく。

 黒服は何にも出来ずに地面を転がるだけだったはず……


 ──が、懐に小さなナイフを仕込んでいた黒服の男が糸を切り瀧に近づく。瀧は思わず手元を速く動かした。

 敵は手元のナイフで虚を切りながら進んでいく。その途中で糸も切っている。いつしか瀧との距離は人一人分となる。

「詐欺ってのは詐欺相手に本当の目的がバレないように誘導することが求められる。それはマジシャンに求められる騙す力と同じ。」

 目の前にいる黒服は動けなくなった。

  「はい……『サイコキネシス』!!!」

 動けない敵は虚しくひらひらと舞う桜吹雪に耐えるしかなかった。

「何故だ?」

「蜘蛛の巣に突っ込んだのはあなた!少しだけ糸で邪魔をしておいて、俺は糸の罠を作ることをしていた。」


「なんせマジシャンなんで騙すのは得意なんでね!!」


 微風が吹く。

 木々は緩やかなになびき桜吹雪を起こした。桜吹雪が目の前の道を隠した。

「さあ、行け!太一……とその彼女!!」

 瀧の先導で俺は前に続く道を進もうとしていた時。後ろから足音が聞こえた。少し柔らかい土を強く踏みしめる音。


  「行かせないよ───!!」


 桜吹雪が緩くなった。その奥から大樹が歩いてくる。

 桃色の葉が大樹を照らしていた。

 桜並木の囁き。それと同時に鞘から刀が抜かれる。銀に輝くその刀は近くの桜を投影し桃色に光っていた。

「何故?隆志が時間稼ぎをしてくれたはずじゃ!!?」

 驚きが隠せない。早く逃げないと……いや、逃げても追いつかれたら工事現場の中にいても意味がない。

「僕は父さんを越えてきた。僕には代々受け継がれた栄光なる使命がある。それを全うするため、僕は越す必要があった、だから越した」

 懐からライターを取り出す。

 左手で火をつけた。その火を刀に合わせる。

「僕が受け継いだのは何世代にも渡って人を傷つける外敵の存在"こけし"を殺すこと。そして、今僕がその最後。僕が"こけし"を───終わらせる!!」

 火は刀を伝い鉄の部分は炎で被われた。

「それは人を危険に晒す悪"こけし"の退治。そしてそれは、正義の執行。」

 余った火が地面に垂れる。落ちた火は地面にある雑草を焦がした。煙は立ち上がらない。刀は下を向いている。



 「「「マトリョーシカ人間、及び"こけし"を体内に持つ君には死んで貰うよ!!────正義のために!!!」」」



 再び風が吹いた。

 桜の花びらが落ちていく。

 舞い散る桜吹雪を溶かしていく炎の刀。紅いに染まるその刀は秘めたる怪物を飼い慣らしているように見えた。


「危ないやつだ!昔の俺みたいだ。いや、今も変わらないか……」

 瀧は哀しく呟く。

「何にも悪いことはやってないと……ただ、俺なりに生きていただけ。だけど、気付いたら俺は警察に捕まっていた。そこでやっと気付いた。俺は悪になっていたのだと……」

 それを聞いた冬秀は捕えられながらも口を開く。

「そうだな。俺は目の前の差別を無視出来なかった。差別されてた女を助けるために差別をしていた男を殴った。俺は正義(ただしい)と思って行動した。けれど、それは悪だった。」

「僕が正義面した悪だと言うのか?僕は完全なる正義さ!!」

 自信満々で答える。

 鋭い刃が俺に向く。先端は下を向いた。

 大樹は構えた。より瞬発的に、より速く、より速攻的に……

「焔煉を含んだ炎の刀に君が触れれば即死。この攻撃は一撃で終わらせる。」



 奥義、神青

 超

 闘龍門

 切り



 土が何度も強く踏まれる。

 一瞬にして大樹の間合い────


 赤く舞う火の粉が桜の花びらを焦がしていく。紅蓮の炎が桜を耀かせた。

 血は燃ゆり塊まり飛翔することはなかった。


「えっ──、葉月?」

「今度は私が身代わりになる番だね!」


 ピンク色の雪が降り注ぐ。

 無音となった。雪を受けて意識の遠のく葉月を強く抱き締めた。

 涙が込み上がってくる。


 桃雪が騒動の音を消して静寂にさせた────

次回予告


 哀しさが溢れ出す……

 桜が降り注ぎ、涙が溢れ出す。


 葉月と交わす約束とは────?


 そして、物語はどうなる?

 太一、隆志、大樹……最後に笑うのは!?誰だ!!?


 次回!!

to be continued

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