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る・守番した冬秀の選択────

 これは俺が東京に向かってから大樹との争いを行っている時に冬秀達のいる拠点で起きた話である。



 椿裕翔はネットカフェでパソコンをいじっていた。汚れた内装に手で数える程しかないパソコンの台数。見ただけでこの店は潰れかけである。

 裕翔はパソコンで一人の人物を追っていた。

 パソコンで『山田 シャナ』と打ち込む。が、思しい情報は見つからない。

 次にTwitterを取り入れて開く。

 刑務所に入る前に持っていた情報──家の場所や通っている学校、年齢などを頼りに情報の網を手繰り寄せる。一つ一つ情報を得ていき、ついに欲しい情報を見つけた。

 パソコンのデータを消し閉じるとその店から出ていった。



「俺は行くべきとこっがあるからさ!後は任せるわ!!」

 裕翔は冬秀に告げると拠点から出ていった。冬秀は「分かった」と言って見送った。

 サングラスと軽い変装を施した裕翔。彼は怪しい行動を取らず大胆に電車へと乗った。

 目的地まで着くと、裕翔は路地裏の影に隠れたのだった。


 夕方となり日が暮れる。

 二人の女子高生が裕翔を通り過ぎた。

 裕翔は気付かれないように距離を開けて尾行した。


「じゃあね~。また明日~」とシャナとその友達は手を振って別れた。

 シャナは一人で道を歩いた。そして、路地裏に近い所を通り過ぎようとする。裕翔は気配を消して音を立てずに走っていく。

 裕翔はシャナの真後ろに来た。シャナはふと振り向く間もなく口はきつく封じられた。

 強く引っ張られたシャナは路地裏へ連れてかれた。


「懐かしい!元気にしてた?マイハニー!!」

 裕翔はサングラスを取り、軽い変装を解いた。それを見たシャナは恐怖の表情を浮かべていた。

 裕翔の手を離させようと応戦するが敵わない。低い音で「ん"~」としか声が出ず助けを呼べない。

「あの時は中三だっけ?今は高三?見せてっ、成長したシャナちゃんをさ~!!」

 恐怖で顔が歪む。

 裕翔相手に何も出来ない。


 裕翔は制服の首元に手をかけた。その時、一人の影が裕翔の背後に立っていた。夕焼けが警察を照らす。


  「やはり────脱走犯の一人だったか。怪しいとかけてきた住民の電話があって良かったよ!!」


 裕翔の肩に手を乗せる男。貫禄のある青色の制服をきた男だった。

 裕翔はその男を見るとすぐにその場から逃げ出そうとしたが、警察の手が裕翔を捕らえその場で手錠をかけられた。


「大丈夫かい?お嬢ちゃん?」

 警察はシャナに優しく問いかけた。その後、手錠をかけて抵抗出来なくなった裕翔を見た。

「18:20分────」

 裕翔は絶望の顔を浮かべていた。



◇◇◇



 暗闇の中にデスクのようなテーブルがある。そのテーブルを挟んで二つの椅子が置いてある。その椅子に座る裕翔と警察。テーブルに置かれたライトが暗闇を照らす。

 小さな部屋には部屋の門番らしき人物と目の前の警察、裕翔しかいなかったが、部屋の外に沢山の警察が働いている。

「で?他の脱走犯はどこにいる?本当の事を答えたらお前の罪を少し軽くしてやる!!」

 真っ直ぐ問いかける警察に裕翔は徐に口を開けた。

「分かったよ!それじゃあ、京都にさ……部落民がよく住んでる場所って知ってっか?」

 裕翔は暗闇の中で仲間を売った。




 裕翔の逮捕は忽ち世間に広まった。

 冬秀は勿論、その悪い知らせを入手していた。だが、もう二つつ冬秀には情報が伝えられた。両方とも良い知らせである。

 一つは太一が無事に生きている。そして、彼は安全な場所で匿われている。

 その情報を変装をしていた瀧が目の前で伝えている。瀧は実は生きていた。これが二つ目の良い知らせだ。


 裕翔には悪いが、もう裕翔を助けに行く手立てはない。つまり、助けることは出来ない。そんなこと無謀だと知っていた。だから、裕翔のことは諦めようと分切りをつけた。

「それじゃあ、太一の所へ行くか?」

「ああ、勿論だ!!」

 冬秀は世話になった人達に挨拶をして回る。その後、瀧の元で変装を施した後、瀧の盗んだ車で太一のいる所へと向かった。



◆◆◆



「椿裕翔が捕まった折に、危険を感じて拠点を変えたのかもな」

「そのセンが正しいでしょう」

 警察は裕翔から得た情報を頼りに太一らの居場所を特定しようと動いていた。


 調べてから一週間が経った。

 その頃には大樹の怪我は治っていた。大樹もその捜査の情報を入手した。


「椿裕翔が捕まってから、特定の場所での出入りをした車を調べましたところ、怪しい車が4台ありました。その中で最も怪しい1台が脱走犯の乗っていた車で合っているで確定でしょう。」

 警察は怪しい車を調べ、瀧と冬秀の乗っていた車を特定した……はいいものの。

「ですが、その車を途中で放置しているので詳しい場所は分かりません。」

「なるほどな────」

 警察同士で情報共有をする。大樹はそれを横から静かに聴いていた。


「その車は防犯カメラでどこまで映ってる?」

「愛知県と静岡の県境までですが、そこで車が捨てられてました。車を乗り換えたのだと思われます。」

「どっち方面にだ?愛知か?静岡か?」

「愛知県の方だと考えられますね……」


 警察は神妙な顔をしていた。

「取り敢えず、ありがとう。が、愛知県だと我らでは取り扱いが違う。この情報を愛知県警に伝えてこい、我らの出番は終わった」

 ここの警察では愛知県まで出張は出来ないようだ。だから、ここまで調べたのに捕まえることはしない。それでも、ここまで調べたのは彼らの意地といえる。


 さっきまで口を閉じていた大樹が口を開いた。

「もし愛知県の県境で車を乗り換えたとすると、拠点は……」

「愛知県の県境に近い場所の可能性が高いだろう。例えば……」とスマホを取り出して操作した。そして、スマホに地図を映し出す。

「新城とかな……」

 その警察は指を指して場所を示す。

「ありがとうございます」と大樹は車へと向かっていった。




 太一はあの時、隆志(お父さん)と一緒だった。

 とすると、もしかしたら新たな拠点は実家かも知れない。いや、その可能性が一番高い。

 "新城"でピンと来た。

 彼らの居場所を把握した。


 大樹は懐からライターを取り出して火がつくか確認した。


 火はメラメラと燃えている────

次回予告


 ついに、大樹が太一の場所を発見する。

 果たして、太一は無事でいられるのか?


 次回はあるの?どうなるの?

to be continued

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